電子政府プロジェクトの責任は誰に? 行政の責任を期待しない仕組みを
何十億円、何百億円もの税金を使った電子政府サービスがほとんど利用されなかったり、オンライン申請システムが何度も止まったりする中で、行政の責任を問う声があります。しかしながら、現行の制度においては、電子政府のプロジェクトに対して行政の責任を追求したり期待したりするのは現実的ではありません。なぜなら、責任なんてものは最初から存在しないからです。
例えば、「2010年度までにオンライン利用率を50%にする。」といった目標があります。この目標を達成できなかったら、誰が責任を取るでしょうか。
IT担当大臣? 内閣官房IT担当室? 各省庁のオンライン申請担当者?
この人たちが、職を追われたり、減給されたり、左遷されたりするでしょうか?
そう、「誰も(どの組織も)責任は取らない」のです。
では、どうして誰も責任を取らないのでしょうか。
それは、「責任の所在が明確になっていない」からです。
例えば、企業の社長さんが「2010年度までに売上を10億円に、利益率を7%にする」といった目標を掲げ、「達成できなかったときは辞職する」と公言しました。これなら、責任の所在は明確です。行政では、こうした責任の取り方はありません。
それでは、どうして「責任の所在が明確になっていない」のでしょうか。
答えは簡単。「行政(公務員)は責任を取りたくない」からです。
しかしながら、無責任な電子政府プロジェクトが乱立すると、税金が無駄遣いされるだけでなく、行政事務の非効率化を招き、国としての競争力も低下していきます。
「それなら、行政の責任の所在を明確にすれば良いのでは」と考える人もいるでしょう。
けれども、それも現実的ではありません。
なぜなら、電子政府プロジェクトは行政が策定・実施するからです。
自分たちが好きなようにできるプロジェクトで、わざわざ自分達の責任を重くしたりするようなバカなことはしないのです。
うーん、困った。それでは、日本の電子政府は悪くなる一方じゃないか。何とかならないのか。
そこで作者が提案するのは、「行政の責任を期待しない仕組みを作る」ことです。
そのためには、電子政府プロジェクトの策定・実施を民間(企業、NGO、市民団体等)に任せる必要があります。
民間に任せるのであれば、契約等で責任の所在を明確にすることができます。
電子政府で国や自治体がするべきなのは、インフラの整備(ほとんど終わっているだけでなく、必要性が疑問なものもある)や民間が参加しやすい環境を作ることです。それ以外の余計なことは、できる限りしない方が良いのです。
じゃあ、行政は、民間が実施する個々のプロジェクトの進捗状況を管理したり、評価したりしなくて良いの?
はい、その通りです。行政に、そうした能力はありませんので、それも別の民間(プロジェクト実施者から完全に独立したもの)が行います。
行政が実施しなければならない電子政府プロジェクトは、
・民間が参加しやすい環境を作り
・それでも民間の参加が期待できず
・かつ実施することが必要・急務なもの
だけです。そうしたプロジェクトは、ほとんど無いでしょう。
さて、このような視点で「次世代電子行政サービス基盤等検討プロジェクトチーム」を見るだけでも、「あー、これでは成功しないだろうなあ」となるわけです。
関連ブログ>>次世代電子行政サービス、失敗を見ているべきか止めるべきか
日本の電子政府は、かなりヤバイ状況にあります。
一部のランキングでは、日本の電子政府が上位にあるようですが、あんなものを(カラクリを知らないまま)信じてはいけません。実際に上位と言えるのは、一部の自治体だけであり、国やその他多くの自治体は、非常に深刻な状況にあるのです。
小手先のテクニックにばかり気を取られ、オンライン利用件数が増えた減ったと一喜一憂している間にも、他国との差は開いていくばかりです。
そろそろ根本的なところから考えかたを改めないと、もっと悲惨なことになるでしょう。