電子政府における仲介者の役割:士業は選択肢の一つに過ぎない

作者自身、行政書士をしていた経緯もあり、実務における士業の必要性は理解しているつもりです。しかし、電子政府・電子申請に関して言えば、国民の視点と士業の視点は異にする部分が多いと言えるでしょう。

電子申請に関連する士業としては、弁理士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士などがあります。

電子申請について士業が思うのは、

・電子申請に対応できるだろうか?
・電子申請のせいで仕事が減るのではないか?
・電子申請をきっかけとして他業種が参入するのではないか?
・電子申請は業務を拡大するチャンスではないか?
・電子申請を利用してサービスを向上できるのではないか?

といったところでしょうか。不安と期待が入り混じっているのですね。

他方、電子申請について国民(個人、企業)が思うのは、

・電子申請で役所の手続きが簡便になって欲しい
・電子申請で費用や時間を節約したい

企業であれば、
・電子申請をきっかけとして行政サービスに参入できるのではないか?
・電子申請を活用して新たなビジネスを生み出せるのではないか?
・電子申請を活用して顧客サービスを向上できるのではないか?

などが考えられるでしょう。

つまり、電子申請を利用することで
・士業を介さずに自分で済ませたい
・士業の業務に参入したい

といったニーズもあるのですね。

士業の人は、国民がお客様であると同時に、将来のライバルになるかもしれないことを理解しておくと良いでしょう。

しかしながら、実際に電子政府・電子申請サービスを国民に利用してもらうためには、様々な仲介者を活用することが有効です。

なぜなら、仲介者を活用することで、国民がサービスにたどり着くまでのプロセスの一部または全部を省略できるからです。

★サービスを利用するまでのプロセス
知る>>信頼する>>理解する>>準備する>>利用する>>満足する(再利用、口コミなど)

特に「信頼する」「理解する」といったプロセスを省略できることは、役所が苦手とする部分を補うものであり、とても効果的かつ効率的と言えるでしょう。

もちろん、仲介者は誰でも良いわけではありません。

作者が考える「仲介者の条件」は、次の通りです。

1 社会的に認知され信頼されていること
2 必要な知識と実務処理能力があること
3 競争があり、利用者が選択できること

仲介者の例としては、次のような形が考えられます。

・民間ウェブサイト(ポータル、コミュニティサイト)
・金融機関(郵便局、銀行)
・士業(司法書士、税理士、行政書士、社労士)
・実務アプリケーション(会計、労務管理など)
・民間企業(旅行、保険、自動車など)
・行政窓口、コールセンター
・図書館、公民館
・NPO等の市民団体、企業支援団体など

国民は、目的や予算に応じて、
・自分で行う
・無料の仲介サービスを利用する
・有料の仲介サービスを利用する

を自由に選べるようになる。それが、電子政府・電子申請の目指すべき所だと思います。

その中で、士業は選択肢の一つに過ぎないわけですから、国民から選ばれる努力を今まで以上に続けていくしかないのですね

電子申請を考えたときに、現在の士業は、果たして国民の方に目が向いているのでしょうか。

国民からすると、行政や業界(自分たち)の方ばかり見ているように映るかもしれませんね

“電子政府における仲介者の役割:士業は選択肢の一つに過ぎない” に14件のコメントがあります

  1. 士業は国民のためにある
    分をわきまえろということだ。他士業の仕事がしたければ、その試験に受かればいいだけのことだ。

  2. 士業というかその組織の姿勢が問われる
    士業という者で括らないで欲しい、実際は士業の者を組織する会が問題なのですね。

    士業者集団の組織が今問われていますから。

     国民の理解を得られない士業組織は崩壊するというところでしょう。

  3. 基本的に賛成
    牟田さんのご意見に基本的に賛成ですね。

    本人申請率が低いのは、構造的なのか、窓口が極端に不親切なのか、あるいは、じつは手続が簡単であるのに、国民に知らせていないだけなのか。

    まあ どの士業とは言いませんが、そういう部分で異常な関与率の高さを誇ってもなんにもならない。

    最近 疲れたので、そのギョーカイのことを考えるのを止めようかと、こういう意見を表明することもここらで止めます。

    まあ、隠居じじい的に出てきてなにか、ぼそっと言うことはあるかもしれません。

    牟田さんの今後の益々のご活躍を祈念しております。

    頑張ってください。

  4. 士業のエゴ
    関東電子政府推進会議ではお世話になりました。

    国民の血税を使ってやる政策なのですから、国民の立場に立って考えていかなければなりません。

    そこに、士業がエゴをむき出しにするのではなく、国民にとって利用しやすく、わかりやすい制度にしていかなければなりません。

    また、政府側も国民の方向をむかずに、こじつけの数字を追っているようでは、誰も利用しないものとなり、絵空事のものと成り果ててしまうでしょう。

    作る政府と利用者の代弁者たる士業の両者が自分たちのエゴをむき出ししていると、やがて国民はそっぽを向いていってしまうことになるでしょう。

  5. 士業組織が崩壊しても・・・
    士業組織が崩壊しても、国民になんら影響がない。士業は存在するが、組織は無くなる社会こそが国民にとって解りやすいのではないでしょうか?

