ウクライナの電子政府から学ぶ、ノーコード・ローコード型のオンラインサービス
日本では、いわゆるノーコードやローコードで、職員自身が簡易なオンライン申請・届出サービスを作成・提供できる、「スマート申請システム」や「LoGoフォーム」を導入する自治体が少しずつ増えているようです。
住民も行政も、より便利に使いやすく「スマート申請システム」機能強化
先進団体のベストプラクティス共有など、「真の自治体DX」実現の支援へ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000276.000018852.html
TASKクラウド スマート申請システムは、申請・認証から決済、交付まで、一連の行政手続きをオンライン上で完結するクラウドサービスとのこと。
この流れが良いものなのか、今のところ、まだよくわかりません。使いやすいオンラインサービスが増えるのは良いことだと思う一方で、相互運用性という観点では心配な面もあるからです。特に、日本の場合、住民データを自治体ごとに保有・管理しているので、サービスの拡張性という点で、不安がありそうです。
エストニアが構築を支援したウクライナの電子政府を見ると、ノーコード・ローコード型のオンラインサービスにも別の形があることがわかります。
ウクライナには、全国に約800の行政サービスセンター(ASC)が配置されており、地域住民に100以上の重要な行政サービスを提供しています。日本で言うところの、市町村役場の窓口みたいなものです。
ウクライナの電子政府では、デジタル化が遅れていた行政サービスセンター(ASC)向けの共通業務アプリケーション「Vulyk(ヴーリック)」 をクラウド上に開発して無償提供しました。2018年8月-2019年5月に、ウクライナの10都市で試験運用した後、2021年でウクライナ全土250以上の行政サービスセンター(ASC)が「Vulyk(ヴーリック)」に接続して、職員の仮想職場として機能しています。
この共通業務アプリケーション「Vulyk(ヴーリック)」 には、申請書自動作成、紙文書の電子化、会計処理、審査状況等の関連情報送信、電子文書保存・リンク付け、処理結果レポート自動作成など、日本の「スマート申請システム」や「LoGoフォーム」と同等、もしくはそれ以上の機能が備わっています。
さらに重要なのは、「Vulyk(ヴーリック)」が、ウクライナ版のXロードと言われるデータ連携基盤「Trembita(トレンビータ)」により、住民登録データを初めとした様々な国家登録簿(公的データベース)とリアルタイムで相互連携していることです。このデータ連携により、一つの自治体に完結することなく、国や自治体など組織や分野を越えたサービス提供も可能となっています。
「Vulyk(ヴーリック)」は、EUや国の予算で構築されており、システムの保守やヘルプデスク運営も国の予算と責任で実施されているため、自治体の人的・金銭的な負担もありません。
なお、同じようなノーコード・ローコード型のオンラインサービス作成機能は、国の電子政府ポータル「Diia」(日本のマイナポータルのようなもの)にも備わっています。各省庁は、このオンラインサービス作成機能とデータ連携基盤「Trembita(トレンビータ)」を利用して、電子政府ポータル「Diia」にサービスを追加していくことができます。
共通業務アプリケーション「Vulyk(ヴーリック)」と電子政府ポータル「Diia」、どちらもオンライン公共サービスの「マーケットプレイス」としても機能しています。他の自治体や省庁が、どのようなサービスを作成・提供しているのかを確認しながら、その一部や全部を再利用すれば良いからです。
少子高齢化や地域の過疎化が進む日本の自治体において、今の日本のやり方と、ウクライナの電子政府のやり方、どちらが良いのでしょうか。私は、中長期の視点で、ウクライナ方式へ進むのが良いだろうと考えています。そうしないと、多くの自治体が、これから更なる苦難と苦労に見舞われるのではないかと心配しています。