電子証明書が使われない理由、電子政府では「簡単に使える」が必須条件
認証問題を考えるには、まず初めに、ネットユーザーや役所の手続をする国民や企業の気持ちや行動パターンを考える必要があります。
●紙より面倒な電子政府
役所の手続を喜んでやる人はいない。楽しいなあ、面白いなあと思ってやる人はいません。面倒だけど、別の目的のために仕方なくやるのです。
ですから、オンライン行政サービスにおいて最も基本となり、欠くことのできないコンセプトが「簡単に使える」ということなのです。
オンライン行政サービスなのに、紙申請や窓口より面倒が増えては、使われるわけがありません。
●簡単にあきらめるネットユーザー
また、インターネット上のサービスを使う人の性質として、「あきらめやすい」というものがあります。
例えば、仕事や学校を休んで役所に行った場合、「何が何でもその日のうちに終わらせよう」と考えます。これに対して、オンライン行政サービスでは、ちょっとわかりにくいとか面倒くさそうと思った時点で、すぐにあきらめてしまいます。この点からも、「簡単に使える」というコンセプトが、いかに重要かがわかります。
オンライン行政サービスで、「難しそう」「わかりにくい」「大変そう」「お金がかかる」といった要素は致命的です。もうそれだけで「使われないサービス」となる運命が決まってしまいます。
認証方法が、「難しそう」「わかりにくい」「大変そう」「お金がかかる」というものであれば、もうその時点でダメなのです。
なぜなら、認証は、オンライン行政サービスの入口だからです。
入口で多くの人が利用をあきらめてしまうようなサービスは、もうサービスとしてダメなのです。これは、採用する認証方法の安全性や優劣とは何の関係もありません。どんなに立派な認証方法であっても、使われなければ全く意味がないのです。
そして、現在のICカードや電子証明書による認証方法が、利用者から見て「難しそう」「わかりにくい」「大変そう」「お金がかかる」というのは明らかなことです。国民のITリテラシーや認証方法の利用動向を考慮すると、現在のやり方では、利用率は10%程度が飽和点と考えて良いでしょう。
●「オンライン」という強みを邪魔しないサービスを
そもそも、多くの電子政府サービスは、「オンライン」という強みがあります。オンラインの強みとは、時間や場所による制約が少なくなり、「いつでもどこからでも利用できる」というメリットのことです。
ですから、オンライン行政サービスが「簡単に使える」という基本コンセプトを忘れなければ、利用してもらえる可能性が高いのです。事実、多くの先進国において、電子申告サービスの利用率が7割、8割を超えるケースが多いのです。これに対して、何十億何百億円もかけた日本の電子申告は、利用率が10%にも達していません。
今後の認証方法への検討が、IDパスワード方式か電子証明書か、携帯電話かICカードか、といった枝葉末節の議論に終わることがないようにして欲しい。
「簡単に使える」という基本コンセプトを維持しつつ、安全性、信頼性、経済性、将来性といった要素についても一定のレベルを満たそうとした場合、どのような認証方法(技術、制度、運用)が有効なのか。といった議論が、今の電子政府に必要不可欠なのです。
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「電子署名などは不要です。」
内閣府の公益認定等委員会のページに、
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/pdf/renewal.pdf
「簡便な電子申請と、公益法人等関係情報を一元的に提供するポータルサイトの準備に着手しました。」
ここに次の記載があります。
「電子署名などは不要です。」と。画期的な電子申請とも言えるかもです。高らかに不要だと言い切った初のポータルサイトですね。
「電子署名は必須です。」
確かに、
>http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/pdf/renewal.pdf
「簡便な電子申請と、公益法人等関係情報を一元的に提供するポータルサイトの準備に着手しました。」
こちらの手続では、電子署名は不要なんでしょうが。その後の手続で「電子署名は必須」となっています。
移行認定における定款変更でのオンライン変更登記では、絶対的に電子署名を求める。また、移行認可でもオンライン登記で同じく求める。
また、一般社団法人の新規設立もオンライン登記でやると電子署名を求める。
結局のところ「簡便な手続」にはほど遠いことになるのだ。オンライン登記も電子署名を不要とすべきだと思う。
併用こそが望ましい
>結局のところ「簡便な手続」にはほど遠いことになるのだ。オンライン登記も電子署名を不要とすべきだと思う。
併用が理想的だと。電子署名なくしても手続ができるように、と。
次世代なんとやら
次世代電子行政サービス(eワンストップサービス)の実現に向けたグランドデザイン
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/nextg/pdf/granddesign.pdf
なんだそうです。長い。
特区決めて、実証実験やりましょう。そっちの方が早い。
いつのまにか 必須とする
次の案内があります。
http://www.mlit.go.jp/common/000018463.pdf
平成21・22年度定期競争参加資格審査インターネット一元受付の
実施について(建設工事、測量・建設コンサルタント等業務)
この中に次の記載。
「5.行政書士による代理申請
平成21・22年度定期受付から、行政書士による代理申請が行えるようになります。
行政書士の代理申請による場合は、申請者からの委任状の添付が必要となります。」
で、どうでも代理申請する場合に限り電子署名を付す方式にするようです。本人申請であれば、電子署名など不要であるが、代理人申請では必須という「お馬鹿な」方式を執る予定らしい。
行政書士会からの強い要望があったのか、それとも行政側の恣意的な策なのかよく解らないが。