過去に掲載された電子申請に関するサイト紹介です。 |
2004/6/28 行政手続オンライン化法に基づき各府省が公表した事項等の概要 省庁における電子申請は、形だけ見ると順調に進んでおり、100%実施の省庁も少なくありません。しかし、肝心な「利用」となると、非常に厳しい状況にあります。(電子政府の推進に関する調査結果:PDF) 利用が進まないことについては、政府も十分認識しており、今回の改訂でも、「年間申請件数が10万件以上の手続を重点に手続の簡素化・合理化の徹底、業務処理の短縮化を図る」旨の記述が追加されました。 しかしながら、現在の汎用受付等システムによるサービスが続く限り、電子申請の未来は明るいものにはならないでしょう。現在のようにインフラにあわせたサービスを提供する限り、利用を期待するのは難しいということです。 今後は、電子政府の予算取りも難しくなっていき、今までのようなインフラ整備のための莫大なお金は出てこない。そうなると、新しいサービスや新たな提供チャネル(携帯、テレビ、コールセンター)へ投資・予算付けが行われます。 そこで重視されるのが、「実際に使ってもらえるサービスという視点」です。 使ってもらえそうなサービスを提供するのが本来の電子政府サービスであり、この視点がない限り、電子申請の利用は進まないと考えるべきです。 サービスの存在を知ってもらえることを前提とした場合、利用される条件は、
となります。つまり、電子申請サービスを利用した人が、「欲しい情報や解決法を見つける」ことができ、「がっかりしない」ということです。 「せっかく作ったのだから利用してもらう」。インフラの場合は、それで良いのかも知れませんが、サービスの場合は、それではダメなのです。 2004/6/15 オーストラリア:補助金支給に関わる統合サービスの進展 電子政府ポータルには、総合的に情報提供するポータルと、ある特定の分野に絞ってサービス提供する専門ポータルがあります。こうした専門ポータルを実現するためには、組織横断的な取り組みが必要であり、「GrantsLINK」はその成功例として取り上げられています。 作者が、この「GrantsLINK」を素晴らしいと思うのは、そのコンセプトが明確なところです。「コミュニティ活動の支援」という明確な目的があることで、単なる情報提供・検索サービスとなっていないのが良いところだと思うのです。 補助金というのは、「お金」という市民や企業の目を引きやすいサービスだけに、下手をすると「補助金の獲得」が目的となってしまい、本来の目的から離れてしまう危険が大きいのですが、「GrantsLINK」ではオンラインサービスの特性を生かして、本来の目的を実現しようとしているのだと思います。 電子政府サービスにおいて、利用者の視点に立つとは
だと作者は考えています。 補助金にしても、情報を入手してお金を獲得するだけでなく、そのお金を利用した次のアクションを生み出すことが大切なのです。 「GrantsLINK」は、多くの役に立つ機能を持ち、コミュニティ活動の活性化というアクションを生み出し、市民による地域・社会活動を促しており、まさに利用者の視点に立った電子政府サービスだと言えるでしょう。 2004/6/11 「地上デジタル放送を活用した行政サービス提供に関する実証実験推進協議会」報告書の公表 報告書のタイトルを見て、地上デジタル放送なんて当分普及しないから。。。と思ってしまってはいけません。 ここで重要なのは、放送形式ではありません。地上デジタルでも衛星デジタルでも、ブロードバンド通信(光、衛星、電線など)でも、利用者にとってはどうでも良いことです。 では、何が重要かと言えば、「テレビで役所のサービスが受けられる」という点です。 「テレビ」という慣れ親しまれた装置を使って、リアルタイムの情報提供や問い合わせ・申請・届出などの双方向性サービスができるというのがポイントなのです。 電子政府・電子申請を考える時に、よく「利用者の視点で」と言われますが、まだまだ利用者の視点から程遠いというのが現状です。 他方、常に視聴者(利用者)を意識する「テレビ」を活用することで、「利用者の視点って何だろう」と考えるようになるのです。実際、報告書の中には、現在の電子政府・電子申請サービスを改善するためのヒントもたくさん含まれています。 また、携帯電話もパソコンも使わないという人たちでも、電子政府サービスを利用できるということは、やはり必要です。 