年金記録問題検証委員会が中間発表、役所もベンダーも組織文化を変えるきっかけに
年金記録問題検証委員会から、「年金記録問題検証委員会の取組について(中間段階の発表:平成19年7月10日)」が公開されています。
年金記録問題をニュースで見るたびに、「日本人は大人しいなあ」と感心してしまう。
国が違えば、暴動が起きてもおかしくない状況と思うのだけど。。
特に、年配の方が、窓口で何度も請求しているにもかかわらず、よく調べもせずに給付を受けられなかった。なんてニュースを聞くと、さすがに「怒り」を感ぜずにはいられない。
社会保険庁の人は、日本が平和な国であることに感謝しましょう。
現在、日本で支給されている年金は、
・支払った保険料と比べて金額が大きすぎる。
・今の若い世代がもらえる金額と比較してもらい過ぎている。
・公的年金は、最低保障として機能すれば良い。
といった主張があるようで、なるほどと思います。
しかし、今さらそんなこと言われても、年金がもらえるつもりで一生懸命に働いてきた人が多いわけで、上記の課題はこれからの世代が解決していくべきことですね。
さて、今回の「中間段階の発表」で、気になる記述を取り上げてみましょう。
・社会保険庁の説明は不十分
これは、その通り。説明できないのか、説明しないのか。恐らく、両者が混在しているのでしょう。
・背景には、社会保険庁の業務に対する待ちの姿勢、管理・評価の不十分さ等が見られる。
・オンライン化反対闘争や業務改革に後ろ向きの多数の覚書・確認事項が示す、既に強く批判されている職員団体の行動。
これは、社会保険庁だけでなく、多くの役所に当てはまるものですね。社会保険庁の場合、程度が特にひどかったと。
・保険料の納付等が台帳等に記録されていない問題。(着服が絡んでいる可能性を含む)
・職員による保険料の着服等の不正行為など、コンプライアンスの意識が低い組織。
年金記録問題では、大多数の職員が「見て見ぬフリ」をする中で、「どさくさに紛れて犯罪を行う」職員がいたのですね。なんだか、学校のイジメ問題を思い出しちゃいます。。とにかく、ウミは全部出しちゃいましょう。
・「レガシー」と呼ばれる旧式のシステムについて、統計分析や業務管理等まで考慮して設計されていたか疑問。システム等の問題点を検証。
間違った年金記録が蓄積されることについて、システム開発を担当したベンダーが認識していなかったとは到底考えられません。現契約の解除、損害賠償の請求、公共調達への不参加といったペナルティを課すことを検討すべきでしょう。
・評価と検証は、専門的立場からの検証を踏まえつつ、国民の立場に立ち、社会の常識に従って判断。
政治的な立場では、与党も野党も当事者という側面があり公平な評価や検証を期待できません。検証委員会の力量が問われますね。
電子政府関連で言えば、今回の検証に合わせて、「社会保険業務の業務・システム最適化計画」の見直し(内容、スケジュール等)が必要でしょう。
電子政府の問題は、「システム2割、役所文化8割」と言われたりしますが、年金記録問題でもその通りと言えます。
そもそも、システムの発注・構築・運用保守は、役所の仕事のやり方や考え方、各職員の意識といったものに依存しています。ですから、「役所文化10割」とも言えます。
各省庁やベンダーは、社会保険庁を他人事と考えずに、自身の役所・企業文化を変える方法を考えて欲しいものです。その際に、「電子政府」は良き支援者となってくれることでしょう