社会保障カードへの提案(3):「ICカードありき」からの脱却、携帯電話の可能性を考える

社会保障カードへの提案(2):役所の怠慢を防ぎ、国民が政府や企業を監視する仕組みを』の続きです。今回は、社会保障サービスにおける携帯電話の可能性について考えてみたいと思います。

既に述べてきましたが、社会保障サービスにおけるICカードは、単なる「入れ物」に過ぎません。利用者の個人情報等を格納し、券面にも名前や写真等の情報が記載されます。

つまり、同じような機能を持った「入れ物」であれば、ICカードの代替物として、あるいは補完する形で、社会保障サービスで利用することができるのです。

多くの人が保有する携帯電話が、ICカードの代替物なる可能性は、十分にあると言えるでしょう。

●携帯のメリット:親和性、携帯性、視認性、経済性

ICカードにも多くの利点があるように、携帯にも携帯ならではのメリットがあります。

1)親和性

携帯電話の良いところは、既に多くの人が持っており、日常生活の中で使われていることです。

ですから、利用者は、新たな機器を購入したり、操作を覚える必要がありません。

最近の携帯であれば、パソコンとの接続コードが付属品として備わっていますので、パソコンとの相性も良いと言えるでしょう。

これがICカードになると、別途カードリーダを購入してパソコンに繋いでください。パソコンにICカードを登録してください。といった面倒な作業が発生します。

住基カードの例を見ればわかるように、一般の人がICカードを使って、自宅のパソコンでサービスを利用するという手法は、強制でもしない限り全て失敗に終わっています。

2)携帯性

携帯電話は、多くの人が常に持ち歩いています。作者も、携帯にその日の「すること」をメモしてあり、スケジュール管理にも使っているので、携帯を忘れると大変困ります。

携帯電話が健康保険証のように使えれば、「保険証を持ってくるのを忘れた」といったことが少なくなり、急な病気や怪我の時でも、病院の事務手続がスムーズに行われるでしょう。

また、家族への連絡先などもすぐにわかり、そのまま電話をかけることも可能です。

決済機能(電子マネー、クレジット)が付いている携帯なら、支払いもできますね。

3)視認性

以前、「住基カードが健康保険証として使えないか」といったことが検討されました。

関連>>住民基本台帳カード・国民健康保険証等連携検討会報告書(PDF)

「将来的には、住基カード一枚で何でもできるのが望ましい」とされたものの、結果としては、住基カードの普及も進まず、健康保険証としては使われていません。

その理由の一つとして、「スペースが限られたカードの券面に、保険証に必要な情報を記載するのは難しい」ということもあるでしょう。

携帯電話なら、ディスプレイがあるので、様々な情報を表示することができます。

文字だけでなく、画像や動画にも対応しており、インターネットに接続すればリアルタイムで最新の情報を表示させることも可能です。

4)経済性

携帯電話は、多くの国民が持っているので、税金を投入する必要がありません。

これがICカードになると、数百億から数千億円の投資が必要となります。

関連ブログ>>電子政府におけるICカードとPKIの市場(6):まだまだ高価なICカード、導入は慎重に

また、本人確認作業を民間企業(携帯電話会社)が行ってくれるので、行政側の事務負担も少なくなるでしょう。

このように、携帯電話には「ICカードの代替手段」として検討に値するメリットが十分にあります。

もちろん、携帯電話を利用しない人もいますので、国民が「ICカードか携帯電話か(または、その他の手段)を選択できる」ようにするのが良いでしょう。

●政府が下手にいじると、せっかくのメリットも台無しに

携帯電話が、ICカードに代わる(または補完する)「入れ物」として採用されると、

・携帯電話の中に「公的個人認証サービスの電子証明書」を格納して使ってもらおう

といった話しが出てきます。

「公的個人認証サービスの電子証明書」のような、携帯電話と相性が悪くて、使い勝手の悪いものを、携帯電話と無理にくっつけたりしたら、せっかくの携帯電話のメリットが消されてしまいます。

認証(アクセス、ログイン管理)手段として携帯電話を使う場合は、ID・パスワードや、それ以外の手法を使えば良いわけで、無理に政府系の電子証明書を使う必要はありません。

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既に携帯電話で利用されている認証方法を使って、社会保障サービスも受けられるようにしましょうね。