インターネットを利用する人でも、役所のホームページなんて見ないという人がたくさんいるでしょう。そうした人たちでも、テレビとなると見てくれるかもしれない。テレビをきっかけとして、より詳しい情報はインターネットでといった具合に、使い分け・棲み分けも可能でしょう。 「テレビ利用の行政サービス」のポイントは、シンプルであることです。 情報量や選択肢でインターネットと競争するのは得策ではありません。リモコン操作に適した選択肢と情報量を心がけましょう。競争(または協力)する相手は、テレビの教養・情報番組とした方が良いですね。 2004/6/9 総務省電子政府・電子自治体推進本部有識者懇談会(第3回) 配布資料である「電子政府進ちょく度調査結果(アクセンチュア株式会社)」を見ると、評価項目の「CRM活用度」について、日本は遅れているとされています。電子政府においては、市民との関係作りが大切であることを考えると、まだまだ日本が厳しい状況にあると言えましょう。 ここで注意したいのは、「関係作り」というのは市民だけでなく、行政と行政、中央政府と地方政府、行政と行政職員、政府とベンダーといった、様々な関係があるということです。 より良い電子政府・電子申請の実現には、こうした関係作りを見直すことが必要であり、最優先事項なのです。 もう一つ触れておきたいのは、サービス利用の促進についてです。 電子政府サービスと言うと、パスポート電子申請や電子申告・納税と言ったトランザクション(やり取り)を伴う、より高度な電子政府サービスが注目されがちです。 しかし、電子政府サービスの基本は「情報提供」にあります。基本を大切にしないところに、応用編である電子申請や電子申告といったサービスを提供しても、それは形ばかりのサービスとなってしまうでしょう。 基本と言っても、ウェブを通じた情報提供は、なかなかに奥が深いものです。なにせ、欲しい情報にたどり着けない人がたくさんいるわけですから。。 役所の手続なんて年に一度するかしないかといった人も、役所から提供される「情報」については、テレビ、雑誌、新聞、回覧板、そしてウェブなど様々なメディアを通じて入手していることを、今一度認識しておきましょう。 そして、基本である「情報提供」こそ、市民とのより良い「関係作り」を支える大切な要素となるのです。 2004/5/28 IT戦略本部(第25回)議事次第 最近の電子政府・電子自治体のトレンドがわかるサイトを挙げてみました。 大きな動きとしては、「e-Japan重点計画-2004案」の作成、電子政府構築計画の見直しといったところですが、最近の流れとしては、 莫大な費用をかけて電子政府を構築したけれど、ちっともサービスが改善されないし、国民に利用してもらえないので、行政の中身を変えていくことにしよう。 >> 人事・給与等業務・システム最適化計画 国民に対して実際に提供されるサービスモデルを常に意識して進めましょう。最適化によって発生する余剰資源(人、お金)が、国民へのサービスとして還元されることが大切です。 サービスについては、とりあえず行政ポータルサイトにがんばってもらおう。 >> 行政ポータルサイトの整備 行政ポータルサイトは万能ではありません。それよりは、利用者や分野を絞った専門ポータル、地域・自治体ポータルとの連携を充実させて、利用者が欲しい情報にたどり着ける仕組みを確立しましょう。 仮に、各省庁の電子申請システムを統合して、「電子政府の総合窓口」で申請手続きができるようになっても、実際の利用が進むことはないでしょう。使えない電子申請システムが100個集まっても、やはり使えないことに変わりはないのです。 電子政府(省庁)では、ばらばらなシステムが乱立してしまったので、予算も少ない電子自治体については、できるだけ費用を分担・節約しよう。 >> 共同アウトソーシング・電子自治体推進戦略 こちらも、市民に対して実際に提供されるサービスモデルを常に意識しておかないと、自治体間の競争もないままに、参加自治体が提供する電子自治体サービスが、非常に低いレベルで画一化されてしまう恐れがあります。 結果(サービス内容とその利用)に重点をおきましょう。
「住民のプライバシーの保護に関する新しい考え方と電子自治体におけるそのシステム的な担保の仕組みについての研究会」報告書
