「公共サービスの世論調査」から学ぶ、電子政府サービスのあり方

内閣府から、「公共サービスの改革に関する特別世論調査(PDF)」が公開されています。公共サービスの民間開放をテーマにした調査ですが、電子政府サービスが学ぶべきことがたくさんありますね。

何度も言っていますが、国民が望むのは「電子政府・電子申請サービス」ではなくて、良質な行政(公共)サービスです。

ですから、「電子政府・電子申請サービス」を提供するときは、

・国民のニーズに合った
・窓口サービスに無いメリットを持つ
・民間にも負けない優れたサービス

であることが必要です。

それでは、具体的にどんなサービスを実現すれば良いのか、世論調査の結果から考えて見ましょう。

(1)公共サービスの満足度は、3割にも満たない

深く反省すると共に、「7割も改善の余地がある」と考えましょう。これだけ低いと、成果を出しやすいですね。

(2)公共サービスの満足していない点

利用者が不満に感じる点を改善していくことで、ニーズに合ったサービスに近づけることができます。

一つの不満に対しても、改善手法は様々です。どのような手法を用いて(組み合わせて)、具体的な効果を挙げていくかで、ベンダーさんや行政職員の能力が問われることになります。

◆窓口の開設時間が短い等,サービス提供時間が短い

オンラインサービスの強みを発揮できる「提供時間(受付時間)」ですが、法務省(平日8:30-20:00)や国税庁(平日9:00-21:00)など、ちょっと信じられない例が未だに存在しています。

メンテナンスの時間は必要ですが、最低限、土日や深夜にも使えるようにしないと、サービス改善の意思が無いと判断されることになるでしょう。

◆サービスを利用するための手続きが煩雑である

オンラインサービスの場合、窓口のような「対話」ができない分、それをカバーする「検索機能」や「手続(登録、記入、結果通知など)の簡略化」が大切になります。

現在の電子申請サービスでは、記入(入力)に関しては、ある程度の簡略化が見られるものの、事前準備や手続フローが複雑で、「簡略化」には程遠い状況にあります。

☆事前準備(簡易な手続は独立させる)

電子署名や添付書類を必要としない手続は、事前準備や登録についても、可能な限り簡素化しておきます。

簡易な手続は、複雑な手続(事前準備も複雑)から分離させる

これだけで、利用率は大きく向上するはずです。

☆手続フロー(紙と比べて3割以上の効率化を)

利用者視点で、紙申請と電子申請の利用フローを比較します。

パスポート電子申請:費用と時間の比較を見てもわかる通り、現在の電子申請サービスでは、紙申請と比べても見劣りする場合が多いのです。

紙申請と比べて、最低でも3割程度の簡素化・効率化があること

これが、使われる電子申請であるための条件であり、オンライン化する際の判断基準となります。

ちなみ、不動産登記の電子申請では、なんと27以上の作業が必要となっています(代理申請では、もっと増えます)。これでは、誰も使ってくれませんよね。。

◆窓口等の職員の対応が悪い

これは、オンラインサービスでは関係が無いように思えますが、そうでもありません。サービスを提供するウェブサイトの印象が悪いと、同じような不満を持つことになるからです。

・情報が見やすく、探しやすいこと
・迅速かつ的確に質問に応えてくれること
・間違ったときでも優しく助けてくれること
・繰り返しの質問をしないこと
・たらい回しをしないこと

などがウェブサイト上で実現されていれば、「不親切」と思われることも少ないでしょう。

・専門家を交えたユーザビリティテストを定期的に実施する
・利用者の声を聴き、改善していく
・行政職員自身が、利用者の視点でチェックする

などが有効ですね。

◆民間企業が提供している同種のサービスのほうが質がよい

インターネット上では、「行政」「民間」といった境界線が曖昧になります。クリック一つで移動できるのですから、当然ですね。

・電子申請=アクセスしやすい=ちょっと面倒だと、すぐにあきらめる

なのですが、

・窓口サービス=アクセスが面倒=多少の面倒でも頑張って終わらせる

なのです。これを理解していない行政の人が、なんと多いことでしょう

オンラインサービスでは、「役所だから」といった甘えは許されません。

民間のオンラインサービスが、日進月歩で改善される中、オンライン行政サービスに期待されるレベルも高くなるばかりです。

「こんなに頑張っているのに」ではなくて、「これだけ便利になりました」「でも、まだまだ改良の余地がある」という発想で、サービスを改善していきましょう。

◆料金に見合ったサービスがなされていない

「料金」を「利用料金」だけでなく、「費用(税金)」と考えた場合、これはもう、実際ヒドイものがあります。

費用対効果を検証し、厳しく監視・評価して、結果を国民に伝えていくこと。そうした地道な作業で、国民からの信頼を少しずつでも回復していくしかありませんね。

◆無駄なサービスがある

政府系のウェブサイト、電子申請、電子入札など、統合化を進めた方が良いシステムやサービスがたくさんあります。

統合するにも費用が発生しますから、運用費等の「コスト削減」だけでなく、統合された後のシステムや「サービスの品質」に焦点を当てて、「統合」が目的となら無いように注意しましょう。

(3)民間が行う公共サービスに期待すること

最後に、「民間が行う公共サービスに期待すること」を通じて、「電子政府・電子申請サービスが目指すべきこと」を再確認しておきましょう。

・サービスの提供時間や提供場所が拡大すること
・型にはまったやり方でなく受け手の要望に応じたサービスを提供すること
・同一の窓口や一回の手続きで複数のサービスが受けられるようにする等,手続きを簡素にすること
・公共サービスの提供にかかる経費が削減されること
・窓口の接客や対応がよくなること

いやー、やるべきことは盛りだくさん。

かくも「使ってもらえる電子政府・電子申請サービス」の道は険しいのであります