日本の電子政府が良くならない本当の理由(8):鍵となるのは「良質なサービスが育つ環境作り」
今回は、「電子政府の鍵となる活動」は何かを考える。
日本が「電子政府先進国」になるために、
1 顧客は「国民」である。
2 国民は「より良いサービス」を望んでいる。
3 電子政府の最大の成果は、「国民の満足」である。
を徹底し、そこに資源を集中すると決めた場合、次にするのは「鍵となる活動」を考えることだ。
電子政府に足りないものは、たくさんある。しかし、その全部を実行するのは無理な話である。そこで、「鍵となる活動」は何かを考える必要が出てくる。
「鍵となる活動」は、期待する成果(国民の満足)を生み出すために、最も優先して実行されるべきことを意味する。。
日本の電子政府の現状を考えた場合、「鍵となる活動」は環境作りである。
「低コストで良質なサービスが育ち、日々改善されていく、持続可能な環境を作り上げること」
これが、今の日本の電子政府において、最優先で実行されるべき「鍵となる活動」となる。
良質なサービスが育つ環境が無いまま、サービス改善や利用推進を試みても、そのほとんどが無駄になる。小手先のテクニックでは、どうにもならないということだ。
逆に言えば、良質なサービスが育つ環境さえあれば、行政や士業が邪魔をしない限り、一定レベル以上のサービスが期待できる。
また、良質なサービスの周りでは、人も育つ。環境は人を変えるのだ。
その逆に、顧客を重視しない、サービスを改善しようとしない環境や組織にいれば、初めは立派な志を持った人でも、次第にやる気をなくしてくる。
最近の脳科学では、「意欲」の重要性が説かれている。「意欲」が脳を刺激し、行動を促すということらしい。
その意味では、いかにして「サービスを良くしよう」という意欲を引き出し高めていくかが、「人間」が中心となるサービス業においては、とりわけ重要になってくる。
それでは、「低コストで良質なサービスが育ち、日々改善されていく、持続可能な環境」とは、どのような環境なのだろうか。
良質なサービスが育つ環境については、サービス産業において研究されているが、特に重要な要素が二つある。
ひとつは、外部要因としての「規制・制度改革」であり、もう一つは、内部(業界)要因としての「健全な競争ルールの整備(新規参入の促進)」である。
行政サービスの場合、法制度として行政・外郭団体・士業による独占が認められている(認められていた)。そうした閉ざされた業界で展開されるサービスを良くするためには、「規制・制度改革」を行い、「健全な競争ルール」を持ち込む必要がある。
その上で、サービスを良くするための方策(マーケティング、サービスサイエンス、ITの利活用、ビジネスプロセスの標準化・モジュール化など)を実施し、「効率性」と「付加価値」を向上していくことになる。
上記に挙げたサービスを良くするための方策は、どれもコストがかかる。コストをかけるからには、最大の効果を生み出すべく、事前の環境作りが欠かせない。
今の日本の電子政府には、「健全な競争ルール」が無い。
調達方法の見直し等により、ベンダー間の競争ルールは改善されつつあるのだが、肝心要(かなめ)の「行政・外郭団体・士業による独占」に手をつけていないのだ。
これでは、いくらお金をかけたところで、電子政府サービスが良くなるわけも無い。
「健全な競争ルール」が無い電子政府は、穴の開いた貯金箱みたいなものである。
「サービス改善」「利用率向上」の名の下、システム改修、広報・宣伝、インセンティブ付与などに莫大なコストがかけられていく。穴の開いた貯金箱に、国民の税金が気前良く投げ入れられている。
そんな無駄なことは、そろそろ誰かが止めないといけない。
そんな不条理で不毛な行為を許していれば、日本の電子政府はダメになる。
以上で、本連載の前段を終わりとする。今後は、中段として作者が提言した内容を一つ一つ解説していくことになる。
次回は、今後の電子政府に大きな影響を与える、もう一つの大切なキーワードを紹介しよう。
ん? 旅費などの各府省共通システム
日経新聞から、
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20080603AT3S0200S02062008.html
政府、府省共通システム2010年度構築目指す
政府は2日、IT(情報技術)を活用した内部管理業務の効率化に向けた行動計画をまとめた。2010年度をめどに各府省共通のシステムを構築し、旅費や物品調達、謝金諸手当支払いといった管理業務を原則として電子化する。福田康夫首相が指示した電子政府構想具体化の第1弾となる。
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第1弾らしい。この旅費に関しての共通システムは3年前にとあるセミナーで一部のベンダーあたりが解説していました。
まぁ、アイデア止まりだと思ったが、3年目に実現するんでしょうか。?
道険しくとも・・・。