報告書の中に、「プライバシー影響評価(Privacy Impact Assessment: PIA)」なる言葉が出てきます。電子政府関係のレポートでも最近よく見られる言葉なのですが、この「影響評価(影響分析を含む)」というものは、プライバシー問題だけでなく、電子政府・電子自治体を進める上で、非常に大切なプロセスでもあります。 電子政府は、「変革への挑戦(Challenge to Change and Reform)」です。 考え方を変える、仕事のやり方を変える、サービス内容を変える、評価システムを変える等々。。もう、変革のオンパレードなわけで、その最前線に立たされる行政職員はたまったものではありません。(もちろん、国民にしても同じことですが、国民には「使わない」という選択肢があります。) ですから、そうした変革(電子政府)が与える「影響評価」をしないことには、いくら「優秀と考えられる電子政府システム」が導入されたところで、なかなか具体的な結果(コスト削減、サービス改善など)が見えてこないのです。 より良い電子政府・電子自治体を実現するためには、「変革をマネジメントするための仕組みと人材」が必須と言えるでしょう。 2004/5/20 第1回電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会における資料
日常的な業務は、ワードやエクセル、一太郎などを使って仕事をしているのでしょうから、文書・データの連携(XMLタグの標準化及び文字コードの統一化)の検討と言っても、いまいちピンとこないでしょう。 てっとり早くて効果的な方法は、LASDEC(財団法人・地方自治情報センター)などのライブラリで、電子自治体構築に関するノウハウ、ソフトウェア、テンプレートなどを公開・共有することです。ついでに、ライブラリ利用の会員制もやめて、誰でも気軽に利用できるようにしましょう。 民間サイトでは、roumu.com(人事労務管理実務者のための総合情報コミュニティ)などがありますが、これのお役所版(行政事務実務者ポータル)を作れば良いのです。行政職員も使える、システム開発ベンダーも使える、もちろん市民も使えると。広く公開されることで、行政の透明性や事務効率化も高まることでしょう。 だいたい、XMLタグの標準化や文字コードの統一化などは、国が調査して作成・公開すれば良く、後は各自治体やベンダーが、実務で使うアプリケーションに実装していけば良いものかと。 より良い電子政府・電子自治体を実現するためには「情報共有」が基本となりますが、いくら検討会や会議を開いたところで、有益な「情報共有」は進みません。せっかくインターネットがあるのですから、有効に活用しましょう。 2004/5/11 「電子政府」に新たな利用促進策の必要性が判明 世界的にも注目されているアクセンチュアの電子政府調査です。ランキングに一喜一憂するのは考えものですが、学ぶべきことは多くあります。 それは、「自分たちに足りないものは何であるか」を知ることであり、「足りないものを補うための方法」を先進国の事例やアクセンチュアが提供するヒントから学ぶことです。 また、調査結果からわかる5つの傾向を挙げていますが、これらの傾向は相互に影響し合いながら繋がっており、今後の電子政府の進むべき道を示唆しています。 日本の弱点と指摘されている「CRMの活用」については、人・組織・文化といった、変えていくことが非常に難しい問題を解決しないことには、克服することはできません。 ランキングはアップしたかもしれませんが、現在の日本の電子政府は、非常に厳しい時期を迎えていることを認識しましょう。 2004/5/7 セキュアOSに関する調査研究会報告書の公表 技術の利用は「適材適所」ということなのでしょうが、電子政府サービスにおいては、適材適所に加えて「適宜」が必要になります。用途に合ったものを「タイミングよく」使いこなすことが求められるということです。 インターネットの世界は、日進月歩で変化しており、そこで要求されるサービスの質も変化しています。通信環境も大きく変わり、利用される技術も変わっています。 SSL通信が当たり前になり、ウェブデザイナーの自己満足といわれたFlashも、今では効果的に利用されるケースが増えてきました。 より良い電子政府・電子申請サービスを実現したいのであれば、「これを使えば間違いない」という技術や手法はありません。 