日本の電子政府が良くならない本当の理由(1):連載を始めるにあたって
作者が電子政府や電子申請をテーマに調査研究を続けて、10年以上が経過した。
関連>>作者自己紹介
その間に、ブロードバンドのインターネットが普及し、電子政府に関する法制度やインフラが整備され、多くの電子政府サービス(オンライン行政サービス)が提供されるようになった。
しかし、電子政府によって実現できるとされた「行政サービスの向上」、「行政事務の効率化」、「住民の行政参加」といったことが、いったいどれだけ実現されたのだろうか。
どれだけの国民が電子政府の効果を実感し、「役所のサービスが良くなった」「役所の仕事が効率化した」と思っているのだろうか。
ランキングで見ると、日本の電子政府は、それほど悪いものではない。最近の国連のランキング(2008)では11位まで上がり、早稲田大学のランキング(2007)では4位になっている。アクセンチュアのレポート(2007)でも10位である。
しかし、そんなランキングとは裏腹に、実際に提供される電子政府サービスの利用率は、相変わらず低迷を続けている。
まるで、日本の景気は良くなりますよと政府が言っている一方で、国民の生活はますます苦しくなるばかりという状況を見ているようである。
国民は、そろそろ気がつき始めている。
日本の電子政府が、立派なお題目や美辞麗句を並べるばかりで、実際にはほとんど役に立たない壮大な無駄遣いだということを。
電子政府サービスの中でも、とりわけ「電子申請(オンライン申請)」と言われるサービスは、利用率が0%に近いものも多い。
関連>>箱物行政よりヒドイ、使われない電子申請は今すぐ止めるべき
http://blog.goo.ne.jp/egovblog/e/b00ce5169a74d4f8ea0f39456741636c
電子政府サービスのキラーコンテンツと言われる電子申告でさえ、最近になって利用が増えたものの、10%にも満たないのである。
海外の電子申告では、利用率が50%から80%ぐらいであることを考えると、これは異常に低い数字である。その反面、システム構築・維持の費用は世界一と言って良いほど高い。
つまり、日本の電子政府サービスは、費用対効果で見ると、世界ランキングで最下位に限りなく近いのである。
「日本の電子政府サービスは、なぜ利用されないのだろうか」
本連載で、この疑問を明らかにしていきたい。
そして、電子政府コンサルタントである作者が最善と考える解決法を提案する。
表面の事象だけを捉えて、お手軽な改善策を提案するつもりはない。
そんなもので、日本の電子政府が良くなることはあり得ないからだ。
本連載は、作者自身の心を鬼にして、不退転の決意と覚悟を持ってのぞむものである。
日本の電子政府が抱える問題の本質と闇の部分に迫り、電子政府が行政改革そのものであることを多くの関係者に再認識させ、国や地方自治体のトップに最終的な判断と決断を迫るものである。
今から3年後に、日本の電子政府がどうなっているか。小手先の改善策ではなく、本質的な問題にどれだけ取組んでいるか。その未来を見据え思い描きながら、本連載を完成させるつもりである。
側面から支援、支持したい
むたさんの、
>本連載は、作者自身の心を鬼にして、不退転の決意と覚悟を持ってのぞむものである。
日本の電子政府が抱える問題の本質と闇の部分に迫り、電子政府が行政改革そのものであることを多くの関係者に再認識させ、国や地方自治体のトップに最終的な判断と決断を迫るものである。
はい、大いに期待しています。
電子政府推奨のお抱え御用コンサルタントではない、とする軸足がぶれないことを祈る。
大きな期待をこめて
記事を拝見しました。
参考までに.
松本正雄 「e-Japan の最大の欠陥は,計画および実行の中枢執行部が,技術(IT)駆動の 考え方をとり,ビジネス改革駆動の考え方を退けている点である.これではIT自己目的に陥り,さしたる業務改革は断行されない. このようなe-Japan計画を国民は支持するはずはないし,血税が浪費されていることを黙認するはずがない」
http://ci.nii.ac.jp/cinii/servlet/DirNavi?tourl=%2Fvol_issue%2Fnels%2FAA11546839%2FISS0000169681_jp.html
この論説では「リーダーシップの欠如」が問題にされているけど、本当は専門知を生かす「コンサルティングの欠如」が問題ではないかと思っていました.それだけに期待しています.
がんばります
イエモリさん、山根さん
こんにちは。コメントありがとうございます。
今回の連載は、「今始めないと日本の電子政府は本当にダメになる」という危機感からきています。
週1回ぐらいのペースになると思いますが、ご助言・ご支援をよろしくお願い致します。