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最新情報 バックナンバー
2005/8/22

携帯サイトで住民票の写しの取得を予約、駅で受け取り--横須賀市が9月から
2005年8月22日 電子自治体ポータル
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NGT/govtech/20050822/166614/

携帯電話による住民票の請求予約システム
2005年8月18日 横須賀市
http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/nagekomi/200508/n100000590.html
神奈川県の横須賀市が2005年9月1日からスタートさせる、携帯Webサイトを利用した「住民票の写し」交付の予約サービスについて。事前登録不要、24時間365日対応、受取場所と日時の選択(土日、祭日もOK)など。

携帯電話というチャネル(手段)は、電子申請・電子政府サービスにおいて、今後ますます重要な役割を担うことになることでしょう。特に、若い世代にとっては、ネットもパソコンより携帯という感覚が驚くぐらいにあります(そして増えています)。

電子政府・電子自治体が進んでも、「住民票の写し」のような紙の証明書は、そう簡単になくなりません。市民は、「いずれ電子化されるのだから」といった役所の言い訳を聞きたくありません。そんなことより、今現実に「住民票の写し」が欲しいのだから、簡単で便利な取得方法を提供してちょうだいよ、ということです。

ですから、横須賀市が事前登録しないで携帯Webサイトから交付請求できるサービスを提供したのは、大変に良いことだと思います。記事によると構築費用が2百数十万円とあり、まともなコスト感覚を持っていることも理解できます。

今後の期待も込めて、サービス利用者として実現・改善して欲しいことを挙げておきましょう。

  1. 再利用は簡単に

    携帯電話で、住所氏名、生年月日、連絡先などを入力するのは大変な作業である。最初は仕方ないとしても、2回目以降の利用については、電話番号の入力で足りるといった仕組みが必要である。

    事前登録についても、行政サービス全般の利用登録とリンクさせておけば、サービス改善にもつながり、検討する余地は大きい。

  2. 受取りも簡易に

    携帯電話の画面を見せて、あとは受け取るだけ。というのが理想である。署名ぐらい(印鑑は無しでもOK)は要求しても良いが、できれば無い方が良い。

    横須賀市の場合、氏名と住所を書かせて、さらに予約番号と免許証などの提示が必要となる。これでは、その場で交付請求した方が良いと思われても仕方ない。

    そもそも、本人確認という名目で署名や印鑑、身分証の提示等を求めるのは、本人の権利を守るといった理由ではなく(建前としてはある)、役所側の責任回避・安心感のために行われているのが現実である。そんなことで、利用者の負担を増やしてはいけない。

    郵送サービスも選択できるようにする。翌日の処理・発送とすれば、2,3日中に利用者の手元に届くことになる。

  3. 支払いは後日課金で

    携帯電話を利用するなら、着メロなどを同じように、後日電話料金と一緒に課金されるのが良い。今後は、お財布携帯などにも対応するべきである。

  4. お得感が欲しい

    手数料は、紙と同じ300円ではなく、せめて200円ぐらいにする。受取場所の人が時給いくらで働いているのかわからないが、3-5分でも処理時間を短縮できれば、100円安くしても元は取れるはず。

要は、いかにして利用者の負担を減らし、魅力あるメリットを提供できるかということですね。

また、できるだけシンプルな仕組みとすることで、市民と役所のコスト負担も少なくなります。複雑な仕組みのサービスは、どんなに素晴らしいメリットを謳っていても、その時点でボツとするべきなのです。


2005/7/4

官民連携ポータル検討会
2005年6月28日 ニューメディア開発協会
http://www.nmda.or.jp/kanmin/index.htm
複数の手続きをワンストップで行うサービスについて、経済産業省が総務省と連携して行う「官民連携ポータル検討会」のホームページ。検討会の議事要旨や配布資料を公開。検討事項として、引越し手続きに関するワンストップサイト、地方公共団体サービスとの連携、官民連携ポータルのあるべき姿、データ連携、相互接続性の確保、個人情報保護、個人認証の適切なあり方、セキュリティ等の課題など。

