利用者の視点に立って、使える(受け入れてもらえそうな)電子申請の方式を提案しています。 要旨: 電子署名を使う方式では、「現行に普及する技術を利用する」「ネットユーザーに馴染み深い方法を採用する」「一番のネックである電子証明書の取得・利用を簡素化する」を心がけ、 電子署名を使わない方式では、オフラインとの連携を上手に行いましょう。 大切なのは、「どうすれば使ってもらえるだろうか」と考え、工夫することです。 |
|
「電子申請への期待」において、使える電子申請のあり方について漠然と述べてみたが、今回はもう少し具体的に提案してみたいと思う。 そもそも、インターネット電子申請において必要なのは、いたってシンプルで、 インターネットを利用して、申請データを役所に送り届け、役所からの結果通知等を申請者に送り届ける仕組み である。 これに、役所の事務処理やトラブル防止等の理由により(あくまでも役所の都合:PKI推進について -利用者からの意見として-)、申請者の申請意思確認が電子的にできる機能が要求されるのであるが、基本はシンプルであることを理解しておきたい。 現行のインターネット電子申請は複雑すぎるし、利用にあたっての手続も面倒である。そこで、作者は「地方公共団体における申請・届出等手続に関する汎用受付システムの基本仕様(PDF)」における基本的な考え方に従った形で、次のような電子申請を提案する。 電子署名を使う方式 オンラインで完結する手続については、申請者の意思確認を行うために電子署名・認証を利用する。 (1)役所ホームページにアクセス 役所のホームページにアクセスして電子申請コーナーへ。もちろん、SSL対応のセキュアウェブサイトです。たいした意味もなく「javascript」を使ったりしないように。また、確かに役所ホームページであることを、利用者が簡単に確認できるようにしておくことも大切です。 ○SSL対応のセキュアウェブサイトにより、 ○電子申請のページは、トップページからのリンクはもちろん、行政手続・サービスに関連する様々なページからリンクされていることが望ましい。 ○地方自治体など役所ホームページの電子証明書(サーバ証明書)に関する情報は、総務省等のWebサイト上で、一覧表が公開されていることが望ましい。 (2)申請データの送信 氏名、住所、メールアドレス等の必要事項を入力して、申請データを送信します。添付書類等は含まない、いわゆる「申請書」のみの送信です。懸賞応募やオンラインショッピングでの注文と同じような感じですね。 ○申請データはXML形式として、タグ等の標準化についても留意する。なお、タグの標準化は必要であるが、なくても事後対応でなんとかなる。 ○事前の登録等をしないで利用できるものとするが、オンラインで簡潔に行えるもので、かつ登録により提供されるサービスが良くなるのであれば、事前登録等があっても良い。 (3)申請意思の確認 申請データを受け取った役所は、申請内容を含む電子署名つき電子メールを申請者に送ります。このような申請がありましたが、よろしいですか?という確認メールですね。で、よければ電子署名付きの返信メール(や添付書類等)を申請者から送ってもらいます。 ○確認メールは暗号化(申請者の公開鍵により)されていることが望ましい。 ○添付書類は、申請ページで作成できるのが望ましい。紙であれば別途郵送とする。 ○電子証明書は、電子署名メールが利用できるものであることが必要。 ○電子署名は、公的個人認証サービス、民間認証サービスによるものがあるが、利用相手(申請先の役所等)や用途(行政手続等)を限定しているのであれば、ICカードを利用しないもの(ハードディスク保存)でかまわない。 現行の紙申請における署名(記名押印)の厳格性(認め印の利用、本人確認の方法)を考慮すると、一定の厳格性を持った本人確認に基づき発行されれば良く、利便性を考慮するとWebからダウンロードできる電子証明書が望ましい。 また、システム上は発行元である認証機関がGPKIに接続されていることが必要となるが、申請先の役所が認めるのであれば、必ずしもGPKI接続を必須条件とはしなくて良い。 (4)受付完了の通知 申請者から送られてきた「確認しましたメール」に対しては、受付完了メールを送ります。受付番号を発行しておけば、審査状況等をウェブ上で確認することも可能ですね。許可・不許可等の結果については、メールで通知して、かつウェブ上で確認できるようにします。 ○受付完了は申請画面上でも確認できるが、同時に電子メールでも行う。 ○受付完了メールは、利用者側で印刷等により保存することが望ましい。 この方式の特徴として、 ・現行に普及する技術を利用する ・ネットユーザーに馴染み深い方法を採用する ・一番のネックである電子証明書の取得・利用を簡素化する などが挙げられる。 