ただ言えるのは、現時点において一般的に普及している(信頼されいてる)技術や手法は、インターネットと相性が良いものであり、コストパフォーマンスも高いということです。ですから、 現時点において一般的に普及している技術や手法の利用を前提としながら、一歩先を見据えて変化に対応できるようにしておく。 これが、「より良い電子政府・電子申請サービスにおける進歩・変化への対応」のあり方と言えるでしょう。 2004/4/27 個人情報の保護に関する基本方針(PDF) 電子政府・電子申請サービスにおいては、電子化された個人情報の利用が前提となります。そのため、個人情報の「保護と利用のバランス」を保つことが必要になります。ポイントとなるのは、 1 必要な場合のみ個人情報を要求する 電子政府サービスは、個人情報を提供しなくても利用できるのが原則です。サービスの性質上、個人情報を要求する場合でも、必要最低限の情報提供をお願いするようにしましょう。 2 個人情報の不正閲覧・利用を抑止する アクセスログの記録等により、不正利用を抑止します。誰でも簡単に覗き見できる状態では、見るなというのが無理な話です。「正当な目的」と「適正な手続き」による利用であることが確認できるようにしましょう。 3 事後の対応と救済を確立する 行政機関が保有する個人情報は、個人の基本的な権利や生活基盤などに影響を及ぼすものです。個人情報の不正利用や誤った情報による被害などについて、気軽に相談できる窓口を設置し、迅速な事後対応・救済ができるようにしましょう。 2004/4/19 IT戦略本部(第24回)議事次第 現在の電子政府・電子申請サービスの利用が進まないのは、しごく単純なことで、市民が利用する価値を見出せないからです。 利用するメリットと、利用に当たってのコストやリスクを比較して、メリットが勝れば利用するのです。この感覚は、人によって異なり、また提供されるサービスの種類によっても変わってきますが、「相場」もあります。 この「相場」を無視したサービスは、いくらインターネットの人口普及率が60%を超え、市場規模が大きくなったところで、市民には相手にされず、利用者は一向に増えないのですね。 さて、その「相場」を知るためには、電子政府・電子申請だけを見ていてはダメで、少なくともインターネット上で提供されるサービスの動向には通じていなければいけません。 もし、電子政府・電子申請サービスに「利用者の視点」を取り入れたければ、「相場」を知り、インターネットユーザーの「一般的な感覚」を身につければ良いのです。 「一般的な感覚」で、「これでは利用されるはずもない」と思えば、そのサービスは評価うんぬん以前の問題であり、お金をかけて構築されるべきものではないということです。 作者の場合、現在の電子政府が抱える問題の多くは、組織・人・文化にあると考えています。これは、問題の根が深いことを意味し、基礎部分から変えていかないと、末端であるサービスも改善されないことを意味しています。 日本の電子政府では、組織・人・文化を変革するための具体的な施策が盛り込まれていません。この分野について、きちんと掘り下げて、具体的な計画の下にマネジメントしていくことが、電子政府・電子申請サービスを向上させる、もっとも堅実で効果の高いものでありましょう。 電子政府・電子申請サービスの価値を高めたければ、「急がば回れ」なのです。 2004/4/15 地図作成支援サービスの運用開始 電子政府サービスの核となるのは、政府が保有するデータ・情報ですので、今回のような地図作成サービスは大変好ましいものですね。 国や地方公共団体における、電子申請以外での行政事務での利用も想定しているとのことで、この点も高く評価できるものです。 作成した地図は、国土交通省のオンライン申請で利用できるそうですが、他の省庁や自治体の電子申請でも同様に利用できるのが望ましいのは言うまでもありません。 さて、このように政府が保有するデータ・情報は、個人情報保護やデータ改ざん等への配慮をしながらも、有効に活用することで、様々な電子政府サービスを実現するだけでなく、新たな社会・経済活動を生み出すことにも繋がります。 好ましい流れは、
電子政府・電子申請サービスは、そのサービスを「利用」し、利用したことで「何が変わる・生まれる」のかが大切なのですね。 これに対して、好ましくない流れは、
こうなると、せっかくの有益な情報も、「流通・共有・活用」が妨げられてしまい、本来の価値や可能性を失ってしまうのです。 もちろん、電子申請においても、基本的なサービスをシンプルな仕組みで提供するのが好ましく、制約等は可能な限り設けないのが良いでしょう。
