行政サービスもマルチチャネル化を

日経BP社のサイトに、「通販のマルチチャネル化に関する記事」がありました。このマルチチャネルという考え(戦略)は、「行政サービス」にこそ必要なものです。

電子政府・電子申請サービスは、単独では存在しません。様々なオンラインサービスが相互に関係するだけでなく、窓口や郵送などのオフラインサービスとも密接な関係があります。

つまり、本当に良い電子政府・電子申請サービスを提供したいのであれば、オンラインサービスだけを見ていてはダメなのです。むしろ、オンライン以外のサービスにこそヒントがあると言えます。

実際、インターネットのサービスだけで生活するような人は、まず存在しません。用途に応じてオンラインやオフラインのサービスを使い分けているのですね。

「行政サービス」についても同様で、本当に急ぐ場合は電話を使うでしょうし、詳しい説明が必要であれば、担当者に直接会って話すことを選ぶでしょう。

毎年の報告事項で、たいして変更も無いのであれば、インターネットや郵送が良いと考える人は多いでしょう。

初めての確定申告であれば、色々と相談や質問もしたいので、オンライン電子申告を避けて、窓口へ行くこともあるでしょう。

このように行政サービスには、マルチチャネル(選択肢)が必要なのです。

電子申請サービスの担当者は、オンラインの電子申請サービスのことだけ考える(自分さえ良ければいい)よりも、行政サービス、行政手続そのものを考える必要があります。

具体的には、

・オンラインサービスの得意なもの(強み)と苦手なもの(弱み)を整理する
・具体的な利用者を考えて、必要かつ有効な選択肢を整理する
・利用者の実情やニーズに合った「手段」でサービスを提供する

といったことが必要です。選択肢について整理すると、

1 インターネット(パソコン)

電子申告など、面倒な手続や大量のデータ処理に向いており、情報提供の能力は格段に優れている。規格外・例外的な手続処理は苦手。若年からシニア層まで幅広い利用者が期待されているが、「手続の完了(電子申請サービス)」に限ると、実際の市場規模(潜在的な利用者)は、それほど大きくない。

2 インターネット(携帯電話)

施設予約などの簡易で反復して利用されるサービスに強い。電話との相性も良いので、災害情報など緊急時のサービスにも力を発揮する。

3 郵送

実務では非常に有効な手段で、数多く利用される。また、行政から市民への通知等では、他の追随を許さない。今後は、インターネットや電話サービスなど、他のサービスを補完する役割も期待される。

4 電話(コールセンター)

問い合わせ等の簡易なサービス、緊急性を要するサービスに強い。一昔前と比べて、サービス内容の向上が著しく「たらいまわし」も少なくなっている。簡易な手続等の申請代行、インターネットサービスとの連携が期待されており、今後も重要性は増すと予想される。

5 窓口

詳しい話し合いや即決性が要求されるサービスに強い。「人と会って話せること」への安心感からくるニーズは、今後も無くならないはず。インターネットサービスや自動交付機サービスなど「非人間系サービス」との仲介的な役割も期待される。

各チャネルの特性を生かして、利用者の希望(匿名で相談したい等)に合った手段を選ぶようになれば、「何が何でも電子申請」という感じで、「使いにくい電子申請サービス」を無理やり使わせるような推進策も減ることでしょう

ところで、優秀な電子政府サービス事例は、国よりも地方自治体(それも中小規模の)に多いのですが、その理由として、「地方では財政等への危機感が強い」ことが挙げられるかな、やっぱり。

競争や危機感が少ない行政機関ほど、オンラインサービスに限らず、窓口も電話も、サービスの向上が進みにくい。そんなことを強く感じる今日この頃でございます

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