電子政府を評価することの意味

8月から電子政府評価委員会に参加させて頂いてます。参加に当たっては、「国民(利用者)の代表として、電子政府の健全な発展にどれだけ貢献できるか」をテーマとしたい。

委員会の活動状況については、上記ウェブサイトを参照してもらえれば良いので、ここでは、作者が考える「電子政府の評価」について触れておきます。

本来的には、電子政府の評価は、高度な専門性を有する作業で、IT投資の評価や公共事業・政策評価・監査といった分野の知識を持つ(あるいは相当な訓練を受けた)人たちが、それ相当の時間と労力を費やして、粛々と進めるものです。

つまりは、かなり地味で地道な作業ということ。

その次に必要なのが、適切な評価をするための情報が提供(公開)されることです。

この「情報公開」というのは、電子政府の健全な発展に無くてはならない要素で、適切な評価を行うためだけでなく、国民への「説明責任」を果たすためにも欠かせないものです。

このたび、日本においても電子政府を評価する体制が整ったことは、大変嬉しいことです。しかし、現在の電子政府評価委員会が、電子政府の評価を適切に行えるかと言えば、そういうわけでもないのです。

なぜなら、人も時間も足りないので、できることが限られるからです。

そうした状況では、「真面目に(杓子定規に)評価する」ことは避けたほうが良いでしょう。

(なお、真面目に電子政府評価を考えたい人は、作者の電子政府評価メモをどうぞ)

そもそも、「評価」は「評価すること」が目的ではなくて、
・改善に繋げること
・国民への説明責任を果たすこと(透明性を向上させること)
を目指すものです。

以上を踏まえて、評価委員会において作者がするべきことは何だろう?

うーん、うーんと考えた結果、だいたい次のような辺りに落ち着きました。

1 情報公開を促進して、国民自身が評価に参加できるようにすること

良いことも悪いことも、とりあえず全部出し切って、そこからスタートです。

2 利用者(個人、企業、行政職員)参加の機会を提供すること

企画、設計、テスト、運用、事後評価など、あらゆる場面に実際の利用者が参加できるようマッチメイク(出会いの機会を作る)します。

厳しいユーザーの評価にさらされてこそ、はじめて使ってもらえるサービスとなるのですから。

さて、電子政府の評価というものを通じて、行政職員やベンダーの職業倫理&コスト感覚が問われることになります。これは、相当に覚悟しておいた方が良いでしょう。

それと同時に、国民の参加・当事者意識も問われることになります。

「また税金の無駄遣いばかりして・・・」と嘆いているだけでは、状況は一向に改善しないので、どうか少しでも関心を持って力を貸して欲しいのです。

作者自身も、評価委員会を通じて上記2点を実現できるよう、一生懸命がんばります

“電子政府を評価することの意味” に14件のコメントがあります

  1. 登記オンラインを評価してみて!
    引用「電子行政サービスの評価 |目次へ

    手続や行政機関ごとではなく、サービスごとの評価(例:不動産登記に関するサービス、商業登記に関するサービスなど)

    他省庁が提供するサービスとの関連性・相互依存性を明確にする必要もある。

    サービスごとの年間予算、公務員(非公務員)数、役所の数、主なサービス利用者などを明確にする。

    利用者の特定:不動産登記:金融業、不動産業(士業:司法書士、土地家屋調査士など)

    サービスが利用されない理由は、

    サービスの存在を知らない(広報の不足:認知度)
    望まれるサービスではない(ニーズに合っていない:利用者参加度)
    適正な価格(利用コスト)ではない(コスト削減・簡素化の不足:初期費用、準備時間、処理・完了時間)
    提供手段が適切ではない(新たな機器やソフトが必要になる:利用方法の選択肢)
    サービスに魅力がない(メリットが見えない:紙との差別化、インセンティブの提供)
    などが考えられる。各項目で合格点が取れないと、実際の利用は進まない。

