地方公共団体電子申告等普及促進協会の設立(5):エルタックスは公共性・社会性を保てるか
『地方公共団体電子申告等普及促進協会の設立(4):エルタックスを自治体や企業の「電子私書箱」として使う』の続きです。本シリーズの最終回として、「エルタックスの公共性・社会性」を考えてみましょう。
作者が提唱しているものの一つに、「電子申請の8原則」があります。
電子申請システムを構築する際の設計思想となり、すでに運用されている電子申請を評価・改善する際の参考としてもらえればと考えて提唱しています。
関連>>電子申請の8原則
その中で、「社会性・公共性」については、次のようにしています。
電子申請は社会性と公共性を持たなければいけない。利用されない電子申請は、社会性・公共性を持ち得ない。
電子申請は、インターネットがそうであるように、利用されることによって、社会・経済活動の発展に大きく貢献することができる。こうした電子申請の社会に対する貢献が実績となることで、社会的に広く認知・評価されるのである。
社会性と公共性を備えた電子申請の恩恵は、実際に電子申請を利用する人だけでなく、間接的に全ての市民が受けられるものである。
デジタルデバイドを理由に、電子申請がもたらす社会・経済的なメリットが受けられないとすれば、その電子申請は、社会性と公共性を備えていないと言える。
つまり、いくら立派な理念や目的を掲げても、利用されない電子申請は「社会性・公共性」に欠ける、ということです。
そして、「社会性・公共性」を保てない電子申請は、廃止・縮小・統合といった措置が取られるべきなのです。
●今が正念場のエルタックス
エルタックスが、「社会性・公共性」を保てるかどうかは、今後の展開次第と思います。
本シリーズで提案してきた
1 エルタックス自身が、財務体質を強化すること
2 自治体の業務分析と財務分析を行うこと
3 業務改善の提案を付加したSaaS型サービスを提供すること
4 「電子私書箱」の機能を活用・推進すること
などを通じて、税金で構築・維持してきたエルタックスのシステムを、住民・企業・自治体に広く還元していくことができるか。
利便性を高め、利用を増やして、「社会性・公共性」を保つことができなければ、淘汰されることも覚悟しなければいけません。
●イータックスとの連携・統合について
最後に、エルタックス(地方税)とイータックス(国税)との連携・統合について、触れておきましょう。
利用者の利便性を高めるためには、イータックスとエルタックスで、利用者ID(アカウント、登録番号)の統合をすると良いでしょう。
利用者IDが統合されれば、国民や企業の総合税務アカウントとして活用できるので、各種サービスの利用や問い合わせ(履歴確認)なども容易となります。
もちろん、行政内部の事務処理の効率化や、国と地方の連携にも寄与するでしょう。
強制的な納税者番号の付与は、反対もあって実現が難しいですが、希望者にだけ交付するIDであれば、そうした心配もありません。
さて、国民や企業の総合税務アカウントができると、国民の納税者意識も高まり、自分の税金の使い道を確認して、指示することも可能になります。
納税者に対して、
・最近話題のふるさと納税
・千葉県市川市に見られるような市民活動団体支援制度(1%支援制度)
・公益団体への寄付
といった選択肢を提供するのです。
社会意識の高い納税者であれば、自分の税金の使い道をパソコン上でシミュレーションして、納得できる振り分けを考えることでしょう。
さらに、自分が納めた税金が、実際にどのように使われたかを追跡できる仕組みがあれば、市民の行政参加や政治への関心を高めてくれるかもしれません。
エルタックス(地方税)とイータックス(国税)との連携・統合は、エルタックスを維持することが困難になった場合の措置としても有効です。
しかし、そうなる前に、「攻め」の意識で連携・統合した方が、エルタックスにとっても、国民や行政にとっても得策であると言えるでしょう。