日本の電子政府が良くならない本当の理由(21):公務員が仕事をもらうためには
「公務員だから仕事がもらえない」時代に、公務員が仕事をもらうためには、どうすれば良いか。
●「仕事に見合った賃金がもらえる」給与体系にする
一つは、給与体系の見直しである。
「仕事に見合った賃金しかもらえない」時代に、ただ勤めているだけで自動的に給与が上昇していくような仕組みは、時代錯誤であり、国際的に見ても異常である。
ただ勤めているだけで自動的に給与が上昇していくような仕組みだと、事なかれ主義、先例主義となり、「できるだけ余計なことはせず、今まで通りのやり方で仕事を無難にこなす」となってしまう。
これだと、時代の変化についていけない。
世界の公務員制度を見ると、「終身雇用タイプ」と「競争(職種限定)タイプ」に分けることができるが、実際には「どちらか一方だけ」という極端な制度は存在しない。その国の歴史や雇用事情を踏まえながら、時代に合わせて両者のバランスを調整しているのだ。
高給料・高待遇の仕事に就くためには、豊富な経験や高い技術・技能が必要だ。具体的な成果が期待され、競争も厳しい。成果が無ければ、お払い箱となる。
安定雇用(期間を定めない無期雇用)を望む場合は、厳しい競争や成果主義が無い代わりに、給与は頭打ちとなる。日本のように「ただ勤めているだけで自動的に給与が上昇していく」なんてことは、あり得ない。
前回述べたように、日本では「割高な公務員」と「割安な公務員」との格差が進んでいる。
その給与格差は、実に2倍から3倍ぐらいもある。同じような仕事で、年収300万円の公務員と年収900万円の公務員がいる。
格差が、本人の努力や実力に応じたものであれば納得できるが、実際にはそうではない。
こうした不公平な状況は、優秀でやる気のある公務員の意欲を殺いでしまうので、早急に調整しなければいけない。
●「割高な公務員」でないことを国民の視点で説明する
一口に公務員と言っても、実際には様々な職種があり、「割高な公務員」もいれば「割安な公務員」もいる。
コストと品質で民間に負けない優れた行政サービスもあれば、そうでない行政サービスもある。
ところが、テレビや新聞で取り上げられるのは、「不良公務員」や「ガバナンス機能を失った行政機関」ばかりだ。
社会保険庁のような不祥事があると、関係が無い他の公務員も同じような目で見られてしまう。
これからの公務員は、仕事をもらうために、自らの実績をアピールして、国民からの信頼と支持を勝ち取っていかなければいけない。
しかし、「真面目に一生懸命働いています」と言うだけでは、国民は信じてくれない。
いくら国民に媚びても、実行・実力が伴わない公務員は相手にされない。
自分たちで「お手盛り評価」をしても、説得力は無い。
そこで活用したいのが、「情報公開」や「行政評価」といった制度である。
現在は、「情報公開」や「行政評価」に関するパッケージやシステムが多数あり、コスト分析・業務分析も、以前に比べれば容易になっている。
実際の業務改善・サービス改善には、「電子政府」を活用すれば良い。
そうした手法やツールを活用しながら、「どうすれば、国民が理解し納得し信頼してくれるか」という視点で、わかりやすく効果的に説明していく必要がある。
世界では、80年代から90年代にかけて、行政改革・公務員制度改革が実施され、公務員の数が減った国も多い。しかし、一定の期間を経ると、公務員の数は増えてきている。民間に持っていかれた公共サービスを、自らの努力と実力で行政側が取り戻すこともある。
それは、「民間だけでは公務をこなしきれない」ということであり、「公務員や行政の存在価値や役割は変化するものの、ゼロになることはない」ということである。
ただし、公務員自身がコスト意識の低いまま、仕事のやり方を変えようとせず、現在の身分や待遇にしがみついているのであれば、「公務員から仕事を取り上げる」傾向は続き、国民からの信頼と支持を得ることはできない。
現在、日本の公務員は、大きな正念場を迎えている。
しかし、同じような実力であれば、最終的に国民や市民が選んでくれるのは、「国民・市民、国・地域・自治体のことを真剣に考えくれる人たち」だ。国内外の多くの事例や歴史が、それを証明している。
だから、「誠意や志(こころざし)」のある公務員は、もっと自信と誇りを持って良い。
「実力(時代に合った)」は、努力と勉強次第でどうにでもなるのだから、これから身につければ良いのである。