電子政府の総合窓口(e−Gov(イーガブ))を活用したワンストップサービスの実現に向けて 各省庁でバラバラに稼動する電子申請システムが統合・一元化されるのは良いことですが、いくら使えない電子申請システムを集めても、決して使えるものにはならないので、その点を注意して欲しいですね。 こんな風に書くと手厳しいと思われるかもしれませんが、各省庁の電子申請システムが閑古鳥状態である限り、残念ながら、それらを集めても良い電子政府サービスにはならないのです。 ところで、大規模なリニューアル以外にも、「今すぐ簡単にできること」はたくさんあります。 現在のe−Govに欠けていると思うのは、「電子政府サービスを使ってもらおう」という意気込みです。例えば、せっかく始まった公的個人認証サービスや電子申告などは、トップページのお知らせコーナー等で大きく取り上げると良いでしょう。 人気のあるページのベスト10を掲載するとか、手続案内の掲載情報に関連情報・サイトを表示するようにするとか、ちょっと工夫するだけで、利用者が欲しい情報を入手しやすくできるのです。 日本の電子政府の玄関口である「e−Gov」を見るにつけ、現在の日本の電子政府が抱える問題点を感じてしまうのは、作者だけではないはず。 2004/3/31 旅券の電子申請利用にあたって 電子申請の客寄せパンダと言われるパスポート申請ですが、作者は少し違う認識を持っています。なぜなら、「旅券」という国際的な国籍・身分証明書の発行については、特に厳格な本人確認等が要求されるため、そもそもオンライン電子申請に馴染まないものだからです。 ですから、作者は「パスポートの電子申請モドキ」で提案したような簡単な申請予約システムや、や国税庁の「確定申告書作成コーナー」に見られるような、申請書印刷といったサービスを提供するのが良いと思っています。 「使いにくい面倒な電子申請」より、今すぐ使える簡単なサービスの方が、電子申請の本来の目的に合致するのですね。 現在提供される「パスポートの電子申請」の問題点は、次の二つ。
この二点は、致命的な問題であり、外務省と岡山県は、今回のパスポート電子申請から多くを学ぶことになるでしょう。 日本には優れた技術力があるのですから、電子申請の本旨に沿った形で、有効な資源の活用を心がけて欲しいものです。
経済産業省のすべての手続きを電子化について 申請・届出等手続のオンライン化について とりあえず全部の手続きを電子化・オンライン化しようという電子申請も、ここに来て手詰まり感が見えてきました。今後は、国民や議会の目も厳しくなり、ほとんど使われていない電子申請システムや、申請先ごとにバラバラなシステムなどが、多くの批判を受けることになるでしょう。 電子政府や電子申請は、多くの要素からなるもので、全体的な計画や戦略が必要であると共に、各要素(テーマ)ごとの計画・戦略も必要です。 そうした要素の中に、「サービスの開始・運用」というものがあります。 これは、オンライン化の対象とする手続きの選択(優先順位付け)から、システム仕様の検討、広報戦略など多岐に渡るものですが、簡単に言えば、 「使ってもらえる(であろう)電子政府・電子申請サービス」を実現するための仕掛け作りです。 電子政府・電子申請サービスの「成功」は、様々な要因に影響されますので、成功のセオリーや近道を提示することは困難なのですが、電子政府・電子申請サービスの「失敗」については、アクションプランやシステム設計の段階で、ほとんど決まってしまいます。 アクションプランやシステム仕様書などを見ると、実際に提供されるサービスの内容や、運用方法がわかるので、「あー、これでは失敗するな」と判断できるのです。 このように「失敗」が決まった電子政府・電子申請サービスは、後でどんなに頑張って宣伝したり機能追加したりしても、根本的な見直しがない限り、もはや「成功」し「使ってもらえる」ようにはならないのです。 残念なことに、各省庁が提供する「汎用受付等システム」は、根本的な見直しを行わない限り、「成功」し「使ってもらえる」ようにはならないでしょう。 2004/3/25 評価専門調査会(第3回)議事要旨 手厳しい意見が多いように見えますが、述べられていることは当たり前のことばかり。そんな当たり前のことがされていないのが、今の電子政府・電子申請なのですね。「90何パーセントの手続きが電子化」といった表現なども、やはり無理があるようです。。 評価を形式的なものとしないためには、第三者機関による監視を行い、その結果を踏まえての評価を行うことが必要になります。
