行政サービスにおける効率性の追求
効率性は、多くの公務員が思っている以上に価値がある。
効率性により、顧客が重要と考える「時間」が短縮され、「たらい回し」や「何度も同じことを書かされる」といったことも回避できる。もちろん、行政側の人件費等も削減できる。
行政が効率的だと、市民の動きや考え方も効率的になる。
ダンスが上手な人と踊ると、あまり上手ではない人も、それなりに踊れてしまうようなものである。
また、効率的な作業環境や風景は、それ自体が美しく、見るものを感動させる。
整理整頓された職場や、洗練された職員の態度・対応は、それに触れる市民に感動を与えてくれるのである。
このように、効率性には、経済的・生産的な価値だけでなく、人々の心に働きかける精神的な価値を持っており、サービス品質や顧客満足度の向上に大きく貢献する。
しかし、「効率性」だけを追求すれば良いのかと言えば、そういうわけでもない。
サービス業でも製造業でも、「効率性」だけが全てではないことは広く認知されている。
状況によっては、とりわけ人の心に働きかける精神的な価値において、非効率と思われるもの(ここでは「非効率性」と呼ぼう)が、より大きな効果をもたらすことがある。
例えば、電子政府サービスについてウェブ上で1000人にアンケートを実施するよりも、実際の利用者や利用してくれそうな10人にインタビューして直接対話する方が、り効果的で優先度も高い。
限られた予算でアンケートとインタビューの両方ができない場合、作者だったら間違いなくインタビューを選ぶ。
ただし、効率性には先に述べたように大きな価値があり、行政サービスを良くするためには欠かせないものである。
そこで、まずは「効率性」を追求し、最低限の「効率性」を確立する。
その上で、「効率性」よりも「非効率性」の方が「サービス品質や顧客満足度の向上」に貢献すると判断できた場合に限り、その「非効率性」を採用するのが良い。
- 「顧客にとって、より意味がある非効率性」を厳選し
- 「効率性」の中に上手に組み込んで
- 「サービス品質や顧客満足度の向上」を実現するのである。
料理で言えば、「効率性」が調理技術であり、「非効率性」が「こだわり」であると言える。
どのような「こだわり」を大切にするかは、料理人によって異なり、その「こだわり」が個性や持ち味を生み出す。
「お客様に喜んでもらいたい」という思いから生まれる「こだわり」は料理の質を高めるが、調理人や店の利益を優先する「こだわり」は、「自己満足」や「逸脱」の原因となる。
電子政府サービスに限らず、行政サービス全般において、まだまだ「効率性」が過小評価されていると感じる。
「効率性」に対する理解が不十分なまま、その存在を「非人間的だ」としたり、自身の怠慢の言い訳としたりすることが多い。
効率性の追求により、ここぞと言うタイミングで「非効率性」を使える余裕を作っておきたい。
これは「効率性」からの判断か?
渋谷区では、住基カードや公的個人電子証明書の請求受付については区役所の住民戸籍課のみとした。従来は各出張所でも受け付けていたのだが。
http://www.city.shibuya.tokyo.jp/todoke/jumin/ninshou.html
出張所での取扱いは効率性から判断して中止したのでしょうかね。
区民としては極めて利便性が悪く、住基カードにしろ公的個人電子証明書にしろ、近くの出張所なら出向くとの意欲も沸くが、区役所のみとなると・・・。
取得という気にもならないだろう。