電子公証・電子定款のカラクリ(3):電子公証への意見
シリーズの最終として、作者が提出したオンライン電子公証サービス「指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令の一部を改正する省令案」への意見を紹介しておきましょう。
関連>>電子公証・電子定款のカラクリ(1)|電子公証・電子定款のカラクリ(2):オンライン化でどうなる?
(1)特定のソフトウェア等に依存しないサービスを
電子公証制度を利用する際に、「Adobe Acrobat」といった高価な有償のソフトウェアが必要となっています。電子公証のような公共性の高いサービスで、国民に対して特定の有償ソフトウェアの使用を義務付けることは、好ましくないと考えます。
電子私署証書のファイル形式(現在は「PDF形式」のみ)や電子署名の方式(現在は「PDF Public-Key Digital Signatureファイル」のみ)を限定するのであれば、「Adobe Acrobat」等の高価なソフトウェアを利用者側で用意すること無く、法務省オンライン申請システムにおいて、文書作成から電子署名まで行えるようにするべきと考えます。
実際、法務省オンライン申請システムでは、申請書の作成と電子署名の付与ができるわけですから、PDFファイルに固執しない限り、システム的に問題があるとも思えません。
また、ICカードタイプの電子証明書については、電子署名を行うためのソフトウェアが別途必要になる旨を聞いております。こちらも、国民の負担を増やし、公的個人認証サービスの電子証明書の利用を妨げることになりますので、新サービスを開始する前に改善するべきと考えます。
(2)利用できる電子証明書の拡大を
現在、電子公証制度で利用できる電子証明書は、4種類となっており、公的個人認証サービスを加えても、5種類しかありません。
今回の改正により、法務省オンライン申請システムを通じて電子公証サービスを提供するのであれば、少なくとも法務省オンライン申請システムで利用できる電子証明書(現在、10種類以上ある)であれば、電子公証制度でも利用できるようにするべきと考えます。
(3)定款の認証にかかる公証人の手数料の減額を
会社法の施行等により、会社設立の手続(商業登記申請)が簡素化される中で、以前にも増して、定款を認証することの必要性が低くなっています。
将来的には、会社設立の手続において定款の認証を不要とするべきと考えますが、少なくとも、「現状を踏まえた上で、なぜ定款の認証が必要なのか」を国民に対して説明するべきと考えます。
その上で、当面の措置として、1件5万円と高額になっている定款の認証にかかる公証人の手数料を減額するべきと考えます。特に、電子定款については、電子化・オンライン化されることで作業効率が高まるわけですから、手数料を減額することがより強く望まれます。
(4)政府が保有する情報を活用したサービスの向上を
電子公証制度をより良くするために、政府が保有する情報を積極的に活用し、次のようなサービスを実現するべきと考えます。
・文書の雛形(文例)のオンライン提供
・文書の自動作成サービス(例:質問に応えることで定款が作成できる)
・会社目的の検索・確認サービス
(例:業種、事業内容、取得予定の許認可等から、適切な目的を検索できる)
※参考:目的検索サイト;イー目的ドットコム
http://www.e-mokuteki.com/
定款の作成については、記載項目は法令で決まっており、法務省や公証人が事例データベースを保有しています。こうしたデータベースを国民に開放することで、
・定款の作成にかかる国民の負担軽減
・登記申請における補正率の低減(行政事務の効率化と負担軽減)
といった効果が期待できます。
以上
公証人手数料について
牟田さんのご意見にある「定款の認証にかかる公証人の手数料の減額を」に賛成です。公証人は準国家の機関とか準公務員として位置づけられているとかの説もありますが、そうであるならこの機関への支払額が異常なる高額となっています。
定款認証の件数が年間11万件とも言われる。その一件あたりの手数料が五万円ですから、市場的には55億円とも言われています。この市場を僅か500名前後の公証人が独占的に取り扱う。
これはどう考えても異常といわざるをえません。
そこで、公証人の全国一律同一手数料を撤廃し市場原理での価額にすべきではないか。
認証不要説との整合性は?
「いまは必要」という根拠はなんですか?廃止までは減額と言う論理のはどういうものでしょうか?
市場原理
家森さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
そうなんですよね。
かなりの市場規模(しかも、法的に強制)があって、それが寡占状態にあることは、やはりよろしくないかと。
これを変えるには、一つの方法としては、
家森さんもご指摘されたように、法改正して「定款の認証」を廃止してしまう。
できるのであれば、これが理想ですね。
別の方法が、段階的に廃止を進めていくもの。
それが、「手数料の減額」や「市場原理の導入」ということなんですよね。
現実的には、やはり段階的に少しずつ、という感じでしょうか。
市場原理で不要になるか?
価額の自由競争ができたとして、認証の要・不要との関係は?認証が低価格にできると、かえって、公証人のお墨付きがあったほうが値打ちがあるということになりませんか?定款「自治」論でいくほうが「すじ」だと思いますけど。それともまた政治的圧力ですか?
