欧州だけではないロシアへのエネルギー依存
米国バイデン政権は、2022年3月8日にロシアから石油、液化天然ガス、石炭の輸入を禁止する大統領令(EO)に署名した。昨年、米国はロシアから1日あたり約70万バレルの原油と精製石油製品を輸入している。米国がロシアから輸入する原油のシェアは3%ほどで高くないが、石油製品の輸入は20%となっており影響は少なくない。輸入を禁止する大統領令に署名したと言っても、米国が直ちに輸入を停止したわけではなく、逆にロシアからの石油輸入が増えている。
米国の呼びかけに応じる形で、2022年3月8日にEUの欧州委員会は、ロシア産天然ガスの需要を年末までに大幅に削減し、2030年までにロシアへのエネルギー依存からの脱却を目指すと発表している。2030年までに、再生可能エネルギーが天然ガスに代替する可能性は極めて低いので、実際には他国からの輸入を増やしたり、石炭や原子力など他の安定したエネルギーの割合を増やすことになるだろう。
英国のOxford Analyticaによると、欧州におけるロシア産天然ガスへの依存度は非常に高く、ルーマニアとウクライナに隣接するモルドバ共和国は100%、フィンランド90%超、ドイツやイタリアで50%弱となっている。
今回のウクライナ危機で、ウクライナに対して多額の武器支援を行っているバルト三国も、ラトビア90%超、エストニア80%弱、リトアニア40%超となっており、ロシアへのガス依存度が高いことが分かる。
エストニア、ラトビア、リトアニアのエネルギー大臣は、ロシアから独立したエネルギー安全保障の確保について共同声明しており、エストニアは、フィンランドと共同でガス輸入の混乱に備えている。2022年4月7日には、エストニア政府は、原則として、年末までにロシアのガスのすべての輸入を停止することを決定したが、エストニア備蓄センター(AS Eesti Varude Keskus)を活用したもので、一時的な解決策にしかならないだろう。今後の展開を注視したい。