社会保険・労働保険関係手続のオンライン利用率が低い理由と改善策を考える(2)

社会保険・労働保険関係手続のオンライン利用率が低い理由と改善策を考える(1)の続きです。

(4)わかりやすいインセンティブが提供されていない

わかりやすいインセンティブの代表例が、手数料の割引や税控除といった金銭的なインセンティブです。

電子申告:最高で5000円の税控除
オンライン登記:最高で5000円の税控除
自動車ワンストップ:平均で約7000円のディーラー手数料減額

といった金銭的なインセンティブが実施される中で、社会保険・労働保険関係手続では金銭的なインセンティブが提供されていません。

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また、「添付書類が不要となる」も、非常に効果的なインセンティブとなります。

注意したいのが、「添付書類の一部省略・代替」という形では、「申請者の負担」はあまり変わらないので、効果は見込めないということです。

また、社会保険・労働保険関係手続に多い「一括申請(セット申請)」への対応も必須となります。これは、同時期に発生する複数の手続を、一度に処理するものです。

例えば、「転職」の時に、A、B、Cという3種類の手続が必要になったとしましょう。

A:添付書類の省略でオンライン申請で完結
B:オンライン申請できるけど、一部の添付書類は紙による別送が必要
C:オンライン申請で完結するけど、紙申請だと窓口で即日処理され、証明書等が交付される

といった状況であれば、オンライン申請が使われる可能性は低くなります。

BとCのオンライン手続が不十分なため、「Aがオンラインで完結できる」というメリットが帳消しにされてしまい、「窓口に行った方が早いじゃん」となるからです。

とりわけ、毎日のように窓口へ行く社労士さんにとっては、「窓口さいこー!」となってしまうでしょう。

このように、役所にとっては、A,B,Cという三つの手続であっても、申請者にとってはABCで一つの手続となっているケースがあります。

上記のような状況は、カップラーメンだけ渡されて、お湯と箸が無いようなものです。

カップラーメンだけ渡すのが「お役所仕事=現在のオンライン申請」であり、お湯と箸も提供してくれるのが「コンビニのサービス=民間サービス」というわけです。

このようなわけで、最近では、手続ごとではなくて、いわゆる「イベント」ごとにサービス提供するべきだ、と言われるています。

★作者が提案する改善策は

・保険料の減額といった金銭的なインセンティブを提供する
・「添付書類を全て不要」として、「申請者の負担がなくなり」「オンラインで完結する」手続を増やす
・「一括申請(セット申請)」によるオンライン完結サービスを提供する

次回は、「オンラインに馴染まない手続」を考えることで、オンライン申請が抱える本質的な問題に踏み込んでいきたいと思います。