    合格点を取るためには、企画等の初期段階から、利用者を参加させることが大切である。利用者参加を経ないで作成された基本仕様書の多くは、そのサービスが利用されないことを確信させるものである。

    なお、平成17年度電子政府基本調査結果によると、情報システムを導入/再構築する際の「業務の見直し」について、8割以上の省庁が、把握・評価をほとんど又は全くしていないとなっている。

    電子申請の「利用率」は評価指標として大切であるが、「手続や添付書類の廃止・簡略化」については、「利用率」以上に高い評価を与えなければ、「業務の見直し」が進まないことになる。

    国民だけでなく、行政職員に対して、どのようなインセンティブを提供できるかが、電子行政サービス向上の鍵となる。

    参考:行政手続オンライン化法第10条に基づく公表(実施・利用状況)|オンライン利用促進のための行動計画(重点分野と手続、対応策など) 」

    点数化できるとおもしろいかも?50点が合格点?いや70点いってないと、やばいね。

  2. 情報公開してない。
    牟田さん お役目ご苦労さまです。

    1 情報公開を促進して、国民自身が評価に参加できるようにすること

    登記識別情報の研究会は「現場が混乱するといけない」との表向きの理由で、会議録など公開しないと決定しました。
    情報公開請求した場合のみ発言者の氏名を消して、しかも簡単な要旨だけを公開するのだそうです。

    意思決定過程を透明にしないだけでも問題がありますが、本当の理由は、委員の中に非常に影響の大きい団体のトップが出ており、そのトップが下手なことをいうと会員から突き上げられるから、法務省に非公開をお願いしたとか。

    事実なら言語道断です。

    副大臣のブログでも直訴してるのですが、見ていただいているものやら。

  3. 情報公開は方法次第かと
    sagoさん、こんにちは
    コメントありがとうございます。

    なお、canshakeからのコメントは、引用が大半でしたので、「保留」させていただきました。

    税金を使って運営される研究会であれば、配布資料や議事要旨は公開されるのが当然ですよね。現在は、ウェブサイトがあるので、迅速に公開できる環境もあるわけですから。

    評価委員会では、配布資料と議事要旨を公開していますが、発言者名は記載されておらず、詳細な会議録(議事録)も公開しないようです。

    各委員が自由に発言できるようにとの配慮があるのだと思いますが、私個人としては、これで十分と思います。

    議事要旨の内容については、公開前に記載漏れ等の確認をしますので、不適切と思う発言があれば自身で削除をお願いすれば良いわけですから、一律に非公開とする理由にはなりません。

    評価委員会でも、法務省へのヒアリングを予定していますので、「登記識別情報」の検討状況について質問して、積極的な情報公開をお願いしてみます。発言の時間があれば・・・なのですけど。。

    また、論点整理などについても、電子政府推進員(実際の利用者)から意見が反映されるようにお願いしてみます。

  4. 見えないバーコード
    登記オンラインは、点数つけられませんか?そのレベルじゃない?

    さてこれはどうでしょう?
    http://www.sunart.co.jp/escan/system.html
    すんげーな、音まででるのか。

    「見えないバーコード」の印刷には、特殊なインクを使用しますが、特別な印刷機は必要としません。通常の印刷料金の約3割増し程度で印刷が可能となります。

    http://www.gridart.co.jp/boushi/
    見えないバーコードの「ドットパターン」は、目では確認が出来ないうえにコピー機やスキャナーでは読み取ることも出来ませんので、複製が不可能です。

    ふーん。いいかも。

  5. 議事要旨公開なりました。
    牟田さん ありがとうございます。

    実際に情報公開請求が沢山出ているようで、法務大臣官房が音を上げて、要旨はHPに公開となったようです。

    次は配布資料の公開に向けて運動しないといけないと思います。

    牟田さんもひとつよろしくお願いします。

  6. 予算の優先順位
    牟田さん もう一度すみません。

    登記関連のオンラインでいえば、出力系のオンライン登記情報提供サービス、紙の証明で提供される登記事項証明書のオンライン申請があります。

    いずれ、地図情報と登記情報を連携させた形のサービスの実施もありますが、これが予算の関係でほんと亀の歩みです。

    問題になっている登記識別情報を使った申請というのは入力系ですが、法務省が国会で明らかにした支出は、1庁オンライン庁に指定するのに100万円程度といいます。ただこれには、指定で変わる用紙類の金額が含まれていません。