事業者(ビジネス)向けサービスの会社設立ポータルに続いて、市民(暮らし)向けサービスの引越し手続きポータルが検討されています。

引越し手続きポータルが成功するためには、次の点に注意したいところです。

本サービスとして立ち上げる

検討会とか実証実験だと、せっかくポータルサイトを作っても、会社設立ポータル「創業ナビ」のように休止してしまうのは、本当に税金の無駄だと思うので、本サービスとしてスタートさせることが必要です。

経済産業省や法務省を初めとして、省庁だけでも起業・企業支援に関係するサービスやコンテンツをたくさん持っています。これらを統合して会社設立ポータル(ビジネスポータル)としてスタートさせていれば、サービスが休止することもなかったでしょう。

引越し手続きポータルも、国から出る予算を使い切ったら終わりとならないようにしましょう。

また、複数の地方自治体(特に市町村)が参加し、引越し関連の手続について、ノウハウやコンテンツを共有することも大切です。

民間に運営を任せる

海外事例として取り上げられている
iammoving.com - the UK's online change of address service
のように、電子政府サービスで成功する事例は、民間運営(名前を出して責任を負う形で運営する)の場合が多いのです。

引越し手続きポータルでも、政府が資金を提供するのはかまいませんが、運営は民間企業・団体(政府の外郭団体は不可)に任せて、責任を負わせることが必要です。

別のアプローチとしては、検討会でも紹介されている「引越れんらく帳(東京電力が提供する生活情報サイトのサービス)」といった、既に利用されている民間サービスに、行政が参加させてもらうという方法です。

行政の初期投資が安く済み、行政だけでは実現が難しいサービスレベルを維持するためにも、電子政府サービスにおける民間サービスの活用は、積極的に進めるべきだと思います。

官民より先に、官内・官官の連携から

検討会の資料からもわかりますが、民間レベルでは、引越し手続きのワンストップサービスは既に実現しています。

ところが、行政レベルでは、異なる行政機関(国、自治体)間の連携はもちろん、同一の市役所の中でさえ、ワンストップも連携も実現されていません。一人一台に近いパソコンを導入し、各業務が電子化・システム化され、庁内外の通信ネットワークが整備されているにもかかわらずです。。

これでは、民間サービスに行政が参加しても、サービスのレベルを下げ、足を引っ張るばかりです。

行政が本気で、引越し手続きのワンストップサービスを実現したいと思うのであれば、まずやるべきことは、

  • 市民が、
  • 市町村役場の一つの窓口(オフライン・対面)で、
  • 引越しに伴う主要な手続き(よく利用されるものから)を、
  • 一度に済ませられるようにすること

だと言えるでしょう。そうすれば、民間サービスとの連携もスムーズに行えます。

オフライン・対面サービスを活用する

引越し手続きのワンストップに行政サービスが追加されたとして、やってはいけないことは、自分たちのやり方を押し付けることです。

例えば、「電子署名(公的個人認証サービスの電子証明書)がなければ利用できません」なんてしたら、せっかくのサービスも利用されなくなります。

成りすまし防止や本人確認がしたいのであれば、引越し先の住所に手続き確認の通知を送り、一度だけ窓口(夜間や土日営業が好ましい)に来てもらえば良いのです。

この際に、

  1. わが町へようこそと歓迎のスマイル
  2. 身分証明書等による本人確認
  3. 手続き内容と追加手続きの確認
  4. 暮らし全般や緊急時に役立ちそうな案内資料の提供
  5. 今後とも○○役所をよろしくお願いしますの挨拶

などを行います。

「引越し」というイベントは、楽しみや期待があるものの、面倒だし不安も多い。。そんな時にこそ、行政サービスの質や姿勢が問われるのですね。

行政手続きのサービスを含む引越し手続きポータル。道のりは厳しいですが、柔軟な発想と創意工夫で、ぜひとも実現して欲しいと思います。


2005/6/20

橋梁談合:全128件が電子入札 防止目的で導入、骨抜き
2005年6月15日 MSN-Mainichi INTERACTIVE(毎日新聞社)
http://www.mainichi-msn.co.jp/it/seifu/news/20050615org00m300119000c.html
新聞やテレビを賑わせている鋼鉄製橋梁の建設工事を巡る談合事件について。電子入札で、談合は防止できなかったと。

