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WEBビジネスにおける個人情報の取扱 1999年10月1日

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WEBビジネスにおける個人情報の取扱いは、お客様の信頼やブランド向上に、大きな影響を及ぼします。
 
1 はじめに

WEBビジネスにおいては、商品を売ることも確かに大切ですが、それ以上に重要なのが、企業の良いイメージを消費者(お客さん)に持ってもらうことではないでしょうか。インターネットにおけるショッピングでは、この良いイメージ=企業への信頼度が大変重要な役割を果たすと思われます。なぜなら、消費者はネット上のショッピングに対して、様々な面で不安を感じているからです。企業としては、消費者が安心してお買い物が楽しめるように、ケアしてあげる必要があるのです。このケアはし過ぎるということはありません。

消費者の負担(物理的にも精神的にも)を減らすことと、情報の提供(選択肢の提供)は、過度になることはないのです。値段が安いことも確かに大切ですが、これだけではライバルと差をつけることは難しいでしょう。商品によっては、安くすることが必ずしも良いイメージをもたらすわけではないとも言えます。

ここでは、消費者に安心を与える方法として、個人情報の取扱方針(プライバシーポリシー:privacy policy)を取り上げてみます。

2 プライバシーポリシー

プライバシーポリシーとは、企業や団体が、WEBサイト上でどんな個人情報をどんな方法で収集して、収集した情報をどのように取り扱うのかを明確にして、WEB上等で積極的に公開するものです。一般消費者は、このプライバシーポリシーを参照して、その企業や団体に対して、自身の個人情報を提供するかどうか(例えばアンケートの回答など)を決めることが出来るのです。もし企業がプライバシーポリシーを公開していないときは、担当者に連絡を取り、収集した情報の取扱について質問する必要があるでしょう。

企業としては、プライバシーポリシーを積極的に公開することが、消費者に安心と信頼を与えることになると理解した方が良いでしょう。逆に言えば、プライバシーポリシーを公開することは、WEBビジネスを行う企業としては当然のことであって、それすらできない企業は、その時点で既に遅れをとってしまっているのだと思います。

通常のプライバシーポリシーでは、情報提供者である消費者に対して、個人情報取扱方法の選択肢を提供します。大きく分けると選択肢は二つです。一つは、

1)個人情報を自社以外の企業や団体と共有して良い

つまり、情報の流用です。もう一つは

2)情報共有不可

つまり、その企業のみで利用して欲しいという選択です。ここで重要なのは、消費者に安心と信頼を提供したいのであれば、原則を2)にするということです。そして、情報提供者の積極的な許可があった場合のみ、1)情報共有を行うべきなのです。

他方消費者は、1)の方針を採っている企業に対しては、個人情報の提供を避けるべきです。一度でも流用が許された情報は、ネット全体に知れ渡ると考えた方が良いでしょう。特に女性は、自身の個人情報の提供には十分注意する必要があると思います。

しかし、いくらしっかりしたプライバシーポリシーを公開している企業でも、内部の裏切りや管理ミスによって、情報が他に漏れることは十分考えられます。現実として、外部から情報を盗まれることより、内部から漏れることのほうが多いのです。最近でも某NTTさんの職員が顧客のデータを漏らしていました。それでは、どうすればこのような事態を防止することが出来るのでしょうか。それは、本当に必要な情報以外は要求しないあるいは提供しないことだと思います。ということで、次に情報の必要性を考えてみましょう。

3 アンケート等に見える企業の姿勢

インターネット上では、「アンケートに答えてプレゼントをゲット!」などのバナー広告がよく見られます。世界中の人たちがアクセスするインターネットですから、これほどアンケート実施に適した環境はないのでしょう。協力者の中から抽選でプレゼントを差し上げますと広告すれば、必要な情報はあっという間に集まることでしょう。各企業では、○○キャンペーンと題して、このようなプレゼント付アンケートを行っています。しかし、そのアンケートの内容は様々で、質問項目を観察することで、その企業の個人情報に対する認識や姿勢がわかるのです。

そもそも、アンケートは何のために行われるのでしょうか。新製品の宣伝、新規の顧客獲得などが考えられるでしょう。私は、アンケートはサービスの質を向上させるため、つまりは、より多くの顧客に満足してもらうために行うのだと考えます。これを基本中の基本にすると、どんな質問事項が必要であり、どんな質問事項が不要あるいは企業にとってマイナスになるのかが見えてきます。

上記の基本に忠実であれば、アンケート協力者の個人を特定するような情報はほとんど必要ないことがわかります。私が必要だと思うのは、メールアドレス、つまりプレゼント当選結果の通知をするための方法を確保することだけです。名前、年齢、生年月日、電話番号などは一切必要ありません。少し具体的に見ていきましょう。

まずは名前。これは匿名でも本名でもかまわないとするべきです。個人の名前がアンケートの結果に影響を及ぼすことはないでしょう。個人情報を売買する人にとっては必要なのでしょうね。

次に年齢です。これは10代、20代あるいは高校生、大学生、社会人などの選択肢を用意しておけば良いでしょう。どの年齢層の人が回答したかは重要なポイントだと思いますが、何歳の人が回答したかまでは必要ないでしょう。生年月日まで質問するなどは論外といって良いでしょう。いかに、個人を特定させないかということに気を配りましょう。この気配りこそが、消費者に安心と信頼を与えてくれるのです。

電話番号。これも全く必要ありません。連絡方法が必要な場合は、メールアドレスを第一としましょう。なぜなら、メールアドレスの方が電話番号より個人の特定が困難だからです。賞品の発送等が必要になった場合に限って、住所等の情報を提供してもらえば良いのです。

個人を特定しないことで、アンケートに対する回答の精度も変わってくるはずです。匿名であれば、素直に答えるということは容易に予想できます。もちろんその逆も考えられますが。いずれにせよ、個人を特定する情報を安易に質問してくるような企業は、個人情報売買業者と同じと見られてしまっても仕方ないことでしょう。

4 まとめ

最後に、私なりに考える個人情報問題対処法をまとめておきます。

企業も消費者も個人情報の取扱には十分に注意する

この意識を持つことがはじめの一歩であり、一番大事なことです。

企業は積極的に明確なプライバシーポリシーを公開する

情報の積極的な公開はWEB社会の基本であり、消費者の安心と信頼を獲得するための基本です。

消費者は情報提供にあたっては、プライバシーポリシーなどを参照する

WEB上では、自分の身は自分で守る必要があります。

企業は本当に必要な情報だけを収集する

不要な情報を要求することで、消費者に余計な負担をかけることになります。また、個人を特定する情報を要求することは、企業にとってもマイナスであることを理解しましょう。

消費者は個人を特定する情報を提供しない

個人を特定するような情報を要求する企業は、最初から相手にしないようにしましょう。

企業はアンケートをサービスの質を向上させるために行いましょう

個人情報を収集するため行うなんてもっての他です。

以上のことに気をつけて、企業は自社のイメージをアップして、どんどん儲けて下さいませ。消費者は、インターネットショッピングを大いに楽しんで下さいませ。


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