    少なく出して無駄はしてませんよというつもりだったのでしょう。

    アンケートも見ていただいたように問題が多すぎますので、とても50%を達成できないばかりか、司法書士も協力する気になれないでしょう。

    ただ、出力系でオンラインのメリットを体感できれば、入力系へのオンラインの意義もわかりますから協力できるようになるでしょう。

    私は、ここで入力系のオンラインは一時ストップして、当面出力系に専念していただく、予算配分も大幅に変える。そう訴えたいです。

    どうかそういう視点で、不動産登記オンラインを厳しく評価していただきたいと思います。

  7. その通りと思います
    登記に関しては、私も、ご指摘のように「出力系サービス」の充実から始めるのが良いと思います。

    ●不動産登記申請 年間14,119,000件
    ○商業登記申請    2,120,000件

    に対して

    ●登記事項証明書(不動産)284,049,000件
    ○登記事項証明書(商業)  77,510,000件

    と、桁が違いますし。

    オンライン申請の基礎となる、法務局のオンライン化や登記情報の電子化を進め、国民からの登記情報へのアクセスについて、もっと簡便にできるようにすれば、オンライン申請以上の効果が期待できるでしょう。

    1 基本的な登記情報は、無料で閲覧できるようにする
    2 詳細情報の閲覧、登記事項証明書(紙)の交付は有料サービスとする
    3 登記事項証明書(電子)の交付サービスを開始する

    これらを実施してから、入力系のオンライン申請を考えれば良いでしょう。

    多くの企業がウェブサイトを持ち、企業の基本情報や財務情報を公開している時代に、企業情報の基礎であり、(電子政府を推進する)国が保有し管理する登記情報が、ウェブ上で自由に閲覧できないなんて、どう考えてもおかしいですよね。

    でも、近い将来、自由に閲覧できるようになるでしょうね。

  8. ことしもフェア
    2006.11.14(火)10:30~17:00 東京国際フォーラム(フォーラムB7)
    各申請別セッションープレゼンテーション12:10~16:00
    ・電子政府・電子自治体キャンペーンサイト
     http://taiken.e-gov.go.jp/enter.html
    ・オンライン申請体験デモ
     http://taiken.e-gov.go.jp/demo/index.html
    ・電子政府・オンライン申請体験フェア
     http://www.e-govfair.jp/
     (去年のもようは、こちらから。http://www.e-govfair.jp/report.html )(2005.11.11-同会場。)
    今年は副題として~ビジネスを効率化したいあなたに~がついていますね。でも、不動産登記オンラインのデモは、今年もない。昨年と同じ商業登記と電子認証ばかり。乙号オンライン申請のデモすらない。大企業相手なんだなあ。昨年のアンケート結果とかもぜんぜん発表してないしねー(やりっぱなしなのかな?)。

    /以上、電子政府推進員としてお知らせいたしました。

  9. 50%の分母は
    牟田さん コメントありがとうございます。

    さて、オンライン利用率で素朴な疑問ですが

    ●登記事項証明書(不動産)149,084,000件
    —————————————–
      ●不動産登記申請 年間14,119,000件
    + ●登記事項証明書(不動産)284,049,000件

    この計算の場合 50%にはなりますが、職員削減目標の場合に、根拠とする50%は、不動産登記申請のみが対象になって、証明事務は官民入札で削減しようというのが法務省の計算です。

