電子申請のインセンティブ:電子申請・電子申告による税額控除と添付書類の省略
電子申請を普及させるためには「インセンティブ(奨励、誘因、動機)」が必要と言われます。申請手続をオンライン化することで、「いつでも、どこからでも」といったメリットが付加されますが、それらはインターネットの世界では当たり前のこと。そうなると、やはり「電子申請ならではの魅力や付加価値」が求められます。
最終更新:2010年3月4日
平成19年度税制改正の大綱(平成18年12月19日)が発表され、この中で電子申請のインセンティブとして「税額の控除」や「添付書類の省略」などが明記されましたので、ちょっと整理しておきましょう。
該当箇所は、
「七 納税環境整備」の
1電子証明書を取得した個人の電子申告に係る所得税額の特別控除の創設
2税務手続の電子化促進措置
「八 その他」の
4電子政府を推進するための税制の創設
となっています。
(1)税額の特別控除
電子申告と登記の電子申請で、税額控除が受けられます。どちらも、「最高で5000円」というのはちょっと寂しいのですが、まずは様子見ということでしょうね。
なお、会社設立の登記を電子定款&電子申請で行えば、4万5000円も割安です
●電子申告の税額控除
対象者:個人
対象税:所得税
条件:
・電子証明書(住基カードと公的個人認証サービス)を取得して
・平成19年分または平成20年分の所得税について(平成21年度も継続実施)
・申告期限を守って(3月15日までに)
・電子申告する(電子証明書を利用すること)
控除額:5,000円(その年分の所得税の額を限度として控除)
適用開始:平成20年1月4日から
注意点:
・控除されるのは一度だけ(19年度に適用があれば20年度の適用は不可)
・電子証明書の他にICカードリーダ(1500-3000円ぐらい)が必要
・平成21年分の所得税の確定申告でも控除がありますが、19年分か20年分の確定申告でこの控除を受けた方は、受けられません。
関連>>所得税の確定申告 e-Taxならこんなにいいこと|平成19年度税制改正(財務省行政手続のオンライン利用の促進等)
●ICカードリーダーについて
オススメは、「Edy」カード、SuicaやICOCAなどにも使えるソニーの非接触タイプでしょうか。値段も¥2,680とお手頃です。「多機能じゃなくて良いから、もっと安いので良い」という方は、日立やシャープ製もあります。
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日立 USB接続 公的個人認証用 接触型ICカードリーダー ライター HX-520UJ.K日立このアイテムの詳細を見る |
SHARP 公的個人認証サービス対応住民基本台帳用 ICカードリーダライタ ホワイト系 RW-5100シャープこのアイテムの詳細を見る |
●電子申請(登記手続)の税額控除
対象者:誰でも(個人、企業など)
対象税:登録免許税
対象手続:
①不動産登記:所有権の保存登記と移転登記、抵当権の設定登記
②商業登記:株式会社、合名会社、合資会社等の設立登記
条件:
・平成20年1月1日から平成21年12月31日までの間に
・対象となっている登記の申請について
・電子申請する
控除額:登録免許税額の10%(5,000円を限度とする)
適用開始:平成20年1月4日から
(2)電子申告における第三者作成書類の添付省略
所得税の電子申告をした場合、次の第三者作成書類を省略できます。
省略とは、「書類の提出・提示」が「記載内容の入力・送信」で済むということです。ただし、保存は必要ですので捨てないように注意しましょう。
この措置により、「電子申告なのに添付書類は別送なんて・・・」といった不満が無くなり、完全なオンライン&ペーパレス電子申告ができるようになります。
①医療費の領収書
②社会保険料控除の証明書
③小規模企業共済等掛金控除の証明書
④生命保険料控除の証明書
⑤地震保険料控除の証明書
⑥給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票
⑦特定口座年間取引報告書
適用開始:平成20年1月4日から
(3)税務関連書類の電子化推進
電子交付、電子提出できる書類が増えます。電子化が進んでいる企業であれば、税手続きのためにわざわざ印刷(出力)といった手間がなくなり、社内ネットワーク上で流通させるだけで済むようになりますね。
●電子交付できる書類の追加
源泉徴収義務者(企業など)は、納税者(従業員、顧客など)に対して、次の書類を電子交付できるようになります。
①公的年金等の源泉徴収票及び支払明細書
②退職所得の源泉徴収票及び支払明細書
③オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
④配当等とみなす金額に関する支払通知書
適用開始:平成20年1月1日から
●電子提出できる書類の追加
サラリーマンや年金受給者は、勤務先等(給与等の支払い者)に提出する源泉徴収関係の書類で、次のものを電子提出できるようになります。
①給与所得者の扶養控除等申告書
②従たる給与についての扶養控除等申告書
③給与所得者の配偶者特別控除申告書
④給与所得者の保険料控除申告書
⑤退職所得の受給に関する申告書
⑥公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
適用開始:平成19年7月1日から
注意点:勤務先等が税務署長の承認を受けていることが必要
(4)電子署名の省略
電子証明書(電子署名)を持っていなくても、次の場合は電子申告(イータックス)を利用することができます。この措置により、税理士さんが関与する電子申告が大幅に増えることでしょう。
①税理士等に依頼して電子申告してもらう
②源泉所得税の徴収高計算書を送信する
③税務署等に置かれている端末を使用して電子申告する
適用開始:①と②は平成19年1月4日から、③は平成20年1月4日から
(5)電子申請等証明制度の創設
電子申告した人は、申告した内容・日付などについて、税務署長等から電子的に証明してもらうことができます。
実務で利用される「確定申告書の控え」に代わるサービスと思いますが、紙の便利さが失われてしまうので、実際にどの程度利用されるかが課題ですね。
適用開始:平成20年1月4日から
以上、せっかくのインセンティブですので、電子申告・電子申請する(してみようと思う)人は、ぜひご活用くださいませ