新しい電子公証制度(平成19年4月1日から):窓口一本化の危うさも露見

法務省サイトの「公証制度に基礎を置く電子公証制度」についてで提示されたとおり、 平成19年4月1日から新しい電子公証制度がスタートしました。

新しい電子公証制度は、公的個人認証サービスの電子証明書に対応するため、法務省オンライン申請システム経由で利用するようになりました。

関連>>平成19年4月1日から始まった電子公証制度の概要について(Q&A)

新しい電子公証制度の概要は、次の通りです。

●サービスの種類

・電磁的記録の認証の付与の嘱託(定款の認証を含む)
・日付情報の付与の請求
・情報の同一性に関する証明の請求
・同一の情報の提供の請求

ちょっとわかりにくいですが、

・電子定款の認証(オフライン交付)
・電子文書への確定日付の付与(オンライン交付)
・認証や確定日付を受けた事実の証明(オンライン交付)
・認証を受けた電子文書の内容に関する証明(謄本の電子版。オフライン交付で書面交付も可)

といった感じです。

なお、「日付情報の付与の請求」だけ電子署名を付す必要がありません。他は全て、電子署名が必要です。確定日付は「いつ」だけを証明するもので、「誰が」には触れないからですね。

●サービスの利用時間

平日の8時30分から20時まで
休日:土日、祝日、年末年始

電子公証システムの事務取扱時間が、平日の8時30分から17時までとなっており、

実際には、公証役場に問い合わせたり、訪問したりする必要がありますので、平日9:00~16:00(土日、祝日、祭日はお休み)と理解した方が良いでしょう。

民間サービスと比べると、かなり温度差があるような。。

関連>>お問い合わせ先・利用時間・手数料について

●用意するもの(電子定款の場合)

一番安価な公的個人認証サービスを利用して電子定款を作成する場合、インターネットに接続したWindowsパソコンやワープロソフト等に加えて、次の4つと手数料が必要となります。

1 公的個人認証サービスの電子証明書:1000円(住基カードを含む)

住所地の市町村役場で取得します。基本的には即日交付ですが、数日かかることもあります。

住民基本台帳カード(持っていれば)、運転免許書等の写真付き身分証明書、印鑑を持参するのが無難です。

関連>>各都道府県の公的個人認証サービス

2 ICカードリーダ(住基カードを読み取る装置):3500~2万円ぐらい

対応するICカードリーダは、市町村によって異なりますので、確認してから購入しましょう。以前は、都心のビックカメラで買えたのですが、現在はオンライン注文でしか取得できないかも。。

関連>>適合性検証済ICカードリーダライタ一覧ICカードリーダライタの販売サイト

3 電子署名に対応するPDF作成ソフト:1万4千~6万円ぐらい

基本的には、アドビ社のアクロバット(スタンダード)の最新バージョンを購入するのが良いですが、バージョン6.0以上であれば使用可能です。

価格は、アマゾンで通常版が35000円ぐらい(Acrobat Standard 8 日本語版 WIN Retail

アップグレード版が12700円ぐらい(Acrobat Standard 8 日本語版 WIN Upgrade STD-STD)です。

なお、電子署名に対応していない「いきなりPDF」などは使えません。アドビ以外では、「SkyPDF Tools for Legal(スカイコム)」が使えるようです。

関連>>電子署名付きPDFファイルの取扱いについて

4 記録メディア

次の記録媒体(メディア)のいずれかが必要となります。

・フロッピーディスク
・CD-R(記録速度4倍速以下に対応したもの)
・CD-RW(記録速度4倍速以下に対応したもの)
・USBメモリ(USB MASS Storage Class 準拠)

オンラインで申請した電子定款は、公証役場へ行って交付してもらう必要があります。この時に、電子定款ファイルの入れ物(記録メディア)が必要になるのです。

高いお金を取るんだから、CD-Rぐらいサービスしてくれても良いと思うのですが。。

なお、電子公証で取り扱えるデータの大きさは、4メガバイトまでとなっています。

●手数料

定款の認証:50,000円
謄本の交付(同一の情報の提供):700円(書面交付:1枚につき20円加算)

他の電子申請でも言えることですが、実務では、依然として紙の謄本や証明書が必要となります。

オンライン申請でも、利用者のニーズを考慮して、電子(オンライン)交付と書面交付の選択肢を提供しましょう。

●使える電子証明書

新しい電子公証制度で使用することができる電子証明書は5種類あります。

1 商業登記に基づく電子証明書
2 AccreditedSignパブリックサービス2(日本認証サービス株式会社)
3 ビジネス認証サービスタイプ1-G(日本商工会議所:行政書士用)
4 公的個人認証サービス
5 日本司法書士会連合会認証サービス(日本司法書士会連合会)

