日本の電子政府が良くならない本当の理由(19):公務員だから仕事をもらえない時代へ

●「割高」とみなされる公務員の労働コスト

「仕事に見合った賃金しかもらえない」時代に、高賃金を要求すると、仕事がもらえなくなる。

これが、現在の日本の公務員にも起きている。

公共サービスの民間委託等により、以前は公務員しかできなかった仕事を、民間がするようになった。

内閣府の調査では、国民の7割以上が、公務員に任せるだけでは不十分で、民間の力を活用した方が良いと考えている

なぜなら、「公務員の労働コストは割高である」と考えられているからだ。

実際、日本の公務員給与は、OECD加盟国の中でトップクラスである。

国内の民間企業の平均給与と比較しても、15-20%ほど高い。

調理士・保育士・バス運転手といった業種では、民間の1.5倍から2倍もの給与をもらっている。

一時期話題になった「給食のおばさん、年収800万円」とか「市バス運転手、年収1200万円」といったことは、公務員の給与制度(過度な年功重視、お手盛り手当て等)でないと起きない。

年功が重視される余り、課長の給料より係長の方が高くなったりする。

こうした現状が、国民の多くを「公務員の労働コストは割高である」と考えさせている。

●問題は、「よくわからない」不透明さにある

さて、それでは「本当に公務員の労働コストは割高なのだろうか?」

その答えは、「よくわからない」である。

日本の公務員の人数は、OECD加盟国の中でも最下位クラスで、先進国の中ではかなり少ない。

給与は高いけど、少ない人数でやり繰りしているのだから、労働コストは割高ではない」とも言える。

ところが、天下りや外郭団体など「公務員もどき」「役所もどき」がたくさんあるので、実態がわからないのである。

例えば、公益法人の役員と職員数は100万人を超えており、これだけで国家公務員の3倍ぐらいになる。

公益法人の役員数は全部で50万人ほどで、その半数以上が公務員出身者となっている。

任意の外郭団体については、その実態すら掴めていない。

加えて、源泉徴収制度など、本来は行政がやるべき仕事を、国民にやらせているケースもある。

実は、こうした「よくわからない」不透明さこそ、日本の公務員の首を絞めている。

現在は、「答えが見つからない」「先が見えない」という不安定な社会である。

そうした時代において、「本来は明確であるべきものが不透明で、よくわからない」というのは、ものすごく嫌われるのだ。

●「公務員だから仕事がもらえる」時代の終焉

「公務員だから仕事がもらえる」時代は終わり、「公務員だから仕事がもらえない」時代へと変わりつつある。

公務員全体を覆う「不透明さ」が無くならず、「公務員の労働コストは割高である」と思われる以上、公務員から仕事を取り上げる傾向は、しばらく続くことになる。

「仕事を取り上げられる」順番も、だいたい決まっている。公務員の中でも、下流に位置する人たちから順に「仕事を取り上げられる」のだ。

まず、外郭団体に勤める「公務員もどき」の人たち、ゴミの収集といった現場で作業を行う人たち、地方の出先機関で働く人たちといった流れである。

  • 指定者管理制度の導入により、仕事が無くなった地方の外郭団体が解散し、解雇される職員
  • ごみ収集や給食業務の民間委託により、配置転換・早期退職・転職する職員
  • 地方分権の流れを受けて、廃止の方向にある国の地方出先機関

といった事例が現実としてある。

こうした真っ先に仕事を取り上げられる人たちほど、電子政府によるサービスの向上や業務の効率化に反対する

仕事が取り上げられるのは、電子政府やコンピュータのせいではないのに、現実が見えていないのだ。「仕事をもらうために何をすれば良いのか」がわからず、逆効果のことをする

他方、「電子政府を進める人たち」の「仕事を取り上げられる」順番は、最後の方である。

なので、「電子政府を進める人たち」は、「電子政府サービスの邪魔をする」という気持ちは生まれにくい。ただし、「電子政府サービスを本気で良くしよう」という強い意志やインセンティブも少ない。

 

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