ホワイトハウスの関税ファクトシートから学ぶ、「誰がしたのか」ではなく「何をしたのか」

トランプ政権の関税政策が話題になっており、特に株式や債券市場の関係者は一喜一憂しているようです。今後、各国との交渉等により落ち着くべきところに落ち着くと思いますが、トランプ大統領(と周囲のブレーン)は将来的な中国との対決を考えているようです。

マスメディアの報道はいつもの通りバイアスがひどいですが、ホワイトハウスでは関税に関するファクトシートを公表しています。

ここからわかるのは、次の2点です。

1)第1次トランプ政権(2017- 2021年)で実施された関税政策は一定の効果を上げたことが、いくつかの調査により評価されている。

2)バイデン政権時にも強気の関税政策が実施されており、当時のイエレン財務長官は「関税は物価を上昇させない」と述べている。

興味深いのは、第1次トランプ政権の関税政策については、CNNなど反トランプのメディアも好意的な記事を書いていることです。

トランプ大統領の関税の影響を理解するには、オハイオ州を見てみよう CNN 2019年3月7日
新たな分析によると、これら2つの相反する力により、関税はオハイオ州にとって経済的にプラスになったようだ。

正直、ホワイトハウスのファクトシートは過大評価の面があると思います。しかし、それよりも重要なのは、「誰がしたのか」ではなく「何をしたのか」であり、その結果として「どのような効果があったのか」を検証することです。そのためには検証に必要な情報やデータの公開が欠かせません。

ファクトシート:ドナルド・J・トランプ大統領、競争力の強化、主権の保護、国家および経済の安全保障強化のため国家非常事態を宣言
https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/04/fact-sheet-president-donald-j-trump-declares-national-emergency-to-increase-our-competitive-edge-protect-our-sovereignty-and-strengthen-our-national-and-economic-security/
関税は効果的:関税は米国の国家安全保障を損なう脅威を軽減または排除し、経済的および戦略的な目標を達成するための効果的な手段になり得ることが研究によって繰り返し示されています。

トランプ大統領の最初の任期中の関税の影響に関する2024年の調査では、関税が「米国経済を強化し」、製造業や鉄鋼生産などの産業の「大幅な国内回帰につながった」ことが判明した。

米国国際貿易委員会が2023年に発表した報告書では、232条および301条関税が3000億ドル以上の米国輸入品に及ぼす影響を分析し、関税によって中国からの輸入が減少し、関税対象品目の米国生産が実質的に刺激され、価格への影響はごくわずかであったことが判明した。

経済政策研究所によると、トランプ大統領が最初の任期中に実施した関税は「インフレとの相関性が明らかになく」、全体的な物価水準に一時的な影響しか及ぼさなかったという。

アトランティック・カウンシルの分析によれば、「関税は米国の消費者に米国製製品を購入する新たなインセンティブを生み出すだろう」という。

バイデン前財務長官のジャネット・イエレン氏は昨年、関税は物価を上昇させないと断言し、「アメリカの消費者が直面する物価が大幅に上昇するとは思わない」と述べた。
https://news.bloomberglaw.com/banking-law/yellen-says-china-tariffs-wont-cause-meaningful-us-price-hikes

2024年の経済分析によると、世界全体で10%の関税を課すと経済は7,280億ドル成長し、280万人の雇用が創出され、実質世帯収入は5.7%増加すると予測されている。

参考:相互関税計算
https://ustr.gov/issue-areas/reciprocal-tariff-calculations