●電子公証に対応している公証人と公証役場

指定公証人一覧」で確認できます。

新しい公証制度の開始に伴い、指定公証人の数がかなり増えましたが、地域によって差がありますね。

●手続きの流れ

★住所地の市町村役場
①電子証明書の取得

★自宅や勤務先で
②私署証書を電子ファイルで作成
③公証人への連絡
④電磁的記録へのデジタル署名の付与

法務省オンライン申請システムにアクセスして
⑤事前準備
⑥申請者情報事前登録
⑦法務省オンライン申請システムにログイン
⑧手続様式一覧の表示
⑨手続様式の保存
⑩手続様式の作成
⑪電磁的記録の添付
⑫デジタル署名の付与(媒体の選択)
⑬デジタル署名の付与(ファイルの場合)
⑭デジタル署名の付与(ICカードの場合)
⑮嘱託情報の送信
⑯申請意思の確認
⑰到達通知の確認

公証役場
⑱公証役場への来訪
⑲手数料の支払
⑳電磁的記録の認証・交付

うーん、こりゃ大変だわ

関連>>ご利用の手引き画面表示例(PDF)

●電子申請で求められる最低限のリスクマネジメント

新しい電子公証制度の開始に伴い、「法務省オンライン申請システム」に窓口が一本化されました。

ところが、開始早々、いきなりアクセスできないトラブルに見舞われたのです。

平成19年4月2日:アクセスが集中し繋がりにくくなる
平成19年4月3日:不具合発生として、緊急メンテナンス作業を実施
平成19年4月3日:緊急メンテナンス作業終了するが、依然として繋がりにくい状態が続く
平成19年4月4日:依然として繋がりにくい状態が続く

関連>>法務省オンライン申請システム(お知らせ)法務省オンライン申請システムにおけるアクセスの集中について(平成19年4月4日)

電子定款の利用は、平成18年9月で月平均2000件超。他の公証業務を入れたとしても、アクセス数は数千から数万件レベルと思います。

もしその程度でアクセス障害が発生しているとしたら、リスクマネジメントや事業継続の観点からは、かなり問題があると言えるでしょう。

電子定款の認証が遅れることによって、起業家や行政書士には実害が発生します。

法務省や公証人連合会は、そうしたリスク分析をしたのでしょうか。アクセス負荷のテストを事前に実施したのでしょうか。ベンダーとの契約に、アクセス障害等のサービスレベルに関する条項は含まれているのでしょうか。

電子政府・電子申請サービスについても、最低限のリスクマネジメントが必要ですが、残念なことに現在のレベルはそこまで達していないと思います。

今回の障害を良い機会として、他省庁も含めた政府全体で検討しましょう

関連>>情報システムの信頼性向上に関するガイドライン内閣官房情報セキュリティセンター

関連ブログ>>電子公証・電子定款のカラクリ(2):オンライン化でどうなる?

“新しい電子公証制度(平成19年4月1日から):窓口一本化の危うさも露見” に12件のコメントがあります

  1. 三日連続
    むたさん 

    http://www.moj.go.jp/oshirase10.html

    今日もです。これで4万円の印紙を設立日指定の関係でやむなく貼らないといけないところもかなり出てきてるでしょう。

    そしてせっかく値下がりした登記全部事項証明もオンラインにアクセスできなくて、窓口でとらざるを得なくなる人も多いでしょう。

    マスコミに叩いてもらわないとあかれんがはわからないのでしょうかね。「逸失利益」という言葉の意味が。

  2. 今回は
    sagoさん、こんにちは

    最新情報ありがとうございます。

    今回の件は、ちょっと深刻ですね。

    行政からすれば、2、3日の遅れは大したことで無いと思うかもしれませんが、

    会社設立は、お日柄(大安など)を気にするケースも多く、「スピード設立」を売りにしている士業さんであれば、印紙代4万円を自腹で・・・なんてこともあり得ますね。

    「障害」があること自体は、どのシステムでもあり得ることなので仕方ないと思いますが、事前の準備や事後の対応については、ちょっと問題がありそうです。

    ただ、問題が起きたときこそ、改善のチャンスと言えますので、法務省には慎重な(でも迅速に)対応をお願いしたいです。具体的には、

    ・事前の準備や事後の対応についての事実確認

    ・関係機関への報告と謝罪

    ・改善措置(当面および今後の措置)の検討と決定

    ・改善措置の実施

    ・関係者(行政、ベンダー)の処分

    ・上記内容についての速やかな公表

    もしこれができれば、電子政府の信頼性は維持(または向上)され、法務省の株も上がると思います。

    しかし、対応を誤ると、ドツボにはまり、電子政府のブランドを酷く傷つけることにもなり、かなり危険です

  3. なにおかいわんや
    むたさん ありがとうございます。

    先程 内部向け情報ですが、電子公証の、公証人側システムにもバグがあったことがわかりまして、お知らせ文書が出ております。

    指定公証人側でもテストランをしないままいきなりだったのでしょうか。

  4. 全部事項証明まだだめ
    えーと オンライン定款ともうひとつのウリだったはずの、全部事項証明の値下げ、全国のコンピュータ庁のものはオンライン指定庁経由でとれることになったこと。

