地方自治体における電子申告、「安くなったから」導入はやめよう
地方自治体の電子申告(エルタックス)でもLGWAN(地方自治体間を結ぶ専用ネットワーク)を経由したASPサービスが始まり、以前と比べてかなり安い価格で導入できるようになりました。
しかし、「安くなったから導入しよう」と考える自治体は、次の2点を問い直してから検討するべきです。
1 本当に安いのか?
2 自分達の顧客は誰なのか?
●本当に安いのか?
支払うお金に見合ったリターンが得られるか、ということです。
エルタックス導入・維持について自治体が負担するのは利用料だけではありません。職員の教育費や既存税会計システムとのデータ連携などに必要な費用も含みます。
リターンは、大きく分けて二つあります。
1)エルタックスで得られる行政側のコスト削減
2)市民が実感できる利便性
この二つは簡単に計算することができます。
まず、エルタックスの実績に応じた利用件数・利用率を、自分達の自治体における税申告に当てはめてみます。人口比率や規模が似ている自治体があれば、そちらを参考にしても良いでしょう。
すると、自分達がエルタックスを導入した場合、どの程度の利用件数・利用率があるか予測することができます。
そこから、エルタックス導入により削減できる入力作業費、印刷費などが算出できます。
この時点で、すでに導入コストを上回っていれば、エルタックスを導入しても良いでしょう。あるいは、1、2年で投資金額を回収できる見込みがある場合も、導入して良いかもしれません。
削減できるコストより導入コストの方が高ければ、別のリターンである「市民が実感できる利便性」について検討していきます。
●顧客は誰なのか?
エルタックスの利用者は、三つに分類されます。
1)企業(法人)
2)個人
3)税理士
まずは、エルタックスの実績に応じた利用件数・利用率を参考にして、自分達の自治体における利用者別の利用件数・利用率を算出します。
企業や個人の利用率が高く、かつ満足度が高ければ、導入しても良いでしょう。
もし税理士の利用が大半を占めるようであれば、エルタックスを導入しても、「市民が実感できる利便性」の向上は期待できないので、導入する必要は無いでしょう。
なぜなら、税理士に依頼する企業や個人は、電子申告であろうと紙申告であろうと関係ないからです。
ここで重要になるのが、自治体がエルタックスを通じて、誰に価値を提供したいのか、つまり「重要視する顧客は誰なのか」ということです。
企業の負担を減らしたい、市民の利便性を向上したいと考えるのであれば、企業や市民による一定数の利用が見込めるようになるまでは、エルタックスを導入する必要は無い。
というのが電子政府コンサルタントとしての作者の結論です。
もちろん、もし自治体が、企業や個人よりも税理士を重視するのであれば、導入しても良いのです。