談合事件についての公式発表は、公正取引委員会の記者発表を参照。

国土交通省が発注する鋼橋上部工事の入札談合事件に係る告発について(PDF)
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/05.may/050523.pdf

国土交通省が発注する鋼橋上部工事の入札談合事件に係る追加告発について(PDF)
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/05.june/05061501.pdf

公共調達における談合は、今に始まったことではないですが、時代の変化と共に、談合の事実が白日の下にさらされ、司法・行政関係者の努力が実り、少しずつなくなっていくことを期待します(潮流を考えれば、そうなるでしょう)。新聞やテレビといったメディアにも、それを後押ししてもらいたいですね。

ここでは、今回の記事から読み取るべき、現在の電子入札が抱える問題点を指摘しておきましょう。

その問題点は、電子入札システムの導入は進むものの、評価・監視の仕組みを持たないケースが多いため、本来の目的を達成できていないということです。

電子申請における評価・監視の仕組みの大切さは述べてきましたが、具体的な数字と結果で評価・測定しやすい電子入札こそ、評価・監視の仕組みが必要なのです。

仮に、国土交通省の電子入札システムの導入に合わせて(できれば事前に)、競争入札の仕組みを改革し、電子入札の導入によって落札価格が下がったか、事務処理スピードが上がったか、入札に参加する新規(地元)企業は増えたか、事業のコストパフォーマンスは向上したか等について評価・監視を行っていれば、談合を防止できる可能性は高くなったでしょう。

国土交通省に限らず、国や自治体の電子入札では、こうした評価・監視や情報公開がほとんど行われておらず、電子入札のウェブサイトを見ても、電子入札によってどれだけの効果があったのかが説明されていません。これは、大変恐ろしいことです。

日本は電子入札が進み、電子証明書(ICカード格納)の成功例だといった意見を聞くたびに、「うーん、違うんだけどなー」と嘆く作者であります。。

記事にある通り、電子入札システムだけで、談合を防止することはできません。電子入札の本質を理解して「談合を防止しよう」という強い意志が働かなければ、談合はなくならないのです。

電子入札の導入過程で、入札制度が抱える問題点に気づき、意識を変化させ、制度を改革し、協力者(行政、司法、企業、市民)を巻き込んでいくことができれば、談合を防止することは十分に可能なのですね。

企業コンプライアンスといった言葉が流行っていますが、営利を目的とする企業が、厳しい競争の中で、組織的に一線を超えてしまうケースは今後もあるでしょう。だからこそ、今一度、電子入札のあり方を見直す必要があると考えます。


2005/6/14

電子申請システムモニター事業に係るアンケート結果
(トップページから、「アンケート」>「アンケート結果一覧」で見つかります。)
http://www.pref.saga.lg.jp
佐賀県より、公的個人認証サービス利用の電子申請についてのアンケート結果を公表。モニターの地域(住所)・年齢・職業構成、インターネット接続環境、予想される申請回数、事前準備及び操作等の感想、自由意見など。行政書士からの回答が多いですね。自由意見は、特に参考にしたいところ。

全国の自治体に先駆けて電子申請だと手数料が安いを実施した佐賀県が、電子申請の利用者アンケート結果を公表しました。

利用者の声を聞くことは、、電子申請の利用促進の第一歩と言えますので、佐賀県の試みは評価できますね。

こうした利用者アンケートは、質問内容が大切ですが、それ以上に自由意見などから本音を探り、そこから次の手を考えることがより大切です。つまり、表面的な結果だけで満足してしまうのは避けるということです。

例えば、「予想される申請回数」で、「数年に1回」が50%で最も多いとなれば、3年が有効期限である公的個人認証サービスを取得して電子申請するメリットは少ないのでは。と考えることできます。

さらに、ここ3年間のうちに行った役所の手続をアンケートすれば、力を入れるべき手続や利用推進策が見えてきます。

また、アンケート結果に対して、行政から改善策を提案し、実行計画を公表すると、より双方向性が向上し、電子申請と行政への信頼も高まります。


2005/6/5

平成16年分の所得税、消費税及び贈与税の確定申告状況について
http://www.nta.go.jp/category/press/press/4079/01.htm
国税庁の記者発表資料より。確定申告の状況、譲渡所得の申告状況、個人事業者の消費税の申告状況、贈与税の申告状況など。各種施策の実施状況では、確定申告書等作成コーナーや電子申告の利用状況がわかります。