    ところが使えません。なかには根性で使えるようにした方もいるようですが。

    ヘルプデスクモ機能せず、内々でわかったところではわずかに様式を変更したところ、その様式をとるためのバージョンアップ用サーバが貧弱でいくらやっても繋がらない。

    では、様式作成支援ソフトそのものをダウンロードしても、まだ中身が最新のものになっていないというお粗末な対応です。

    困ったもんでね。

  5. 全部事項証明やっとこさ
    公式にはアナウンスされてませんが、様式作成支援ソフトの中身が入れ代わっております。

    今のをアンインストしていれかえればエラーはでないでしょう。

    しかし なんで黙ってるのでしょう。ヘルプデスクも知らせてもらってないのか、丸一日たちますが、お返事メールがありません。

    電話は苦情で繋がらないらしい。

  6. 準備不足
    sagoさん、こんにちは。

    最新情報ありがとうございます。

    「全部事項証明の値下げ」は注目度も高く、影響が大きそうですね。

    今回のアクセス障害。マスコミに取り上げたこともあり、野次馬的なアクセスも増えているのかも。

    準備不足は否めないようですが、何とか早いところ復旧(安定)して欲しいと思います。

    私が気になるのは、「準備不足」がどこから来ているのかです。

    ・法務省(公証人連合会)の判断・指示

    ・ベンダー責任者の判断・指示

    ・予算の不足

    ・時間の不足

    などなど。

    一番悪いパターンは、「ベンダーへの丸投げ」で適切な指示やチェックが無かった。。というもの。

    こうなるとベンダーは、収益性を高めるために、できるだけ少ない人や安価な機器を使って、仕様書や契約内容に書かれた最低限のことを行います。ビジネスでやっているのですから、当然のことです。

    ともあれ、一番苦労するのは、現場のSEさんかと。。

    ご同情申し上げます

  7. やっとアナウンス
    むたさん こんにちは。

    午後からやっと公式アナウンスがでました。

    http://shinsei.moj.go.jp/new/new_top.html

    で 結局今は表玄関(法務省オンライン申請システム)が繋がりません。

    一応 利用者登録が前提ですので、そんなひやかし半分はないと思うのですが、なにしろ連日ですから、こうなったら意地でも申請してやる、という皆さんが多いのではないでしょうか。

    >一番悪いパターンは、「ベンダーへの丸投げ」で適

    >切な指示やチェックが無かった。。というもの。

    この可能性がないとはいえません。

  8. 今日はなんとか
    やっとアクセスもまあ正常に近い状態でしょうか。

    しかし、電子納付がうまく飛んでくれず、銀行側サイトから入っていってやっと終了というありさま。

    初期不良で済まされてはこまるのですけどね。

  9. ポップアップブロックに跳ねられました
    どうやら、電子納付にうまく飛ばないのは、Googleツールバーなどで、ポップアップブロックにはねられたからのようです。

    電子納付のボタンを押すときにキーボードのctrlキーを押しながら電子納付のボタンを押したらいいと教えてもらいました。

  10. 原因特定の難しさ
    sagoさん、こんばんは。

    最新情報ありがとうございます&お疲れ様でした。

    パソコンのトラブル全般に言えますが、電子申請で問題が発生したとき、どこに原因があるか特定するのが難しいんですよね。

    そんな時に役立つのが、sagoさんのような利用者の体験であり、ヘルプデスクへの回答なんですよね。

    だから、そうした情報がみんなで共有できれば、ヘルプデスクの負担も減って、トラブル解決が少しでも早まるのではと思います。

    法務省サイトでも、公式な「お知らせ」に加えて、「Q&A速報版」のような形で良いので、利用者の経験や疑問とそれに対する回答やヒントを掲載すれば良いと思います。

    利用者にとっては、完璧な回答や問題解決までいかなくても、自分だけじゃないという確認や、ちょっとしたヒントをもらえるだけでも、かなり助かると思うのですね。

    法務省の「証明書交付サービス」は、数少ない「実利が得られるおすすめ電子政府」の事例として、当ブログでもご紹介しようと思ってたのですが、もう少し安定してからの方が良さそうです

  11. 少しおちついたか
    むたさんお手数おかけします。

    処理終了メールより、現物が先に届きました。

    こういうのはあっていいかと思います。

    どうにか今週からは流れがよくなるかと思うのですが、

    「平成19年5月1日から債権譲渡登記の大量申請(請求)がオンラインでも可能となります。」

    http://www.moj.go.jp/MINJI/minji135.html

    とありますので、ゴールデンウィーク明けがちょっと心配です。

    「証明書交付サービス」は確実に増えると思いますので、電子納付あたりも、さっとできる仕組みを考えてもらいたいですね。

  12. 今後は
    sagoさん、こんにちは。

    コメントありがとうございます。

    どうやら落ち着いたようですね。

    知り合いの行政書士さんからも「無事にできました。」といったご報告をいただいています。

    公証人さんから「(確認のために)紙も付けてね」と言われた話しには笑っちゃいましたけど。。

    今回の件は、行政にとってもベンダーさんにとっても、そして利用者にとっても良い勉強になったと思います。

    債権譲渡登記のオンライン申請は、それほど増えないと思いますが、万全な準備で臨んで欲しいですね。

    ともあれ、関係者の皆様には、お疲れ様でございました

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