MBR Consulting マナブーズ・ルーム・コンサルティング
電子自治体で使える電子証明書 2003年12月8日

Home >>> 論考・資料室 >>> 電子自治体で使える電子証明書
 
都道府県に対する簡単なアンケート結果を踏まえて、電子自治体による電子申請で利用できる電子証明書について解説しています。また、法的資格者が代理申請する場合の電子証明書についても取り上げています。
目次
(1)電子申請システムにおける電子証明書の取扱い

(2)都道府県に対するアンケート結果

(3)アンケート結果を踏まえた解説

(4)参考サイト

(1)電子申請システムにおける電子証明書の取扱い 目次へ
電子申請は、役所の手続がインターネット上で済ませることができるというもので、電子政府・電子自治体が提供するサービスの中でも、特に期待されています。

中央政府(府・省庁)においては、既に「汎用受付システム」と呼ばれる電子申請システムの運用が開始され、一部の手続について電子申請できるようになりました。電子申請システムの比較

ところで、電子申請を使うためには、原則として、申請者(または申請代理人)の電子署名が求められます。電子署名によって、申請者が誰であるか、本当に申請したいという意思があるかどうかなどを確認するのです。

電子署名をするためには、電子証明書が必要になりますが、どんな電子証明書でも良いというわけではありません。政府が定める条件を満たした電子証明書だけが、電子申請で使うことができるのです。

それでは、各省庁の電子申請システムにおいて、実際に電子証明書がどのように取扱われるか見てみましょう。下記は、電子メールで問合せができる省庁に対して質問した結果をまとめたものです。

省庁の電子申請システムにおける電子証明書の取扱い(平成15年10月現在)

※一般的には、基本領域にはローマ字で、拡張領域には日本語で、本人に関する情報(氏名、住所など)が記載されています。

 

確認方法

証明書の確認項目

表示する領域

総務省 審査官による目視 氏名、住所 基本領域のみ
金融庁 審査官による目視 未回答 未回答
法務省 審査官による目視 担当部局の判断による 基本領域、拡張領域
国土交通省 審査官による目視 氏名、住所等 基本領域、拡張領域
経済産業省 審査官による目視 すべての申請者情報 基本領域、拡張領域
農林水産省 審査官による目視 氏名、住所 基本領域、拡張領域
警察庁 審査官による目視 すべての申請者情報 基本領域、拡張領域
  • 申請書の申請者情報と電子証明書の情報は審査官が目視で確認する。

  • 確認項目は、氏名、住所、電話番号等があるが、手続によって異なる、または審査官の判断による。

  • 電子証明書については、システム上は基本、拡張両方の領域を参照できるものが多いが、常に両方を見るわけではない。

  • 申請者情報と電子証明書の記載に差異がある場合や記載情報が少ない場合は、審査官の判断によって、別途の本人確認、補正指示、処分等を行う。

このように、電子申請と言っても、全てが電子的・自動的に処理されるわけではなく、人間による手作業の部分が残ります。電子証明書の内容についても、審査を担当する人が、目で見て確認するのです。(イメージ図:電子申請における電子証明書の確認

この作業は、申請書に記載された人(申請者)と電子署名をした人(申請行為者)が、確かに同一人物であるということを確認するために行われます。

(2)都道府県に対するアンケート結果 目次へ

47都道府県に対して、電子申請システムで利用できる電子証明書に関する質問メールを送ったところ、23都道府県からお返事を頂きました。どうもありがとうございます。

質問の内容と結果は、次の通りです。


都道府県(電子申請担当)へのアンケート結果(平成15年10月現在)

※頂いたお返事は、検討段階途中のものです。

1 電子申請システムで利用できる電子証明書は、どのような認証局のものを予定されているでしょうか。該当するものを、次の中から全てお選びください。

回答数:23(未定3を含む)