電子申請(電子申告を含む)に関して、国税庁の良いところは、情報公開の姿勢です。迅速かつ丁寧に利用状況を公開しているのは、現在のところ国税庁ぐらいでしょう。本来は、全ての省庁に義務付けなければいけないことですが。。

発表資料によると、確定申告書の提出件数2,166万7千人あった中で、

電子申告e-Tax:全国拡大後、初めての確定申告)は、2万2千件(所得税申告:1万9千件、個人事業者消費税3千件)となっており、約0.1%の利用率となっています。

これに対して、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成した所得税申告書の提出件数は69万件あり、約3%の利用率となっています。

さらに、タッチパネル方式による自動申告書作成機を利用した申告書の作成件数は、407万2千件あり、約19%も利用されています。

この差が生まれる要因は色々とありますが、やはり申告書作成の複雑さが大きいと思います。税務署等へ行って相談し、説明や補助を受けながらでないと、多くの人にとって申告書の作成は難しいということです。

しかしながら、「確定申告書等作成コーナー」は、改良すべき点も多いですが、実際に使ってみると非常に便利なので、利用者は増えていくことでしょう。特に一度利用した人が再び利用する可能性は高いはずです。

他方、電子申告(e-Tax)については、特に運用面における抜本的な見直しがない限り、利用者の拡大は困難でしょう。

いずれにせよ、より良い電子申請の実現は、情報公開から始まります。その点から、国税庁の発表は、高く評価されるべきものですね。


2005/5/1

電子政府システムにおけるアクセス制御要件に関する調査
2005年4月28日 情報処理推進機構 セキュリティセンター
http://www.ipa.go.jp/security/fy16/reports/eGov_access_control/index.html
行政文書の管理業務をシステム化する際に検討すべきアクセス制御要件についての調査リポート。

アクセス制御要件に関する調査ですが、行政文書管理業務の現状も理解できる充実した内容です。

電子政府サービスの提供と国民への信頼という観点から見た場合、

  1. より良いサービスを提供するために、行政文書を初めとした情報の共有は許される

    利用目的を明確にして、その範囲を国民にも職員にも知らしめることが大切です。

  2. 国民がサービスを選択する中で、情報共有の範囲が決められるのが好ましい

    例えば、引越しの際に発生する様々な変更・届出等については、部署が異なっても情報共有が許されます。この場合、必要があれば、日常的には許されていないアクセスなども許可されます。

  3. アクセス権限の有無に関係なく、職員の個人的興味で個人情報等にアクセスできない、または抑制する環境を作る

    不正アクセスが許されないことは当然ですが、職権乱用等も著しく国民の信頼を損なうものなので、ログ管理等で抑制することが必要となる。

行政が保有する情報(個人情報を含む)は、原則として利用されるものであり、国民の選択肢は少ない。だからこそ、サービスを改善し、国民の信頼を得るための絶え間ぬ努力が必要となります。

別の言い方をすれば、電子政府に対してたくさんの税金を使いながら、サービスの改善が見られなければ、国民からの信頼を得られません。

何のために、情報を管理し守る必要があるのか。電子政府システムにおけるアクセス制御を考える際には、このことを再確認して欲しいですね。


2005/4/27

電子申請の普及を背景に、商業登記に基づく電子証明書発行件数が大幅増
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0504/22/news100.html
ITmediaニュースより。累積約1万5000件を突破したとのこと。

言いたいことはたくさんありますが、累積約1万5000件という数字は、あまりにも寂しい状況であり、とても電子申請の普及とは言えないことは理解しておく必要があるでしょう。

なお、「累積」の発行件数なので、現在保有している企業の数は、1万件なのかか数千件なのかも不明です。分母となる企業(法人)数は、帝国データバンクの企業DBだけでも123万社ありますので、電子証明書を使って電子申請する企業が、非常に少ないことは確かです。

発行件数が増える要素しては、電子申告と電子入札があります。電子申告に期待する企業は多いので、電子証明書を取得しようとする企業は増えると思いますし(実際に電子申告するかは別問題)、電子入札の場合は、電子証明書がないと入札に参加できないこともあるからです。特に、東京都において入札参加資格の申請で電子証明書が必要となることの影響力は大きいはず。