コメントについて
こんばんは、牟田です。
コメントを頂けるのは嬉しいのですが、詰問されるような内容ですと、私の方もお返事を差し上げにくいものがあります。
投稿される際には、ご配慮のほど、どうぞよろしくお願い致します。
詰問のつもりはありませんが
そのように受け取られたのなら失礼しました。不本意ながら不徳のいたすところです。コメントはもうしません。電子政府評価委員としての職責を全うされることを祈念いたしております。2010年、政府の後始末のつけ方を注視しております。(発展的なコメントのつもりだったのですがね。立場をいただくということは臆病になると言うことかもしれません。)
段階的廃止論に賛成
法律で強制しているところでは、その強制に見合う形での「手数料」規程としてほしいところですね。
段階的廃止論に賛成です。一気に廃止などなかなか出来ないです。
長い目で見ると
こんにちは、牟田です。
長い目で見ると、定款の認証を廃止する(対症療法)よりも、市場原理を導入(根本療法)した方が、公証制度にとっては良いとも考えています。
仮に「定款の認証」を廃止したとしても、その代わりに別の業務を法律で義務付けられる可能性もあるわけですから。
現在、各公証人の法的な資質については、非常に高いレベルにあると思いますが、サービス水準となると決して高いとは言えず、公証役場間の差も大きいように思います。
家森さんがご提案されているように、「公証人の全国一律同一手数料を撤廃し市場原理での価額」となると、サービスのレベルも向上し、より国民が利用しやすい制度になると思います。
カラクリ 番外
「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律施行令」の第十二条、
””(申請等に必要な電磁的記録を提供する者が所属する団体又は機関等)
第十二条 法第十七条第五項第二号 の政令で定める団体又は機関は、法務省とし、当該団体又は機関に係る同項 の政令で定める者は、公証人とする。 ””
今回の署名検証サーバーは法務省のサーバーを利用するとのことですが、それでは確認者は指定公証人のそれぞれが届出されるのでしょうか?
指定公証人の個々が個別に確認しているようには思えないが、詳細はブラックボックスですね。
法務省汎用受付システムから検証サーバーに飛びそこで検証作業するのみで、特段に個々の指定公証人が検証はしないのではないか、とも思われます。
どのような「カラクリ」になっているのかよくわかりません。
検証の実務
家森さん、こんばんは
牟田です。
コメントありがとうございます。
署名検証者又は団体署名検証者の手続きについて
http://www.jpki.go.jp/lapse/index.html
公証人のために法務省が検証して、その結果を公証人に対して通知するのでしょうね。
もちろん、一連の作業は電子公証システム上で自動に行われるのだと思いますけど。。
さらに、実際の操作となると、公証役場の事務員さんがされているかと
署名検証団体が検証サーバー
士業がいわゆる検証サーバーを立ち上げない限りは、絵に描いた餅になりそうな法律です。が、このサーバー設置費用なり運営経費が想定外にかかるようですね。
公証人の場合は、法務省の検証サーバー利用とのことですから、この問題はないのでしょうが。
各士業も
家森さん、こんにちは
コメントありがとうございます。
現実的には、各士業も省庁サーバを利用する(使用料を払って)のが良いと思いますが、そうなると省令改正も含めて色々と大変そうです。。
ただ、個人的には、各士業が電子署名の内容を確認すれば足り、有効性までは検証しなく良いと思います。
運用でカバーできると思うのです。
例えば、仮申請できるようにして、指定した期日に本申請として執行されるようにするとか。
期日までに電子署名が失効した場合は、自動的に申請が却下されると。
もちろん、期日までに本人や代理人から申請を取下げることもできる。
これは一つの例ですが、紙申請の発想から脱却して、色々と工夫することが大切と思います。
紙申請の概念から脱却しない士業
すべての士業が「検証」の必要性を強く主張していたわけではないのですが。
いつの間にか「検証しなければならない。」が「その為には法改正しなければならない。」となってしまったように思えますね。
おそらく、どの士業も「検証サーバー」の独自設置はしないのではないか、そのようにも思えます。緊急性、必要性、妥当性に難がありますからね。サーバー設置、運営経費が100万円ていどなら、とりあえず設置するのも一考ですけど。
士業も費用対効果
家森さん、こんばんは。
電子申請への対応は、なかなか難しいですよね。
実務や法律に詳しくて、パソコンも得意。
ところが、それだけでは電子申請を利用することはできても、組織として戦略的に対応することはできない。
むしろ、既存の知識が邪魔をして、先見を誤ることも多い。
ところが、周囲の人も良くわからないので、その誤りを指摘してくれる人も、止めてくれる人もいない。
その時に暴走を止めてくれるのが、費用対効果の視点だと思います。
署名の検証って・・・
・本当に必要なの?
・今すぐに必要なの?
・無いと、どんな問題が起こるの?
・他に方法は無いの?
・実現するのに、いくらかかるの?
・費用に見合うメリットがあるの?
国民の税金が使われないように祈るばかりです。
費用対効果==>妥当性
組織運営上で妥当なのかどうか、予算措置のバランスも要りますからね。
検証サーバーに関して、それぞれ各士業「思いこみ」「勘違い」もあって、それはそれなりに混乱してはいます。