電子政府評価委員会報告書2007が公表、電子政府評価の今後は?
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)のサイトで、「電子政府評価委員会 平成19年度報告書」が公開されています。親会である「IT新改革戦略評価専門調査会 2007年度 報告書」の付属資料という位置づけです。
今回は、委員の一人としてというよりは、電子政府コンサルタントの立場から、電子政府評価の今後を考えてみます。
電子政府コンサルタントとして見た場合、報告書の本文よりも、付属している参考資料がより重要です。
参考資料3:オンライン申請システムの利用に関するアンケート調査結果
参考資料4:行政機関に係るオンライン申請等手続システムの利用状況等調査結果(内閣官房・総務省)
参考資料5:平成18年度における行政手続オンライン化等の状況(総務省)
電子政府評価委員会も2年目となり、報告書の内容も少しずつ良くなってきています。個人的にも、まずはPDCAを回していくことが大切なので、悪くない(予想していた通り)と思っています。
良い点は、次の三つ。
1 定期的に利用者のアンケート調査を実施していること
2 現場(企業、自治体)のヒアリングを実施できたこと
>>年末調整処理業務の効率化の検討(最終報告資料)
(本来は政府の予算で実施するべきなのですが、政府が動かないので民間で実施しています。)
3 オンラインシステムの費用や利用状況が明らかになってきたこと
なお、評価委員会で実施される各省庁へのヒアリングは、儀式みたいなものなので、それほど期待していません。実際、その通りでした。ただし、来年度からは、各省庁のヒアリングにおいても、もう少し問題の核心に触れていく必要があるでしょう。
他方、悪い点は次の三つ。
1 行政が電子政府で何をしたいのか、さっぱりわからない
2 報告書に書かれている「解決の方向性」では、電子政府は良くならない
3 政府による調査・分析が、まだまだ不十分である
良い点と比較すると、悪い点はより深刻です。
つまり、
・「評価」という視点では、それなりに進んでいるけれど
・「問題の解決」という視点では、何も進んでいないに等しい
ということです。
例えば、「オンライン利用率50%を達成したい」と相談されれば、やり方次第では実現可能なので、電子政府コンサルタントとして具体的な作業の指示も含めてアドバイスできます。「オンライン利用率」のうち、特に「オンライン申請」の利用率を上げたいと言われれば、かなり難しいですが、これも可能でしょう。
けれども、何をしたいのかがわからないと、アドバイスのしようがありませんので、その先には進めません。
また、報告書に書かれている指摘や改善策は、一部を除けばほとんど「思いつき」みたいなものですから、実現の可能性や期待できる効果は、全く未知数です。そもそも「何をしたいのか」が自分たちも周囲もわかっていないのですから、それも当然のことです。
政府による調査・分析が不十分なのは、「内閣官房の予算・人材・やる気が足りないから」と言うよりは、やはり基本的なことが何も決まっていないからでしょう。「何をしたいのか」わからないままでは、問題を発見する手段である調査・分析も進むわけがありません。
電子政府に関して国や自治体が実施する施策は、国民の税金を使うものであり、「思いつき」でするべきではありません。
本ブログで作者が提案する改善策等も、全くの「思いつき」ではありませんが、単なる「提案」であり「仮説」に過ぎません。
政府が税金を使って実施する場合は、事前に精査した上で、「思いつき」ではなく「具体的な効果が見込め、必要性のあるもの」としなければいけません。
さて、最後は電子政府コンサルタントとしてではなく、評価委員の一人として、「電子政府評価の今後はどうするべきか?」に触れておきましょう。
委員に就任するにあたって、「電子政府を評価することの意味」で、評価委員会において作者がするべきことを次の二つとしました。
1 情報公開を促進して、国民自身が評価に参加できるようにすること
2 利用者(個人、企業、行政職員)参加の機会を提供すること
とりあえず「情報公開」については、まだまだ不十分ですが、ある程度は実現できたと思います。
「利用者の参加」については、今後の課題であり、「特に重視して行うべきこと」と考えています。
利用者アンケートや現場からのヒアリングなどをより充実させると共に、企画、設計、テスト、運用、事後評価など、あらゆる場面に実際の利用者が参加できるようにしたいと思います。
また、各省庁へのヒアリングは、かなり遠慮している部分もあったので、今後はより積極的に問題の本質に迫って行きたいと考えています。
ということで、今後とも皆さまのご支援・ご協力をお願い致します