商業登記に基づく電子認証制度は、電子政府の基盤と位置づけられるものですが、次に挙げられるように、制度としては不備な点が多いことも問題です。

  1. 発行件数に関する情報公開が不十分

    評価結果の政策への反映状況報告書(PDF)にあるように、利用可能率が評価されており、利用率・発行件数などが評価されていません。

  2. いまだに、会社(法人)に関する登記情報が電子化されていない

    同報告書にあるとおり、いまだコンピュータ化が終わっていません。わざと終わらせないという噂も・・・

  3. 法人のユニーク番号(法人番号)が存在しない

    国民でさえ住民票コードがあるのに、なぜ法人にないの・・・? 法人に関する情報管理が統合されていないことを示すものですね。

  4. 電子証明書を取得するのにも検証するのにも、別途有償のソフトウェアが必要となる。

    そもそも取得や検証に特殊なソフトウェアが必要な時点で問題外なのですが、もし必要であれば国の予算で作って無料配布すれば良い。

つまり、電子証明書うんぬん以前の問題が、背後に隠れているということです。

電子政府・電子申請の実現は、行政改革そのものであり、電子政府・電子申請をきっかけとして、問題の本質を明らかにし、適切な対処を施すことにあります。(作者としては、特定の行政庁を責めるつもりはありませんし、そうした行為は、あまり生産的ではないでしょう)。

商業登記に基づく電子認証制度が、本当に意味での電子政府の基盤となることを望みます。


2005/4/15

霞が関WAN及び政府認証基盤(共通システム)の最適化計画
平成17年3月31日 各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/cio/dai13/13gijisidai.html
CIO連絡会議より。2008年度までに、府省認証局を廃止して、統合する(共用認証局の設置)方向へ。別添資料として、現行体系(霞が関WAN) 、将来体系(霞が関WAN)、現行体系(政府認証基盤)、将来体系(政府認証基盤)があります。

当コラムも久しぶりの復活。今後は、こまめに更新したいと思います。

さて、トップページでも紹介している、霞が関WAN及び政府認証基盤(共通システム)の最適化計画について。

電子政府では、組織間の連携を進め、重複投資を少なくすることが重視されます。組織間の連携は、縦割りの弊害を少なくし、ワンストップサービスなど利用者視点のサービス実現に寄与すると考えられますし、重複投資を少なくすることで、費用対効果の意識を育て、事後チェックやメンテナンスも容易になるのですね。

省庁が進める電子政府は、まだまだ無駄が多く、統合すべきシステムやサービスがあります。電子申請(汎用システム)については、電子政府の総合窓口で一本化が進められる予定なので、それ以外で2点だけ触れておきましょう。

電子入札システム

電子申請と同じように、電子入札システムも各省庁が構築・運営しています(中央省庁の電子入札)。

電子入札は、もともと公共調達における情報化・合理化を実現するための措置の一部なので、各省庁がシステムを持つ必要はありません。実際、都道府県などでは、市町村との共同運用としているケースが増えています(埼玉県電子入札共同システム)。

省庁レベルでも、調達情報については統合化されています(政府公共調達データベース調達総合情報システム)。

各省庁の電子入札システムについては、入札事務の簡素化・合理化・迅速化、落札価格の低下、入札参加企業の増加といった本来の目標をきちんと測定しつつ、早々に統合化される必要があると言えるでしょう。

ウェブサイト

政府のウェブサイトは、組織別に構築・運営されるものが多く、同じような目的を持ったサイトが増えています。

こうした傾向は、ウェブサイトに対する投資が効率的に行われないという費用的な問題はもちろん、組織間の連携を阻害する要因ともなるので、早期に解消される必要があります。

例えば、(情報)セキュリティに関する政府系のサイトを見ても、

内閣官房 情報セキュリティ対策推進室
http://www.bits.go.jp/

経済産業省 情報セキュリティ政策室
http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/index.html

総務省 情報セキュリティ対策室
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/security/index.htm

