電子政府サービスにおける開発手法のあり方(2):今後の注目は「レンタルモデル」

電子政府サービスにおける開発手法のあり方(1):全体の流れの中で「開発」を考える の続きです。今回は、具体的な開発手法について整理してみます。

●どんな開発手法がある?

電子政府における開発手法(開発方法、開発モデル)の分類は、開発プロジェクトをどのように運営するかに焦点を当てた「開発プロセスモデル」として考えるのが良いでしょう。

参考>>ソフトウェア工学(Wikipedia)いまなぜ開発プロセスを注目するのか?(@IT)

先ごろ経済産業省が発表した「情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」の最終報告では、開発モデルの例として次の4つを挙げています。

1 ウォーターフォール型
2 反復型
3 プロトタイプモデル
4 パッケージ導入

「ウォーターフォール型」は、これまで主流となっている方法で、決められた線路の上を走っていく感じで、途中で引き返したりしません。

いわゆる「レガシー」システム等の開発で成果を上げてきたものですが、電子申請のような未成熟で不確定な要素が多いシステムの開発では、成果を上げることが難しいと言われています。

「反復型」と「プロトタイプモデル」は、どちらも反復(引き返し)するものですが、よりコマ目に反復を繰り返すのが「反復型」です。

ソフトウェア工学で言うところの、「アジャイルソフトウェア開発」が「反復型」で、「スパイラルモデル」が「プロトタイプモデル」と考えて良いでしょう。

「プロトタイプモデル」は、試作品(プロトタイプ)を作って、実際の利用者や関係者に使ってもらい、その結果を踏まえて正規版を完成させる方法です。

電子申請のようなサービスでは、できるだけ早い段階で試作品(実際に動いて触って体験できるもの)を提供することで、最終的にはかなり使いやすいサービスを実現することが可能です。

早い段階での試作品では、システムとしての完成度は低くかまいません。極端に言えば、「見た目」だけの張りぼてでも良いのです。

試作品に触れる利用者の行動を観察することで、「見た目」の裏側で動くシステムに必要な機能や要件も見えてくるからです。

「パッケージ導入」は、自前でシステムを開発・構築しないで、既に完成したパッケージを利用する方法です。

上手に活用すれば、低価格で質の良いサービスを実現することができますが、今までの仕事のやり方に固執して「カスタマイズ」を繰り返すと、かえって割高となってしまいます。

「パッケージ導入」をきっかけとして業務の見直しを行い、原則として「カスタマイズしない」とするのが良いのですが、その場合、パッケージの質を見極めて選択する能力が求められます。

●今後の注目「レンタルモデル」

上記の4つ以外に考えておきたいのが、「システムを持たない」方法で、「レンタルモデル」とでもしておきましょう。

「レンタルモデル」には、「パッケージ導入」に近い「ASPサービス」や「民間サービスの活用」があります。

「ASPサービス」は、インターネット経由でアプリケーションソフトを利用するサービスで、自治体の総合情報ネットワークであるLGWANでも多くのASPサービスが提供されています。

参考>>ASPとは 【アプリケーションサービスプロバイダ】 (Application Service Provider) : IT用語辞典LGWAN-ASPサービスリスト

「民間サービスの活用」は、多くの国民が利用している民間サービスの「場を借りる」という考え方で、「インターネット公売」や「公金支払い」などがあります。

関連>>Yahoo!公金支払いYahoo!ビジネスセンター:官公庁オークション

「レンタルモデル」は、純粋な開発手法ではありませんが、「使ってもらえる電子政府・電子申請サービス」を実現する上では、費用対効果の高い方法です。

特に「民間サービスの活用」は、「使ってもらえるかどうか」を決める大切な利用者視点である「アクセスしやすさ」「使いやすさ」といった点で、非常に優れています。

政府が提案している「電子私書箱サービス」なども、「自前で構築する」といった選択肢だけでなく、民間サービスの「場を借りる」という選択肢を検討する必要があるでしょう。

ということで、電子政府における開発手法は、次の5つで理解しておくのが良いと思います。

1 ウォーターフォール型
2 反復型(アジャイルソフトウェア開発)
3 プロトタイプモデル(スパイラルモデル)
4 パッケージ導入
5 レンタルモデル(ASP、民間サービス活用)

次回は、「プロトタイプモデル」を例にして、「使ってもらえる電子政府・電子申請サービス」の作り方を考えてみたいと思います。