日本の電子申告サービスから学ぶリアルとバーチャルの融合
国税庁から、平成17年分の所得税、消費税及び贈与税の確定申告状況が公表されました。この中で、国税電子申告・納税システム(e-Tax)や確定申告書等作成コーナーの利用状況も公開されています。
できるだけ多くの人に利用してもらおうと、国税庁として様々な工夫・改善を行ったこともあり、電子申告も申告書作成サービスも利用者は着実に増加しています。
確定申告書等作成コーナー:所得税申告書の提出件数127万件(前年比183.2%)
国税電子申告・納税システム:所得税の申告件数3万5千件(前年比186.4%)
作者が注目したいのは、「確定申告書等作成コーナー」の利用推進策について。
税務署等に来た人でも本サービスを利用できるよう、相談会場にパソコンを設置したのですが、その結果、これを利用して作成した申告書の提出件数は、全体の4割以上を占めたそうです。(所得税54万4千件/全体127万件)
で解説しているように、利用者の選択肢としては、様々なパターンが考えられます。
・自宅のパソコンでオンライン電子申請
・窓口で紙申請
・自宅パソコンで予約して紙申請
・自宅パソコンで入力・印刷して紙申請
・窓口等の側にある申請端末で電子申請
・窓口等の側にあるインターネット接続パソコンで電子申請
・窓口の職員に口頭で電子申請(職員がパソコン等を操作)
・行政書士等の専門家や民間サービスを利用して電子申請
国税庁は、
・窓口等の側にあるインターネット接続パソコンで入力・印刷して紙申請
というパターンを考えて実行したのです。
実は、これこそが現在の電子政府・電子申請に欠けている「使ってもらえるサービスモデルの提案」なのです。
今では、多くの電子申請が稼動していますが、そのほとんどが電子申請システム(仕組み)であり、電子申請サービス(実際に使ってもらえる利用モデル)となっていないのですね。
「相談会場にパソコンを設置する」という方法は、一見すると時代に逆行するようにも思えますが、これを考えて実行した人は、実際のサービス、現場・窓口の状況、市民のニーズといったものを、きちんと理解できているのだと思います。
そして、実際の利用が多かった事実を考えると、
・窓口の混雑緩和
・市民や職員の時間短縮
に貢献していると言えるでしょう。
日本は、お金と技術力があるため、システム(仕組み)を作ることについては、大変優秀で、難しいシステムでも立派に作ってしまいます。
今後は、サービス(実際に使ってもらえる利用モデル)を考えることが大切になるでしょう。
なお、本来であれば、サービス(実際に使ってもらえる利用モデル)を考えるのが先であり、その後にシステム(仕組み)を作る方が、ずっと簡単で、お金と手間の削減に繋がります。
国税庁の確定申告書等作成コーナーと国税電子申告・納税システム。
まだまだ利用率は低いかもしれませんが、こうした努力や工夫を続けることで、着実に利用者は増えていくことでしょう。