日本の電子政府が良くならない本当の理由(22):電子政府で行政手続はどう変わるか

今回から、「士業」に焦点を当て、電子政府時代のおける士業のあり方を考えてみたい。

電子政府の発展と共に、士業の主業務である「行政手続の代理・代行」は、その価値を低下させ、支払われる対価も少なくなる。

大きな変化として、二つほど挙げておこう。

●電子政府で、失敗や間違いが激減する

一つは、「失敗や間違いを、できる限りゼロに近づける」仕組みの登場である。

士業に依頼する理由として、「素人の自分がやるより確実である」がある。

ところが、専門家の士業でも失敗はある。

先日、作者が住むマンション改修工事に際して、工事業者が依頼していた行政書士が建設業許可の変更を間違えたため、あわや工事が中止となる事態があった。再申請しても、工事の開始時期に間に合わないのだ。。。

最終的には、契約内容を見直すことで事なきを得たのだが、士業に依頼すれば安心というわけでもないことがよくわかる。

電子政府を上手に活用すれば、こうした失敗や間違いを劇的に減らすことができる。

電子データを原則とすることで、転記や再入力時の間違いを減らすことはよく言われるが、更にその先にあるのが「シュミレーション機能」である。具体的な例は、下記ブログを参照して欲しい。

「シュミレーション機能」の充実により、「行政手続における失敗や間違いは、限りなくゼロに近づき」、士業に依頼する理由が一つ減ることになるだろう。

関連ブログ>>電子申請にはシュミレーション機能を

●人に優しい電子政府、エラーへの寛容性が向上

日本は、失敗した人に厳しい社会と言われる。

これに対して、電子政府は、失敗や間違いに対して寛容で、やり直しが効く。

エラーへの寛容性を向上させることは、ウェブユーザビリティでは当然のことだ。

優秀なウェブサイトであれば、買物をしている途中で間違えても、すぐに、あるいは後でまとめて修正することができる。入力ミスがあれば教えてくれるし、間違いを修正することで「今まで入力したデータが消えてしまう」なんてことも無い。

電子政府でも、こうした「間違いを教えてくれる機能」「間違いを修正する機能」の充実は必須となる。

しかしながら、「人間である以上は失敗はつきもの」

そこで、「失敗した際の被害を最小限にすること」が必要となり、これも電子政府により実現できる。

例えば、許認可の手続で、実際に許可が下りるまで一ヶ月かかっていたものがあったとしよう。

この場合、手続に失敗すると、さらに一ヶ月かかることになり、ビジネスの上では大損害となる。

しかし、手続が即日、遅くとも数日で完了するようになったらどうなるか

行政から指摘された間違いを直して、再申請すれば良いだけの話だ。

更に、再申請の場合は優先処理されるようにしても良い。

多少の手間はかかるが、それほどの実害は発生しない。

これで、また士業に依頼する理由が減ることになる。

実際、海外の電子政府では、今まで一ヶ月かかっていた手続が、即日・数日で完了するようになったという事例がある。

そこには、「ビジネスの阻害要因を除去して、国際競争力を高めよう」という明確なビジョンがある。

ところが、日本では、明確なビジョンの無いまま、今までのやり方をそのまま電子化・オンライン化してきたため、こうした劇的な変化が生まれていない。

日本の電子政府が、まだまだ「ニセモノ電子政府」であるおかげで、士業は大いに助かっている。