電子政府でもデジタルフォレンジックの活用を

日本の電子政府・電子申請サービスでは、「言った言わないのトラブルを避けたい」といった「行政の視点」により、また、紙の行政手続における印鑑文化の流れもあり、電子署名が採用されています。

ところが、現在の電子署名は「利便性との相性」が悪いため、結果として国民を電子政府・電子申請サービスから遠ざけてしまい、普及の妨げとなっています。

そうした状況を打破するためには、電子政府でも「デジタルフォレンジック」を活用すると良いでしょう。

●デジタルフォレンジックとは

デジタルフォレンジックとは、

・コンピュータに関する犯罪や法的紛争について
・電磁的記録等(機器を含む)の証拠保全、調査・分析を行い
・電磁的記録等の改ざん・毀損等についての分析・情報収集等を行うことで
・法的な証拠性を明らかにする

ための調査手法や技術のことです。

参考>>デジタルフォレンジックとは(IT用語辞典)デジタルフォレンジックとは(デジタル・フォレンジック研究会)

関連書籍>>デジタル・フォレンジック事典

裁判等で使えそうな証拠を
・集めて
・調べて
・整理して
・保存して
・いつでも使える状態にしておく

という感じですね。

また、問題が発生した後の対応だけでなく、

・フォレンジックを活用した定期的な監査などにより
・不正行為の発生を抑止したり
・関係者の法的な権利を守ったりする

といった効果もあります。

●デジタルフォレンジックの必要性

デジタルフォレンジックの必要性については、「技術戦略専門委員会報告書2006(内閣官房情報セキュリティセンター:平成19年6月29日)」などにも指摘(政府による投資・研究の必要性など)があります。

上記報告書では、刑事事件や民事事件に触れていますが、作者としては「行政と国民の間のトラブル(裁判外の和解、行政訴訟など)」でも大いに活用して欲しいのです。

例えば、最近の年金記録問題に見るように、

・競争や緊張感のない環境で(馴れ合い、身内意識)
・第三者等による定期的な監査等がないと
・問題が発生してしまうだけでなく
・事後の対応が遅れてしまい
・被害が拡大してしまう

と言えるでしょう。もちろん、行政だけでなく、企業においても同様ですが。。

もし、デジタルフォレンジックを活用した定期的な監査などがあれば、行政内部における不正行為を抑止して、国民(行政職員を含む)の権利を守るといった効果が期待できるでしょう。

●電子政府サービスにおけるデジタルフォレンジックの活用

作者が、「電子政府におけるICカードとPKIの市場(8):電子証明書を活用した電子政府のサービスモデル」で提案した内容も、実はデジタルフォレンジックの考え方を採用するものです。

面倒な電子署名の利用を避けることで、国民の負担を減らしながらも、トラブル防止や事後対応できるようにしておきましょう。

ということです。

電子署名の機能は、確かに素晴らしいもので、同じ機能を持つ代替手段を探すのは難しいと言えます。

しかし、「電子政府サービスの利便性を高めつつ、より安全で安心できるものにする」という目的を実現するための手段は、電子署名だけではありません。

そうした手段を探して、代替手段とすることも可能ですし、もちろん電子署名と組み合わせても良いのです。

しかしながら、電子政府が、建前ではない「利用者の視点」を本気で考えるようにならないと、今後も「電子署名」に振り回されることになります。

本ブログでは何度も言っていることですが、「電子署名」が悪いのではなくて、あくまでも「行政の考え方や姿勢」に問題があるわけで、「行政の考え方や姿勢」が改められない限りは、電子政府における「電子署名」の問題はなくならないのです。

「デジタルフォレンジック」についても同様で、「利用者の視点」に立たないと、採用しても効果は見込めません。むしろ、行政側の不当な主張を正当化するための手段として、悪用される可能性もあります。

さて、日本の電子政府が、本当の意味で「利用者の視点」を考えるようになるのは、果たしていつの日のことか

“電子政府でもデジタルフォレンジックの活用を” に1件のコメントがあります

  1. フロントライン、デジタル・フォレンジック関連2製品を11月24日に発売
    転載:フロントライン
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