警察庁 セキュリティポータルサイト
http://www.cyberpolice.go.jp/

情報処理推進機構:セキュリティセンター
http://www.ipa.go.jp/security/index.html

情報通信研究機構 情報セキュリティセンター
http://www2.nict.go.jp/jt/a121/suishinshitu/index.html

もし、これらが統合されて、組織間の連携・協力が日常的に行われるようになれば、様々な効果が期待できるでしょう。ポータル(玄関口)がたくさんあっては、訪問者(国民)は迷ってしまいますよね。

残念ながら、ウェブサイト統合化については、日本の電子政府において問題と認識されていないのが現状です。ウェブサイトの明確な戦略が無ければ、電子政府の成功はありませんので、まずは問題認識をして欲しいですね。


2005/1/11

今後の行政改革の方針(PDF)
平成16年12月24日 閣議決定
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gyokaku/kettei/041224housin_s.pdf
「行政改革大綱」(平成12年12月1日閣議決定)の成果を踏まえつつ、「民間にできることは民間に」、「地方にできることは地方に」等の観点から今後の行政改革の方針を決定。簡素で効率的な政府の構築、財政の立直し、行財政運営の改善・透明化、国民生活の利便性の向上などを目指す。

電子政府・電子自治体は、行政改革そのものであり、今後の行政改革の方針で電子政府が重要な施策として取り上げられることは、大変良いことだと思います。

その一方で、電子政府・電子自治体それ自体が目的になってしまうことは、避けなければなりません。まず、何か改善したいこと実現したいことがあり、電子政府・電子自治体はそれらを支援するものに過ぎないのです。

例えば、「8 国民との定期的な連絡に関する効率化」において

A 厚生労働省ホームページ社会保険庁コーナーにおいて、55 歳以上の者からの年金見込み額及び年金加入状況の照会を受け付けているが、本人への郵送による回答に加え、本人確認を厳格に行いつつ、インターネットによる回答を可能とすることにより、郵便費用の軽減や回答の迅速化を図る。平成16 年度中の実施を目指し検討を進める。

とあります。インターネットで年金見込み額や年金加入状況がわかるようになれば、確かに便利でしょう。でも、本当にこれで良いのでしょうか。

本人確認を厳格に行いつつ、インターネットによる回答を可能とするとなると、おそらくは公的個人認証や住基カードやらが必要になるのでしょう。安全な通信の証明書、リーダライターやドライバのインストールなど、面倒な手続・準備がたくさんあることでしょう。

こうなると、公的個人認証や住民基本カードの発行枚数を増やす政府のための施策であって、国民サービスの向上ではありません。お金を掛けてシステムを作る割には、ごく一部の人しかサービスを享受できないという不公平もあります。

それよりは、一年に一度、年金加入者に対して郵送(封書)で年金見込み額及び年金加入状況の照会を知らせる。加えて、年金財源の運用状況、社会保険庁の組織改革(努力)の状況、今後何十年間の年金支払額等の推移予測グラフなどを、資料として同封する。

こうした基本サービスがあって、はじめてインターネットでの照会サービスが生きてくるのです。そんな当たり前なことが認識されないまま、安易かつ漫然とお金がかかる電子政府サービスを展開しようとしていることが、日本の電子政府が抱えている問題なのですね。

作者であれば、インターネットで年金見込み額及び年金加入状況の照会を知らせるだけのサービスは行いません。

オンラインバンキング等の多様な手段により、保険料を払うことが出来る仕組みができるまではスタートしません。

債権回収はタイミングが大切なので、相手が「払ってもいいかな」と思わせ、そう思った時に支払える(回収できる)仕組みが必須ということです。

年金見込み額及び年金加入状況を提示して、あと1ヶ月で時効となって支払えない保険料がありますよ。1年支払わないと、年金額が●%少なくなりますよ。と教えます。

それを見て、「払ってもいいかな」と思った国民が、そのままオンラインで保険料を支払うことが出来なければ、商品だけ見せて購入できないショッピングサイトのようなものです。

サービスとはいえない未熟な電子政府サービスが多いのは、サービスの設計・構築・運用プロセスが、根本的に間違っているからです。

そのことに気がつかない限り、いつまでたっても使ってもらえない電子政府サービスが増え続けることでしょう。


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