ア 公的個人認証サービス

20

イ 商業登記に基礎を置く電子認証

19

ウ LGPKIブリッジ認証局と相互認証している民間認証局

16

エ その他

1

※その他:県が適当と認める民間認証局

公的個人認証サービスと商業登記に基礎を置く電子認証を、市民向け・企業向けの基本的な電子証明書として位置付け、必要・状況に応じて民間認証局の利用も検討していくというのが、全体的な傾向のようです。

原則として、どの電子証明書の利用を認めるかは、申請先である役所の判断となりますが、広く使われている電子証明書については、利用を認める必要があるでしょう。

2 公的資格者(行政書士、司法書士、社会保険労務士など)が代理申請を行う場合、電子証明書の記載事項として必須なものはどれでしょうか。該当するものを、次の中から全てお選びください。

3 公的資格者が代理申請を行う場合、電子証明書の記載事項として必須ではないが、あった方が好ましいものはどれでしょうか。該当するものを、次の中から全てお選びください。

回答数:11(検討中のため回答保留:12)

記載項目

必須

好ましい

ア 氏名

11

0

イ 通称名や旧性名

1

2

ウ 資格名

11

0

エ 資格登録番号

9

1

オ 所属団体名

4

2

カ 事務所所在地

8

2

キ 自宅(個人)住所

2

4

ク 国籍

0

0

ケ 生年月日

4

2

コ 性別

3

3

サ 事務所電話番号

6

4

シ 自宅電話番号

1

2

ス メールアドレス

5

5

セ その他

1

0

※ その他:事務所名

必須である記載事項としては、まず氏名と資格名があり、続いて資格登録番号や事務所所在地などがあります。

作者が予想していたより、メールアドレスや事務所電話番号の希望が多くありました。確かに、申請書に氏名と住所だけしか記載されていない場合などには、電子証明書にメールアドレスや事務所電話番号の記載があると便利でしょう。

(3)アンケート結果を踏まえた解説 目次へ
どんな電子証明書が使えるか

電子自治体が提供する電子申請では、

  • 個人であれば、「公的個人認証サービス」の電子証明書
  • 企業等の法人であれば、「商業登記に基礎を置く電子認証」の電子証明書

であれば、ほぼ間違いなく使えるでしょう。

電子証明書の使い分けも必要

利用する電子申請や手続によっては、より詳しい情報(資格等の属性情報)が記載された電子証明書が必要になることもあります。例として、

  • 公的資格者が、業務を行う上で電子申請を利用する場合
  • 企業が、電子入札に参加する場合

などが考えられます。

現実的には、一枚の電子証明書で何でもできるということは困難ですから、複数の電子証明書を用途に応じて使い分けることになるでしょう。

公的資格者の電子証明書はどうなる

公的資格者(行政書士、司法書士、税理士、社会保険労務士など)は、電子申請を利用して業務を行うにあたり、相手方(依頼者、役所など)に対して、自らの資格をオンライン上でも証明できる手段を持つことが必要になります。

その手段の一つとして、電子証明書の利用があるのですが、公的資格者が電子証明書を利用する場合には、特に次の2点に注意が必要です。

  1. 目的と用途を明確にすること

  2. 実務での利用を想定した汎用性と利便性を持たせること

電子申請での利用を想定するのであれば、まず、「なぜ電子申請を利用するのか」を明確にします。その上で、

  • 電子証明書の記載情報は何を含めるか

  • どの役所(申請先)のどんな手続で使える必要があるか

  • 依頼者とのやり取りを含めた業務フローはどうなるのか

などを考えることになります。

電子申請に使えるような電子証明書を用意し、それを維持・管理していくことは、多大なお金と労力を必要とします。ですから、上記の点を考慮して慎重に対策を講じないと、将来に渡って大きな負債を抱え、本来の業務に支障を来たすことになるでしょう。

電子証明書の記載情報はどうなる

電子申請においては、電子証明書の内容を、審査を担当する人が目で見て確認します。ですから、記載情報が不十分であると、審査の中断、補正命令、不許可などの処分を受ける可能性があります。