電子署名を使わない方式 オンラインで完結せず、窓口に出向いて受取り等をする手続については、対面で申請者の意思確認・本人確認ができるため、電子署名を利用しない。 各種証明書(住民票の写し、戸籍謄本・抄本、納税証明書、印鑑登録証明書など)の発行(交付請求)については、幅広い階層の個人による利用頻度が高いので、こうした簡易な方式が必要である。 現在の電子申請は、システムありきで肝心のサービスはおろそかになっている感が否めない。電子署名を使わない簡易で敷居の低いサービスを先行させることで、電子署名を利用した電子申請など次のステップに進むことを容易にするであろう。 例えば、この方法を利用して便利と感じた市民は、今度は窓口に行かなくて済む方法を求めるかもしれない。電子行政サービスは、まず「サービス」ありきということを認識しておきたい。 また、この方法は「パスポートの電子申請モドキ」でも述べたように、申請予約(仮申請)システムとしても機能するので、ぜひ導入してもらいたい。 (1)役所ホームページにアクセス 役所のホームページにアクセスして電子申請コーナーへ。もちろん、SSL対応のセキュアウェブサイトです。たいした意味もなく「javascript」を使ったりしないように。また、確かに役所ホームページであることを、利用者が簡単に確認できるようにしておくことも大切です。 ○「電子署名を使う方式」と同様である。 (2)申請データの送信 氏名、住所、メールアドレス等の必要事項を入力して、申請データを送信します。添付書類等は含まない、いわゆる「申請書」のみの送信です。懸賞応募やオンラインショッピングでの注文と同じような感じですね。 ○申請データはXML形式として、タグ等の標準化についても留意する。なお、タグの標準化は必要であるが、なくても事後対応でなんとかなる。 ○事前の登録等をしないで利用できるものとするが、オンラインで簡潔に行えるもので、かつ登録により提供されるサービスが良くなるのであれば、事前登録等があっても良い。 ○利用者の承諾があれば、適切な説明をした上で、SSL方式でない申請データ送信の利用を可能としても良い。 (3)申請内容の確認 申請データの送信が完了すると、申請内容の表示と受付番号が表示されます。申請者は、その画面を印刷して役所へ持っていきます。 ○受付完了メールの送付を行う場合は、個人情報の取扱いに注意すること。 ○印刷画面は、紙の申請書としても利用できることが望ましい。システムの不具合等により受付処理がされていない場合でも、窓口においてそのまま申請書として利用できるからである。 ○プリンターが無い利用者は、受付番号をメモして行けば良い。 ○電子チケットのように携帯電話を利用する方法も考えられる。 (4)申請結果等の受取り 役所に行って、身分証明書を提示して、印刷物または受付番号と引換えに、その場で印刷される証明書等を受け取ります。 ○役所の業務時間以外で受け取れる場所(駅前の出張所など)を用意することが望ましい。 ○受け取り期間(申請から1週間以内など)を設けることで、いたずら申請等に対応する。 ○受取り時に待たされては電子申請の意味が無いので、優先的に処理すること。 簡単ではあるが、以上が作者の提案する「使える電子申請」になるための仕組みである。 もちろん、これだけで電子申請が使ってもらえるわけもないが、今よりはかなりマシになるはずである。批判的な意見ばかりで申し訳ないが、今のままでは電子申請は使ってもらえないことを、改めて認識する必要があると考える。 参考資料 地方公共団体における申請・届出等手続に関する汎用受付システムの基本仕様(PDF) この仕様における基本方針」は、次のようなものである。 (1)住民サービスの向上、(2)行政事務の効率化、(3)地域の活性化を目指して (1)地域住民等の利便性確保に最大限配慮する。 (2)個人情報の扱いを慎重に行う。 (3)データ形式等を統一する>行政の広域化・市町村合併への対応 (4)業務の特性に応じて幅広く対応できるシステムとする。 (5)適切なセキュリティ対策を講じ、安全性・信頼性を確保する。 (6)国際標準技術等の採用により、汎用性・拡張性のあるシステムとする。 (7)既に開発されている同種システムの成果を活用する。 (8)共通課題については、関係機関との協議により定める。 (その他)極力簡素なシステムとなるように努める。 汎用受付等システムの構築・運用に関する共通事項 申請・届出等手続のオンライン化に関わる汎用受付等システムの基本的な仕様 平成13年度パイロット事業報告書 |
All Rights Reserved. Legal Notices. Copyright 1999-2004 Manabu Muta