青森県電子申請・届出システムが開始、そろそろ電子申請にも目標設定を
青森県の電子申請・届出システムが運用開始しました。北海道の電子申請システムを「LGWAN-ASP方式」で導入することで、コストを抑えたことが話題となっているようです。
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●ASPの導入で、年間コストは10分の一以下に
地方自治体の電子申請システム導入では、
1 当初:自前システムの構築・運用
2 現在:都道府県と市町村による共同運営
3 これから:ASP方式の採用
といった流れがあり、今後はASPやSaaSといった形が主流となることでしょう。
青森県の場合は、年間の利用料が約1600万円となっており、年に数億円も払っている都道府県と比べると、コストは何十分の一以下となります。
青森県の人口は約140万人ですから、県民一人あたり年に11.5円となります。
今後は、「人口一人あたり年間10円~3円」ぐらいを「導入を検討する際の目安」とするのが良いでしょう。
●電子申請にも目標設定を
コストを抑えるのは良いことですが、同時に費用対効果を考えることが大切です。
ですから、電子申請を導入またはリニューアルする際は、必ず明確な目標を設定しましょう。
記事によると、青森県では具体的な申請件数等の目標設定をしていないとのことで、未だにこうした考えが当たり前になっていることが、電子政府に関わる者の一人として、大変情けなく思います。
キム兄さん風に言えば、「考えられへん!!」と。
企業であれば、新製品やサービスを発表する際は、必ず販売数や売上額の目標を掲げます。
それも、事前にマーケティング調査を行った上での数字です。
ところが、電子申請の場合は、「どんな手続で、どんな方法なら、どれぐらいの利用がありそうなのか」といった調査も不十分なまま導入され、申請件数等の目標さえも設定しないという、まさに「考えられへん!!」なわけです。
●目標設定は説明責任の視点で
目標設定をどのように定めるかは、企業とは少し異なります。
企業であれば、「損益分岐点」があるので、戦略にもよりますが「製品・サービスがこれだけ売れれば黒字になる」という辺りで目標を定めることができます。
つまり、赤字からスタートして、黒字化を目指すわけです。
ところが、行政サービスとして提供される電子申請の場合は、「損益分岐点」が無いので、「どれだけ利用されれば黒字になる」という考えが通用しません。
そこで有効になるのが、「説明責任の視点」です。
「どれだけ利用されれば黒字になる」の代わりに、「どれだけ利用されれば住民に納得してもらえるか」と考えるのです。
青森県の場合で言えば、例えばこんな感じです。
新しく導入された電子申請システムは、
・年間の利用料が約1600万円で
・県民一人あたり年に約11.5円の負担
となっています。
今年度の目標は、
・利用者数:3000人
・利用件数:5000件
を目指します。
これで「青森県民が納得してくれるか」をアンケート調査でもすれば良いのです。
キム兄さん風に言えば、「まあ、それぐらいならエエやろ」と。
さらに、既存のオンラインサービス(施設利用や図書の予約システムなど)を比較対照として挙げれば、「説明責任の視点」が強化されます。
関連ブログ>>なぜ、電子政府で「一件当たりいくらか」を評価するべきなのか
●結果次第では、サービスの停止も
目標は掲げるだけでなく、その結果を公表し、次の行動に繋げる必要があります。
いわゆる「PDCAサイクル」ですね。
例えば、
・利用者数:3000人
・利用件数:5000件
という目標に対して、
・利用者数:100人
・利用件数:200件
という結果だったら、果たして「県民は納得してくれる」でしょうか。
作者であれば、
1 即時のサービス停止
2 失敗理由の調査・分析
3 失敗理由が解決できる見込みがあれば、再検討しても良い
とするでしょう。導入までの経緯によっては、「1年間の猶予・延長」もありでしょうか。
自治体においては、低いレベルで競争せずに、自らのポリシーを持って、優秀な自治体や民間企業にも負けないぐらいのサービス実現を目指しましょう
「考えられへん!!」ではなくて、「まあ、ようやってるやないんか」と。