電子署名の活用事例から学ぶ世界の電子政府、日本は成功要素が少ない?
次世代電子商取引推進協議会 (ECOM)から、平成18年度の成果報告書が公開されています。中でも、世界の電子政府の動向がわかる「電子署名普及に向けた調査報告書(2)-海外及び国内金融分野での利用動向」がオススメです。
日本でもそうですが、電子署名が利用されるのは、民間取引よりは、政府に関係する分野です。特に、オンライン電子申請や電子入札などでの利用が多いですね。
ICカード格納の電子証明書が普及し、同時に電子政府の利用も進んでいるのは、ヨーロッパが多いのですが、だいたい次のような要件があると思います。
1 政府に対する国民の信頼感が高い
2 IT政策が国の最重要施策となっている
3 規模(国土、人口等)が小さい
4 国民の登録番号制度がある
5 国民のITリテラシーやメディアリテラシーが高い
●政府に対する国民の信頼感が高い
政府への信頼感が無いと、電子政府への信頼感も無く、国民の理解も利用も進みません。
日本では、政治や政府に対する信頼感は高いと言えず、その一方で、「面倒なことは行政に任せる」「選挙に参加しない」という国民の意識があり、政府も国民も身勝手で無責任といった感があります。
こうした状況で、電子政府が成功することは非常に困難です。まずは、政府と国民の関係作りが必要と思います。
●IT政策が国の最重要施策となっている
最重要施策となっているとは、「生き残るにはこの分野しかない」という覚悟があることを意味します。
日本でも、IT戦略本部が設置され、IT関連の戦略や施策が策定・実行されています。しかし、日本には様々な産業があり、国内だけでもそれなりの市場規模があるので、「生きるか死ぬか」といった覚悟はないと思います。
●規模(国土、人口等)が小さい
規模が小さいと、小回りが利きます。
電子政府のような発展途上の未成熟なサービスでは、試行錯誤しながら、小さな成功を積み重ねていくことが大切なので、小回りが利いて迅速に対応できることは大きな強みとなるのです。
ICカードにしても、数百万の国民に配布するのと、1億の国民に配布するのとでは、準備・実施・事後対応などの負担やリスクが全然違います。
●国民の登録番号制度がある
既に、国民の登録番号制度(納税者番号、社会保障番号、国民登録番号など)が存在し、国民の生活や企業活動において利用されていると、国民ID(身分証明書)としてのICカードの配布は、理解が得られやすくなります。
日本では、最近まで登録番号制度が存在しなかったのに加えて、登録番号制度に対する国民の理解や制度設計が不十分なまま、住基ネットや住基カードを稼動させたり、新たに「社会保障カード」を計画したりするなど、本末転倒とも言える進め方をしています。
まずは、国民のID管理や登録番号制度について、反対派も含めて十分に議論し、費用対効果も含めて慎重に検討することが必要です。その上で、具体的な手法として、「ICカードを活用しましょうか」と考えるのが本来の進め方なのです。
●国民のITリテラシーやメディアリテラシーが高い
日本では、最新のデジタル機器が入手でき、IT機器の環境は世界でも最上位と言えるでしょう。
その一方で、ITリテラシーやメディアリテラシーについては、先進国の中でも非常に低いというのが現実と思います。
電子政府が利用されないのは、何でもかんでも政府やベンダーが悪いというわけではなく、実は国民にも責任があるのです。
ネット上の匿名性は最大限に尊重されるべきですが、匿名による誹謗中傷や集団攻撃などを見るたびに、「日本人の弱さ」や「社会的弱者が持つ攻撃性・凶暴性」を感じます。
新聞やテレビの報道だけに振り回されることなく、国民が政府をしっかり監視して、建設的な議論や提案ができるようになれば、電子政府の可能性は飛躍的に高まるでしょう。
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