社会保障カードの在り方に関する検討会が開催、セキュリティより大切なことがある
厚生労働省から、先月開催された「社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会(第1回)」の配布資料が公開されています。
・現行の年金記録情報の提供方法(PDF)
・現行の年金手帳・被保険者証(PDF)
・現行の医療費通知等(PDF)
といった情報は、国民として知っておきたい内容ですね。
「社会保障カード」については、当ブログでもたびたび取り上げてきましたが、多くの問題を抱えています。
関連ブログ>>保険証へのQRコード装着中止で、国民不在のICカード化が進む|「社会保障カード」の導入、厚生労働省まかせは危険
これまでの政府資料を見ると、
1 「社会保障カード(仮称)」と「健康ITカード(仮称)」は同じ
2 保険証へのQRコード装着は中止して、ICカード化(社会保障カード)を進める
3 「社会保障カード」は、年金手帳、健康保険証、介護保険証の機能を持つ
4 「社会保障カード」は、写真付きの身分証明書として使える
5 「社会保障カード」は、「社会保障番号(全国民に付与)」の導入を前提としている
5 「社会保障カード」は、「住基カード」と異なり、全国共通の外見・仕様となる
6 「社会保障カード」は、「住基カード(任意交付)」と異なり、一律交付となる
7 「社会保障カード」と「健康ITカード」の基本構想は、平成19年度中に決定される
8 「社会保障カード」の導入時期は、平成23年度を予定している
9 上記に並行して、「社会保障番号」を「納税者番号」として利用できるか検討を進める
となっており、検討会は始まったばかりですが、基本構想は既に決まっているのですね。
作者が一番恐れるのは、国民不在で進められ、関係者の理解や協力も不十分なままで、社会保障カード制度が導入されることです。現時点では、この可能性が非常に高いというのが作者の見解です。
そうなると、推進側にとっても反対側にとっても使いにくい制度やシステムが構築され、費用対効果の低い「(電子政府の)新たな負の遺産」となってしまうことでしょう。
検討会の資料を見ると、検討事項として
・社会保障カード(仮称)に関する基本構想
・制度設計・基盤整備に関すること
・セキュリティの確保・個人情報の保護等に関すること
・実施・評価・費用負担等の在り方に関すること
・その他
が挙げられています。
作者が重要と考えるのは、制度設計で「社会保障番号の導入(全国民に付与)」等について
・どのように国民(利用者および利害関係者)へ経過説明をしていくのか
・どのように国民から理解を得るのか
を明記することです。
このまま、国民不在で「セキュリティの確保・個人情報の保護等」を議論しても、ほとんど意味が無いと言って良いでしょう。
本来は、手段・ツールであるセキュリティが論点の中心となってしまい、その前に考えるべきことがおざなりになる気がするのは作者だけでしょうか。
※電子政府の議論においては、「情報セキュリティ」「個人情報保護」「プライバシー保護」が、しばしば黄門様の印籠みたいに使われ、思考停止を招く(意図的に?)ことがあります。
今までの電子政府では、「どんなサービスを作るか」ばかりが語られ、「どういったプロセスを経てサービスを作っていくか」が抜けていました。サービスを作っていく過程が、サービスの品質や信頼性を決めるのに。。。
「社会保障カード」や、これから検討が開始される「次世代電子行政サービス」では、「どういったプロセスを経てサービスを作っていくか」が抜けてしまわないよう、作者としてもチェックしていきたいと思います。
早くも
第2回の資料も公開されていました。
第2回 社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/10/s1015-5.html
早くも、「論点の整理のまとめ(案)」が。。
うーん、「できレース」と言われても仕方ないかなあ