オーストラリア政府の電子認証、これからは「許容性」も大切に

オーストラリア政府の電子認証に関する資料は、AGIMOのAuthenticationのページにあります。最近の話題としては、スマートカードや職員認証などなど。豪政府の電子認証に関する資料を閲覧するのは、実に3年ぶりぐらいでしたが、電子認証の話題は、やはり英語の方がわかりやすいですね

オーストラリア政府は、認証(電子的な手法に限らない、本人確認、資格や権限の管理など)のレベルを4段階に分けています。レベル分けには、

1 認証の方式(主として技術的なレベル)
2 登録・管理の方式(主として基本方針や運用のレベル)

というの二つの要素を用いています。

本来は2の「登録・管理の方式」が基本であり、より大切なのですが、日本政府の場合、どうも「認証の方式」ばかりがクローズアップされているようで、とても残念に思います。

関連>>情報システムの利用者認証の方式に関する調査研究報告書(行政情報システム研究所:目次のみ)

確かに、ベンダーさんから見れば、わかりづらくて面倒な「登録・管理の方式」よりも、説明しやすくてお金になりやすい「認証の方式」の方が魅力的なのでしょうけど。。

「住基カード」を例としてみましょう。

住基カードは、「認証の方式」としては高度なスマートカード(ICカード)&電子証明書ですが、悪いことをする場合、そういう強い所は狙われません。「脆弱性(ぜいじゃくせい)」という言葉があるように、弱い箇所が狙われるのです。

どこが弱い箇所(あるいは「弱かった」=改善された点もある)かと言えば、

・住民登録時の本人確認
・住基カード発行時の本人確認
・カード表面に記載される情報

などが挙げられます。これらが狙われると、

・本人に成りすまして住民票(住所)を変更する
・本人に成りすまして住基カードを発行する
・カードを偽造する

となり、最終的には、「他人名義でお金を借りる」などの行為となります。

せっかく高度な「認証方式」である「スマートカード&電子証明書」でも、「登録・管理の方式」のレベルが低いと、「宝の持ち腐れ」となるのですね。

ではどうしましょう?と考えた場合、「登録・管理の方式」のレベルを上げるために

・住民登録時の本人確認を厳格化する
・住基カード発行時の本人確認を厳格化する
・カード表面に情報を記載しない→オフラインで利用させない(用途の限定)

などを実施します。

作者のおすすめは、「用途の限定」です。

・その年の電子申告だけに使える
・許認可内容の軽微な変更だけ(届出など)に使える

とすれば、「認証方式」は、それほどレベルが高くしなくても(=お金をかけなくても)良いのですから。

最後に一つ、電子政府の認証に関するヒントを提示しておきましょう。

今後は、「認証の方式」と「登録・管理の方式」に加えて、「許容性」を要素として取り入れましょう。

電子政府における認証は、利用者である国民や行政職員に理解され、受け入れられなければ、「絵に描いた餅=無駄な投資」に終わります。

利用者が理解し、納得し、実際に使ってもらえるかどうか。これを、作者は「許容性」と考えています。

「許容性」は、国によって異なります。その国の制度や文化・歴史、国民性、ICT活用度などを考慮します。

1 認証の方式
2 登録・管理の方式
3 許容性

この3つのバランスを考えて、本当の意味で「インフラ」と言える認証方法を確立していきましょう

関連書籍>>指紋認証技術―バイオメトリクス・セキュリティ金融機関における本人確認Q&A

“オーストラリア政府の電子認証、これからは「許容性」も大切に” に1件のコメントがあります

  1. 日本語の関連資料として
    読者の方から、日本語の関連資料を教えて頂きましたので、ご紹介します。ありがとうございました。

    平成17 年度情報基盤対策技術開発等推進費事業

    (次世代型電子認証基盤の整備)

    電子認証ポリシーに関する調査報告書

    http://www.japanpkiforum.jp/hojo/shiryou/FY2005_report/04-policy.pdf

    電子認証ポリシー関連資料(日本PKIフォーラムより)

    http://www.japanpkiforum.jp/shiryou/list_shiryou.htm

    作者からの追加として、

    「電子認証フレームワークのあり方に関する調査報告書」(2006年4月)

    http://www.nic.ad.jp/ja/research/200604-CA/index.html

    こちらも参考になります。

コメントは停止中です。