「複雑な仕組み」が電子政府や人心を悪くする
日経BP社の「骨太」には欠点がある(SAFETY JAPAN)という書評記事を読みました。今後の社会保障費や医療費をまかなうためには、増税が必要ということですが、基本的には作者も賛成です。
関連書籍>>「小さな政府」の落とし穴―痛みなき財政再建路線は危険だ
日本にいれば、生活保護もあるので、基本的には食べることに困りません。
にもかかわらず、多くの人がお金を貯めこむことに必死で、将来の生活に不安を感じています。
電子政府に関っていて思うのが、日本の社会保障や医療制度が、とても複雑な仕組みで動いているということです。
複雑な仕組みを動かすには、たくさんのお金や人が必要で、その仕組みの中で「電子政府」を実現しようとするために、これまた多くのお金がかかり、出来上がったシステムを維持するために、さらに労力やお金がかかるという悪循環になっています。
また、複雑な仕組みだと、外から見えない部分が多くなるので、悪いことをしやすいという面もあります。
映画「シッコ」のブログでも書きましたが、いっそのこと医療費を全部税金でまかなってしまえば、貧富に関係なく誰でも安心して治療を受けられるだけでなく、保険料納付や給付の手間がかからないので、年間何百億円・何千億円のコスト削減にも繋がります。
その削減分を、医療費に当てた方が、よほど効率的と思うのですね。まあ、保険会社は猛反対すると思いますが。。
年金にしても、既に国民年金の保険料を徴収できていないという現実があるのですから、いっそのこと税金負担としてしまえば、保険料の徴収をしなくて済むわけです。それだけで、いくらのコスト削減ができることか。あ、こちらも、社会保険庁が反対するかな。
税金負担としてしまえば、わざわざ年金の給付申請をすること無しに、一定の年齢になれば自動的に通知が届いて振り込まれるようになると。いま政府が予定している、保険料の納付状況確認のお知らせ(年間何百億円もかかる)なども全て必要なくなりますね。
給食費の未納だって、初めから税金(授業料)に含めてしまえば、払う払わないの争いが起きることもないだろうに。。
とりあえず、社会保障も医療費も給食費も全部税金で負担したとすれば、どれだけのコストが削減されて、どれだけを税金でまかなえば良くて、どれだけの消費税を上げれば良いのか、について政府が試算してみる価値はあると思うなあ。
イスラムの世界では、労働が重視される一方で、「働かない人」にも寛容です。
いつの日にか働いて(お金がもらえる労働に限らない)社会に還元していけば良い、といった考えで、働きたくない人を無理に働かせたりせず、休ませてくれる。
このまま日本が更なる高齢化社会を迎えると、国民間の不公平感が高まり、払う払わないでますます殺伐とした社会になってしまい、「相互扶助」なんてどこかに消えて無くなってしまいそう。。
関連>>イスラム経済思想は日本を救う(日経ビジネス オンライン)
「電子政府」は、もともとはコンピューターの話ではなくて、「こんな社会を実現できたらいいなあ」と考え、それを実現していくためのもの。できることなら「子供もお年よりも若者も、みんなが安心して暮らせる住み良い社会」を目指したい。
ところが、今の電子政府は、社会をますます混乱させ人々の心を荒んだものにする「複雑な仕組み」を、どうにか電子化・システム化して動かそうということになっています。
「電子政府の評価」に携わる身としては、この辺りを多いに反省しながら、制度改革を視野に入れた政策提言なども積極的に行っていきたいと思う今日この頃でございます