電子政府におけるICカードとPKIの市場(1):普及が進まない住基カードと公的個人認証サービス

今回は、電子政府において使われるICカードや電子証明書について、その現状と今後の展開を整理したいと思います。

電子政府のサービスは、インターネットを中心とした情報通信ネットワーク上で提供されます。ですから、オンライン(=相手方が見えない非対面の環境)で本人確認(実在や意思の確認)することが必要となります。

その方法の一つとして、「PKI」と言われる技術的な仕組みを活用した「電子証明書」や「電子認証・署名」があり、電子政府でも導入されています。

代表的なものとしては「公的個人認証サービス」があります。

「電子証明書」の主な用途としては、電子申請、電子申告、電子入札などがあります。

★参考資料
公的個人認証サービス
http://www.jpki.go.jp/

申請者の電子証明書を発行する認証局
http://www.gpki.go.jp/cas/ee.html

電子署名に必要な利用者の電子証明書について(e-Gov電子申請システム)
http://shinsei.e-gov.go.jp/menu/prepare/certificate.html

e-Tax(電子申告)で使用できる電子証明書
http://www.e-tax.nta.go.jp/systemriyou/systemriyou3.html

 

電子政府で利用される「ICカード」は、小さなコンピュータを積んだ携帯用のカードです。代表的なものとしては「住基カード」があります。

「電子証明書」と「ICカード」は、「定期」と「定期入れ」みたいな関係にあり、「ICカード」の中に「電子証明書」を格納することができます。

ですから、全ての「ICカード」の中に「電子証明書」が入っているわけではなく、「住基カード」にも発行時には「電子証明書」が入っていません。

ちなみに、交通機関等で使える電子マネーの「PASMO」や「Suica」もICカードですが、PKI未対応なので「電子証明書」を入れることができません。

★参考資料
公的分野における連携ICカード
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/others/iccard.html

住民基本台帳カード
http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/juki_card.html

FeliCa(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/FeliCa

知っておきたいICカードのタイプと使われ方(@IT)
http://www.atmarkit.co.jp/fsecurity/special/73ic/ic01.html

情報セキュリティ分野における技術ロードマップ~ICカードシステムにおける情報セキュリティ~(情報処理推進機構)
http://www.ipa.go.jp/about/pubcomme/200603/index.html 

「ICカード」も「電子証明書」も、収益の基本は「一枚につき、いくら」となっており、利用するごとに課金される仕組みとなっていません。

ですから、「ICカード」や「電子証明書」のベンダーさんにとっては、「発行枚数を増やすこと」が重要になります。

それでは、電子証明書の市場規模と発行枚数について、用途別に見ていきましょう。

●「個人用の電子証明書」の市場規模と発行枚数

電子政府における個人用の電子証明書は、地方公共団体が発行する「公的個人認証サービスの電子証明書」が主流となっています。

「公的個人認証サービスの電子証明書」を格納できるICカードは、現時点では「住基カード」だけとなっているので、「公的個人認証サービス」と「住基カード」を見れば、個人用電子証明書の市場規模がだいたいわかります。

住基カードの発行枚数は、2006年(平成18年)8月末において、全国で約109万枚となっています。

住基カードは、年齢制限も無く、住民登録されている日本人であれば誰でも取得できるので、市場規模としては巨大なのですが、現状を踏まえると100~200万規模と言えるでしょう。

公的個人認証サービス電子証明書の発行枚数は、2006年(平成18年)11月末において約20万枚となっています。

公的個人認証サービスの電子証明書は、住民登録されている満15歳以上(成年被後見人を除く)に発行されるので、住基カードよりは対象が少ないものの、それでも1億以上の市場規模があります。しかし、実際には数十万規模となっています。

数十万規模の発行実績がある電子証明書は、国内では非常に珍しい例であり、個人的には「よくここまで増やしたものだ」と感心しています。

とは言え、PASMOの発売枚数が4日間で100万枚、1カ月を待たずに300万枚を突破して発行制限されるまでになり、Suicaの発売枚数も2,000万枚を突破したのと比べると、何とも寂しい限りです。

しかも、住基カードの普及拡大で期待される公共目的の利用についても、世田谷区や目黒区などでPASMOを採用するといった例が出てきました。

市民の利便性や費用対効果を考えると、既に普及している民間ICカードを活用する方が圧倒的に有利ということですが、住基カードの立場はますます苦しくなりますね。

★参考資料
住民基本台帳カードの交付状況等について(平成18年8月末現在)(PDF)
http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/pdf/060831_1.pdf

公的個人認証サービスの最近の動向(平成18年12月)(PDF)
http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/pdf/061222_1_s4_2.pdf

人口推計月報
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/tsuki/index.htm

PASMOの発売枚数が4日間で100万枚を突破!PASMO・Suicaの発売枚数は計2,000万枚を突破!(JR東日本)(PDF)
http://www.jreast.co.jp/press/2006_2/20070310.pdf

PASMOとは:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20070409/267733/

次回は、企業用、電子入札用、士業用といった電子証明書について整理したいと思います。