    実際に登記申請が添付別送+スキャナPDFの半ライン形式になると、とても職員を削減できる状態になりません。だったら、登記申請の方は0に近い方がいいわけです。

    オンライン利用計画では、入力系の本申請と、出力系の証明事務を分けて考えていますが、トータルの数字で50%めざせば「がんばった」ということになるのでしょうか。

  10. 電子政府・オンライン申請体験フェア
    saitou-kunさん

    電子政府・オンライン申請体験フェアの情報、ありがとうございます。

    昨年は、参加できなかったので、今年はぜひ参加しようと思います。

    こうしたキャンペーン(広報活動)にも、PDCAが必要なのですが、実体はご指摘の通り「やりっぱなし」状態ですね。

    適切な評価を行い、最低限の効果測定を取り入れる必要があると思います。

  11. 50%の分母
    sagoさん、いつもありがとうございます。

    「利用率50%」という数字は、ある程度は行政の方で操作できる部分もありますので、あくまでも「指標の一つ」として考えることになると思います。

    トータルが50%でも、その数字が閲覧サービス等で稼いだものであれば、対象外(別枠で評価する)とされるかもしれませんし、特定の手続で利用率が低いものがあれば、個別の対応が迫られることになるでしょう。

    登記関連のオンラインサービスについては、ニーズの洗い出しからやり直して、サービス全体の最適化を行い、それから個々のサービスを展開していくのが良いと思います。

    その際には、司法書士に限らない幅広い利用者の意見を聴いて、十分に吟味する必要があるでしょう。

    「職員削減」は、オンライン申請の利用率にかかわらず、法務局の情報化・効率化・統合化・民営化等と合わせて進めて欲しいですね。

    私自身も、法務省の取組みには、かなり厳しい意見を持っているのですが、言い換えれば、法務省への期待が大きいということなのです。

    法務省が所管する業務内容、保有する情報DB、社会への影響力を考えると、法務省が本気で電子政府を考え支援してくれるかどうかが、日本の電子政府の発展の大きな鍵になると考えています。

  12. 一気にやってほしい。
    牟田さん 力強いお言葉ありがとうございます。

    「法務省が所管する業務内容、保有する情報DB、社会への影響力を考えると、法務省が本気で電子政府を考え支援してくれるかどうかが、日本の電子政府の発展の大きな鍵になると考えています。」

    それと他省のデータ連携で、法務局地図と国土地理院の数値地図データのレイアでの重ねが期待できます。

    構想としてはあったのですが、法務局側地図の整備、デジタル化の遅れでほんとかたつむり状態です。

    確かかなり前の骨太の方針で、平成地図整備を決めましたが、こんなのは一気に予算つけて、一気に片づける。

    法務省のやり方は、年数かけすぎですので、常に地域格差を生む。予算的に苦しくなると申請の少ない地方の法務局を統廃合する。使えもしないオンライン申請ができますから、統廃合されても心配ありません。とウソをつく。ちといいすぎか。証明はまあ確かに可能ですけどね。まだ、そういう地域はオンライン指定してない。

    おっとグチを言っても始まりませんが、法務省に任せていても埒があかないので、官邸主導でやってもらいたいですね。

    牟田さん 新首相にひとつ伝えて下さい。
    で 入力系は磁気ディスクなり、韓国のようなバーコード方式で効率をあげられるから、オンラインは当分凍結、でしょうもない識別情報は廃止と。
    これでいきましょう。

  13. おめでとうございます
    sagoさん、こんにちは

    情報ありがとうございます。

    法務局地図と国土地理院の数値地図データの連携は、ぜひ実現して欲しいですね。

    こうした情報がウェブ公開されることで、社会にどれだけ恩恵があることか。。

    「登記識別情報制度についての研究会」の公開も、おめでとうございます。

    メンバーを見ても、各業界からバランス良く参加していると思います。難しいのは、各業界(ステークホルダー)の利害関係をどうやって調整するか、でしょうか。

    いずれにしても、法務省さん自身が、しっかりしたポリシー(改革の意志)を持って、国民や社会のための登記制度を実現していくことが大切と思います。

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