日本の電子政府が良くならない本当の理由(10):なぜ電子政府に国民との約束が必要なのか
今回から、作者の提案について詳しく解説していく。
作者の提案は、次の通りである。
まず、政府が国民に対して、次の三つを宣言し、約束する。
- 政府は、今よりも少ないコストで、行政サービスを良くする
- 国民は、今よりも少ないコストで、行政サービスを利用できるようになる
- その手段として、電子政府を最大限に活用する
その上で、次の三つを実施する。
- 原則として、全ての電子政府サービス事業を民間に委託する
- 電子政府に関する事業やインフラについて、外郭団体の関与を禁止する
- 士業の業務独占を廃止し、行政手続の仲介・代行サービスを自由競争とする
今回は、「政府が国民に対して、次の三つを宣言し、約束する」について解説する。
電子政府について「政府が国民に対して宣言し約束する」ことの意味は、
1 説明:電子政府とは何かをわかりやすく説明する
2 決意:政府の強い意志を示す
3 指針:判断し行動する際の指針を示す
である。
表面的には「国民に対して」行うが、本質的には行政職員・外郭団体・ベンダー・士業といった「全ての電子政府関係者に対して」行うものである。
(1)説明:電子政府とは何かをわかりやすく説明する
「電子政府」は新しい言葉で、国民にとって馴染みのないものである。字面を見れば何となく想像はできるが、何をするのかよくわからない。
そこで、国民にとって馴染み深い「行政・公共・公益サービス」を前面に出して、わかりやすく説明する必要がある。
多くの国民は、「行政・公共・公益サービス」に対して、何らかの不満や不安を持っている。「無駄遣いを減らして、サービスを良くする」ことを約束すれば、電子政府の必要性を理解しやすくなる。
「ホンモノの電子政府」を実現したければ、「電子政府」を前面に押し出してはいけない。
(2)決意:政府の強い意志を示す
英語にコミットメント(commitment)という言葉がある。日本語訳が難しい英単語の一つだが、誓約・公約といった意味がある。企業のトップが今後の戦略を語るときに使われたりするが、ただ言うだけでなく、強い意志を持って自らが率先して取り組むことを約束するものだ。
電子政府に必要なのは、単なる約束ではなく、強い意志の伴った「決意表明」である。そこにあるのは「危機感」であり「覚悟」である。
「ホンモノの電子政府」を実現したければ、甘っちょろいことは言っていられない。行政職員・外郭団体・士業から、時代錯誤の理不尽な要求があれば、断固として拒否しなければいけない。
「時代錯誤の理不尽な要求」とは、「政府は、今よりも少ないコストで、行政サービスを良くする」「国民は、今よりも少ないコストで、行政サービスを利用できるようになる」という宣言に反する全ての要求・行為・慣習・制度・既得権益である。
(3)指針:判断する際の指針を示す
「ホンモノの電子政府」に必要なのは、行動である。
電子政府関係者は、「人に言われたから」ではなく、自らの判断で行動することが要求される。
その判断・行動の指針となるのが、「政府は、今よりも少ないコストで、行政サービスを良くする」「国民は、今よりも少ないコストで、行政サービスを利用できるようになる」という約束である。
指針は、国民が電子政府の成果について評価する際にも有効となる。
10億円もかけて作った電子申請システムがある。
国民は、この電子申請システムができて「今よりも少ないコストで、行政サービスが良くなったの?」「今よりも少ないコストで、行政サービスを利用できるようになったの?」と、議会や行政に問いかけ、合理的で説得力のある根拠の提示を求めれば良いのである。
次回は、「政府が国民に対して宣言し約束する」の具体事例を紹介しよう。
パブリックコメントやらNPOやら
参考までに、
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=060080611&OBJCD=&GROUP=
「重点計画-2008(案)」に関するパブリック・コメントの募集について
これらの計画に、むたさんの提案趣旨も組み込まれているとよろしいのですが。
余談ながら、昨日内閣府に出向いたおり、掲示版に目が行った。NPOに関する掲示に、気になるNPOが起ち上がりそうだ。電子政府、電子自治体にがらみのNPOであって、代表者が・・・。
ロードマップが公表されない
行動計画2008のパブコメは出ましたが、11日に決定したロードマップや、「国の行政手続のオンライン利用促進に関する取組方針」が出てきませんね。
IT戦略本部にしてはやることが遅い。
次のは某団体が内部向けに発した文書の一部ですが
「政府は、国・地方公共団体に対する申請・届出等手続におけるオンライン利用率を「2010年度までに50%以上とする」ことを定めており、その実現に向けた方策として「オンライン利用促進のための行動計画」が公表されておりますが、このたびオンライン利用率を2010年度までに100%を目標とするとの方針へ転換し、行動計画についても100%目標に向けての再改定が予定されております。」
ほんとに2010年度100パーセントに方針転換したなら、この行動計画2008に謳われてもいいはずですが、出ない。
なんか嘘っぽいのですが、なんのためにそんなウソをつく必要があるのか、どうもわかりません。無理やりこじつけて使った予算があったとか?
ウソも100回つけばなんとやら
その団体ここのコメントにあるように、他の団体と合意が成立していないにも関わらず「合意した」と。
http://salon-utamaro.blogspot.com/2008/06/blog-post_07.html
年間2億もランニングコストのかかるシステムに絡んだ情報のようで、自ら勇み足で100%を持ち出さないとならなかった事情があったのか。
決意は立派なのですが、どこからそのお金が出るのでしょう。
法務省の方は、添付書類30年保存を決めてくれたというのに、そんなに何カ所にも同じデータをストックしなくてもいいでしょうに。
やっと出ました。
取組方針は終わりの方にあります。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai46/46siryou2_2.pdf
100%なんて出てこないけど、某団体が喜びそうなことは確かに書いてますな。
勇み足したくなるのも無理はないけど、期待しすぎでしょう。
骨太
骨太2008の素案にも出てはおりますが、数値目標はなし。
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0617/item3.pdf