ロシアがウクライナに侵攻した意味を考える、はじめからキエフの侵攻が狙いではない
最近の報道では、安全保障や軍事の専門家?と言われる人たちを中心に、「キエフ侵攻が失敗したので、ウクライナ東部への攻撃に作戦変更した」といったものが多い。
比較的中立なシンクタンクのアナリストたちは、3月10日頃から、ロシアの作戦が目指しているのはキエフ侵攻ではない可能性を指摘している。クーデター直後の不安定な政権など特殊な場合をのぞいて、首都の陥落で戦争が終わることはないからである。
侵攻開始直後の2月24日の演説で、プーチン大統領は次のように語っている。
その目的は、8年間、ウクライナ政府によって虐げられ、ジェノサイドにさらされてきた人々を保護することだ。そしてそのために、私たちはウクライナの非軍事化と非ナチ化を目指していく。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220304/k10013513641000.html
ロシア国民に向けた演説は、プーチン体制の維持にとって極めて重要であり、「ウクライナの非軍事化(demilitarize)と非ナチ化(denazify)」が、「国民との約束」になったことを意味する。
それでは、非軍事化と非ナチ化は、具体的に何を示すのだろうか。
これまでのウクライナおよびロシアによる戦況報告等の情報により、非軍事化と非ナチ化は、次のことを示していると考えるのが妥当である。
非軍事化:
・ウクライナの航空、防空システム、偵察資産の地上破壊
・C3I(指揮、統制、通信、インテリジェンス)の無力化
・領土の深部における主要な兵站ルートの無効化
・JFOによって国の南東に集まるウクライナ軍の大部分の包囲
非ナチ化:
・オデッサ、ハリコフ、マリウポリの各都市、および領土内のさまざまな施設で活動しているボランティア大隊(アゾフ大隊、ドンバス大隊、領土防衛隊、外国人傭兵部隊など)の壊滅または無力化
ロシアの作戦の全容が戦争中に明らかになることはないが、非軍事化と非ナチ化の2点を頭に入れておくだけで、戦況や大局の見方が変わってくる。ウクライナおよびロシアの次の行動も予測しやすくなるだろう。「国の重心は軍隊である」という言葉を思い出したい。