第3回関東電子政府推進員協議会(2):オンライン申請の課題と士業へのアプローチ

第3回関東電子政府推進員協議会(1):電子政府推進員の活動と成果』の続きです。今回は、協議会の様子をご紹介すると共に、そこから見えてくる電子申請の問題点について考えてみたいと思います。

当日の議事次第は、

1 会長あいさつ
2 関東管区行政評価局長あいさつ
3 電子政府の推進に係る取組状況等
4 各幹事からの報告について
5 分科会ごとの意見交換
6 分科会からの発表等

配布資料
・資料1 電子政府推進に係る取組状況(総務省)
・資料2 各幹事からの資料

参考資料
・関東電子政府推進員協議会会則
・出席者名簿
・座席図

会長には、早稲田大学(電子政府・自治体研究所)の小尾先生が就任されましたが、残念なことに急な所用のため欠席でした。

そのせいもあって、協議会の「士業色」がいっそう強くなってしまい、企業担当者や地域ITリーダーといった国民を代表する利用者の意見が、あまり聞けなかったのが残念なことでした。この点については、別途詳しく触れたいと思います。

各幹事には、各士業(司法書士、税理士、社会保険労務士、行政書士)から一名ずつ選ばれています。なお、推進員には土地家屋調査士も参加しています。

関連>>法律サービス(士業)の比較

「電子政府の推進に係る取組状況」については、電子政府評価委員会の配布資料と重なるものも多く、特に新しい情報は無かったと思います。

関連>>電子政府評価委員会

●オンライン申請の課題

政府が認識しているオンライン申請の課題は、次のような項目で整理できます。

1 添付書類:廃止・省略・簡素化、行政間のオンライン照会、電子化、別送、原物保管など
2 本人確認方法:本人電子署名の省略、ID・パスワードの統合、代表者以外(企業の部長、工場長等)の電子署名、委任状の取扱いなど
3 手数料:減額・軽減、合算納付、オンライン納付など
4 インセンティブ:税控除・手数料減額、利用時間の延長、処理期間の短縮、士業へのインセンティブ
5 システムの改善:仕様の公開、一括申請への対応など
6 広報普及活動:体験システム、窓口での利用推進、メリットの提示、
7 その他:設計段階からの利用者関与、書面(現物)交付、オンライン対応行政庁の拡大、オンライン申請システム間の連携、様式の統合・統一化、届出先・届出時期等の統一化など

早い話、「問題が山積み」という状態なわけで、利用が進まないのは当然かもしれませんね。とは言え、各項目における課題に対しては、いちおう解決策が提示されています。

後は、解決策を実行して、その効果を検証していくことになりますが、ピントのずれた解決策も多いので、非常に厳しい状況と思います。

●士業とオンライン申請の関係

各士業は、オンライン申請への対応が死活問題となる(可能性がある)ので、どれだけ使いづらくてメリットがなくても、「先行投資」と考えて使い続けているのが現状と言えましょう。

しかしながら、最近では、
・依頼者からの要望がある
・実際にメリットがある
・同業者からのオススメで
といった理由で、オンライン申請を活用する士業も増えてきています。

士業におけるオンライン申請への対応を分類すると、次のようになります。

1 戦略リーダータイプ(極少数)
・資格制度のことを考えて電子申請を推進
・組織のIT責任者、オピニオンリーダー、電子政府推進員など
・中には、電子申請にあまり詳しく無い人も・・・

2 実務重視タイプ(極少数)
・実務に使える(割に合う)電子申請を活用
・経験豊富で実力もある実務家、成長派の若手など
・インセンティブの提供で、増加が期待できる

3 好奇心タイプ(少数)
・好奇心が手伝って電子申請を利用
・新しいモノ好き、コンピュータ好きの人など
・難しくても、あまり苦にならない(むしろ難しい方が嬉しい?)

4 様子見タイプ(多数)
・まだ使う必要は無い(いずれは・・・)と考え、利用しない
・実務はこなすけどITが苦手な人、仕事が忙しい売れっ子など
・周りに使う人が増えれば、利用するようになるかも

5 無関心タイプ(中-少数)
・自分には電子申請なんて関係ないと考え、利用しない
・実務をしない人、引退の近い人、組織の幹部など
・反対派となり、利用を妨げることも・・・

さすがに、「無関心タイプ」は以前に比べると減ってきているかな。

各タイプの割合については、士業によって異なりますし、複数のタイプが混合するケースもあると思いますが、およそ次のようなことは言えるでしょう。

・電子申請の推進・利用者は、まだまだ少数派
・単に「士業」という分類だけでは、効果的な利用推進は難しい
・各タイプに合った利用推進策が必要

また、士業にオンライン申請の利用を促すプレッシャーとしては、
1 顧客からの要望
2 同業者からのオススメ
3 組織・行政からの要請

の順番で有効と思いますが、現在は「組織・行政からの要請」が主となっています。これでは、利用は増えないでしょう。

今後の利用推進策では、
「顧客からの要望」や「同業者からのオススメ」を増やすには?
という視点で、インセンティブ提供やサービス改善を考えることが有効でしょう。

次回は、各士業における取組状況や今後の展開を考えてみたいと思います。

“第3回関東電子政府推進員協議会(2):オンライン申請の課題と士業へのアプローチ” に2件のコメントがあります

  1. こんなタイプもいるから・・
    むたさんの、
    >1 戦略リーダータイプ(極少数)
    ・資格制度のことを考えて電子申請を推進
    ・組織のIT責任者、オピニオンリーダー、電子政府推進員など
    ・中には、電子申請にあまり詳しく無い人も・・・

     このタイプには、電子申請システムに不具合などがあると、ここぞとばかりに「追及」する者がいます。(笑)
     鬼の首を取ったように、攻撃です。
     また、本来は簡単なシステムで済むところを、複雑怪奇な方式を要求し、結果として使えもしないものを構築させたりです。声がでかいと、受け入れてしまうのでしょうね。

     今後は、2のタイプの方々をメインにしぼって運営なりをすると上手く行くように思いますね。

  2. 実務で使えるオンライン申請を
    イエモリさん
    こんばんは。コメントありがとうございます。

    「戦略リーダータイプ」の場合でも、様々な方がいらっしゃいますよね。

    声の大きい人もいますが(笑)、実務家の視点も兼ね備えている人、士業だけでなく国民の利便性を大切にしている人などなど。

    もっとも、組織上の立場もあり、公的な場所では発言が控えめという方もいらしゃいますが。

    ご指摘のように、「実務重視タイプ」が動くと、「様子見タイプ」の人も利用するようになるので、「実務重視タイプ」への働きかけは、利用拡大の鍵となりそうです。

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