  6. それが士業ということです。
    意味をいろいろに使わない方が良いです。士業と言うくくりで物事を進めている士業がいるからこそ、進みが遅いのではないでしょうか?士業というか資格者と言った方が良いと思います。

  7. 国民も士業も、電子申請で便利になったなーと実感できますように
    皆様、こんばんは

    コメントありがとうございます。

    確かに、士業の中でも、個人と組織では、電子申請に対する姿勢や意見が違いますよね。

    個人レベルでは、より国民の視点で電子申請が語られることが多いと思います。

    今日の電子政府評価委員会でも、「国民が便利になったと実感できること」が大切であると再確認されていましたし。

    士業の組織は、基本的に会員からの会費で成り立っているので、多数派会員向けの施策にならざるを得ない部分もあると思います。今後は、業界の要望と国民・社会のニーズとの調整を上手にしていかないと厳しいですね。

    実務では、士業団体ではなく個人の事務所・士業がより大切で、場合によっては、資格うんぬんを越えて「○○先生だから依頼する」となりますが、士業と付き合いのない国民からすれば、「士業(団体)」という括りで見てしまうと思います。

    それと、実際の行動に加えて、「国民から見てどう思われるか」にも配慮することが大切と思います。「国民のために・・・」と行動しても、それを国民に理解してもらわないことには、「士業のエゴ」と言われてしまいますので。。

    前田さんのご指摘は、士業の方からは反発を招きそうですが、一般の人から見ると、非常にわかりやすくて説得力があります。「わかりやすい」というキーワードは、電子政府・電子申請にとって本当に大切と思います。

    これまで、政府は、あまり利用者のことを考えずに電子申請を作ってしまい、いざ開始したら、国民にそっぽを向かれてしまいました。

    そこで、仲介者である「士業」にターゲットを絞ったわけですが、「士業」からしてみれば、「仕事上の付き合いで、売れ残りの使えない商品を押し付けられた」ようなもので、実際はかなり困っているのではないでしょうか。

    ただし、電子申請の実利用を考えた場合、利用者の選別(ターゲティング)は必須と思いますので、手続きの性質や実情を考慮しながら、サービス提供を行って欲しいですね。

  8. 第3回電子政府評価委員会
    牟田さん こんにちは。

    隠居するといいながら、あと一回。

    第3回電子政府評価委員会の議事がなかなか公開されませんが、もしかして法務省がチェックを入れているとか。

    あれを読まないとなんか落ち着いて隠居できません。

  9. 士業も「道具」の一つと~
    牟田さん お疲れ様です。

    明治時代に文字の書けない人のために「代書屋」がいました。(それが各士業へ繋がっています。)

    ワープロが現れたとき、時間とテマを考えて「ワープロ代書」がありました。

    PCの出はじめには、ソフトを自作するのは当然でしたがそれのできない人のために各ソフトメーカーが現れました。

    士業者は「電子申請」の(物理的や時間とテマの関係で)使わない人のために「道具となるべきだ」と思っています。

    その「道具」を選択するのは国民であって、士業者がその選択に耐えられるだけの「技術と技能」を持つことが大切だと考えています。

    それに耐えられなければ消滅しても仕方がないと思います。

     

  10. 議事要旨
    みなさま、こんばんは

    コメントありがとうございます。

    第3回電子政府評価委員会の議事要旨は、現在チェック中なので、今週か来週には公開されると思います。

    発言内容は、事務局と各委員でチェックしていますが、ヒアリング対象の省庁でもチェックしているのかはわかりません。

    私の発言内容は、割と話したままに掲載されるのですが、今回は内容(法務省に対するコメント)がかなり省略されていたので、追加修正(登記情報の開放・共有など)をお願いしました。

    事務局の内閣官房は、各省庁からの出向メンバーで構成されていると思うので、各省庁の意向を参考にする機会も多いのではないでしょうか。

  11. 慢心から変革へ
    eiyoshiさん、こんばんは

    コメントありがとうございます。

    士業の役割、国民や行政との関係も、時代と共にずいぶんと変わってきているんですね。

    特にそのスタイルや手法は、個性もありますし、地域性や業務内容によっても、変わってくるので、同じ時代でも、様々なやり方があると思います。

    私自身、行政書士から電子政府コンサルタントになり、3年ほど経過しましたが、その間でも、仕事への取り組み方や考え方など、たくさんの変化がありました。

    日々、慢心との闘いであり、果たしてお客様や社会の役に立ったのかと反省するばかりです。。

    特に、(税金が元になっている)公共のお金をいただくときは、金額の多寡にかかわらず、そのお金の意味するもの(額面以外の価値)を考えるようになりました。

    電子政府では大きな金額(税金)が動きますが、私自身、通常の金銭感覚(国民の視点)を失わないように気をつけたいと思っています。

  12. 議事要旨
    牟田さん コメントありがとうございます。

    やっぱ都合の悪いことはカットしたがる体質は変わりません。>赤煉瓦

    で、4回目の議事次第・資料もまだ出てなくて、ちょっと対応が遅くなってますね。>官邸

  13. 評価も双方向で
    sagoさん、こんにちは

    省庁の意向を反映させるのは良いことだと思います。

    都合の悪いことをカットするのはまずいですが、そうした意図は無いと思いますよ。

    評価する際は、根拠となる資料やデータを集めて、行政側の主張や意見を聴くことが大切です。

    その上で、国民の立場からすると、「こういう考え方や方法もありますよ」とアドバイスして、「気づき」を促すことが、評価委員の役割と認識しています。

    議事次第・資料の公開については、行政の方も、忙しい中で色々と調整しながら頑張っていますので、気長に待ってあげてください。

  14. re:評価も双方向で
    牟田さん 了解しました。4回目も資料に関係のあるのが出ておりました。

    半ラインではなあ。と、いう感想です。

    性悪説にたっても原本提出不要にもっていくように知恵をしぼらなければ、なんにもなりません。>某連合会

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