具体的には、

  • 公的個人認証サービス:住所、氏名、生年月日、性別
  • 商業登記に基礎を置く電子認証:登記簿の記載内容に準じた情報

となっています。この記載情報であれば、電子申請において問題となることはないでしょう。

公的資格者の電子証明書については、実務での利用を考えた場合、少なくとも、氏名、資格名、資格登録番号、事務所の住所を記載しておくのが良いでしょう。

その一方で、国籍、生年月日、性別などは、プライバシー等への配慮も考えて、必須の記載事項としない方が良いでしょう。

各士業による認証局の整備状況(平成15年11月現在)

電子証明書は認証局から発行されます。下記は、各士業による認証局の整備状況をまとめたものです。

これら資格者(の団体)による認証局は、特に法的な根拠がないまま構築されています。電子署名法や行政手続オンライン化法などもありますが、いずれも資格の認証については規定がありません。

一般国民からすれば、公的な資格をオンライン上でも確認できる方が、より安心して依頼できるわけですから、法的整備も含めた資格認証についての制度づくりが望まれます。

資格名 認証局
弁護士 特になし
税理士 日本税理士会連合会認証局(未稼動)
※平成16年開始の電子申告(国税電子申告・納税システム)に向けて準備中
税理士からみた国税電子申告・納税システム(PDF)
用途:電子申請(電子申告・納税)
電子署名法:認定なし
電子政府(GPKI):未対応
行政書士 日本行政書士会連合会認証サービス(未稼動)
※現在、再構築のため一旦終了。
用途:電子申請
電子署名法:認定なし
電子政府(GPKI):未対応
司法書士 日本司法書士会連合会認証局(稼働中)
用途:電子申請(債権譲渡登記オンライン申請で利用可能)
電子署名法:認定なし(商業登記電子認証制度を活用)
電子政府(GPKI):未対応
※不動産・商業登記オンライン化に向けて新たな認証局を準備中
社会保険労務士 全国社会保険労務士会連合会認証サービス(稼働中)
用途:電子申請(厚生労働省社会保険庁の手続で利用可能)
電子署名法:認定済み
電子政府(GPKI):対応済み
公認会計士 日本公認会計士協会電子認証局(稼働中)
用途:商法監査報告書への電子署名
電子署名法:認定なし
電子政府(GPKI):未対応
弁理士 特になし

 

(4)参考サイト 目次へ
電子政府の総合窓口
http://www.e-gov.go.jp/

電子政府構築計画
http://www.e-gov.go.jp/doc/scheme.html

汎用受付等システムの構築・運用に関する共通事項
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/020329_1.htm

申請・届出等手続のオンライン化に関わる汎用受付等システムの基本的な仕様
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/010806_1.htm

地方公共団体における申請・届出等手続に関する汎用受付システムの基本仕様(PDF)
http://www.soumu.go.jp/kokusai/pdf/020327.pdf

平成14年度電子自治体推進パイロット事業報告書
http://www.soumu.go.jp/kokusai/pilot020508.html

政府認証基盤(GPKI)のホームページ
http://www.gpki.go.jp/

申請者の電子証明書を発行する認証局
http://www.gpki.go.jp/cas/ee.html

地方公共団体組織認証基盤(LGPKI)
http://www.lgpki.jp/

電子入札コアシステム対応認証局
http://www.cals.jacic.or.jp/coreconso/linkpage/link5/link5j/link5j-3toiawaseitiran.htm

「商業登記に基づく電子認証制度」について
http://www.moj.go.jp/ONLINE/CERTIFICATION/index.html

電子政府・電子自治体の推進のための行政手続オンライン化関係三法について
http://www.soumu.go.jp/gyoukan/kanri/sanhou.html

情報セキュリティ政策(電子署名、認証関連)
http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/digitalsign.htm

 


All Rights Reserved. Legal Notices. Copyright 1999-2003 Manabu Muta