第23回IT戦略本部 議事録
Windows XP,Macによるオンライン登記情報提供サービスについて 以前から不思議に思うことが二つ。一つは、もともと公示の目的を持つ登記情報が、なぜ無料開放されないのかということ。もう一つは、有料で行われる「オンライン登記情報提供サービス」が、「民事法務協会」という団体の独占となっていることです。(参照法令:電気通信回線による登記情報の提供に関する法律) 電子政府サービスにおける行政の強みは、その圧倒的な情報力にあります。それが、法令データベースや許可業者のリストなどであり、登記情報もその一つです。 こうした情報を、一般に公開することで、新たなビジネスが生まれたり、商取引の信頼性を高めるという効果が期待できるのです。インターネットの基本要素は「情報」であり、特に政府が有する情報は信頼性が高く価値があるということです。 特に、商業登記の情報は企業活動の基本となるものであり、これを一般無料公開することの経済効果は計り知れません。電子申請での活用においても、現在のような面倒な処理や決済が必要なくなり、よりスムーズに手続きを済ませることができます。 例えば、電子政府先進国とされるオーストラリアでは、"ABRpublic"というサービスがあります。誰でも無料で登録企業の情報検索ができるのはもちろん、オンライン登録もできるようになっており、日本の登記情報提供サービスとはエライ違いです。 電子政府・電子申請の実現により、新たなビジネスが生まれ、民間企業等による健全な競争でサービスの改善が進むのは良いことです。しかし、そうしたビジネスチャンスや収益事業が、一部の団体・機関による独占・寡占となるのは好ましいものではありません。 「いやいや、登記情報提供サービスが現在の仕組みを採用しているのは、それ相当の理由があって・・・」と言い訳が聞こえてきそうですが。。 「オンライン登記情報提供サービス」に望むことは、次に二点です。
この二点を実行するだけで、日本の電子政府・電子商取引の発展に、大きく貢献することができるでしょう。 2004/3/23 総務省における申請・届出等の手続の簡素化・合理化に係る取組について 電子申請の成功要素として、「電子化する前の徹底した簡素化・合理化」があります。申請・届出等の手続の簡素化・合理化としては、
が挙げられていますが、役所側だけで行う簡素化・合理化は、その内容や信頼性において、どうしても不安があります。 日本郵政公社が、郵便局の業務改善にトヨタ自動車の効率生産方式を取り入れたように(JPSの推進状況、日本郵政公社ITビジョン)、申請・届出等の手続の簡素化・合理化についても、民間企業、研究機関、NPO等の方式やアイデアを積極的に取り入れて進めないと、市民が納得できるサービスを提供することは難しいでしょう。 電子申請で求められるサービスの質は、「役所にしてはなかなか」といったレベルではなく、「優秀な民間企業にも匹敵する」レベルです。 なぜなら、電子申請サービスは、Webを通じて提供されるものだからです。そこは、誰もが参加できるゆえに実力がものを言う社会であり、役所だからといって特別な扱いはされません。多くの民間企業や個人商店が、日々競争しながら進化を続けているのです。 今の日本の電子政府に必要なのは、「謙虚になること」であり「Webにおける自身の実力を知ること」でありましょう。 2004/3/13 住民基本台帳カードの交付等の際の本人確認方法の厳格化(PDF) いくら住基カードが高度なセキュリティレベルのスマートカードであっても、「公的機関が発行する写真付き身分証明書」の一つと考えた場合、運転免許証やパスポートと比較して入手が容易だったということですね。一番弱いところが狙われたという、いたって当たり前の結果とも言えましょう。 以前に比べて本人確認が厳しくなっている消費者金融等で、他人に成りすましてお金を借りたいという目的があり、その目的を達成するにあたり、一番お金がかからず簡単な方法は何か?と考えた時に、「住民基本台帳カードの不正取得」にたどり着いたのでしょう。 作者が注目したいのは、 印鑑登録及び公的個人認証サービスの電子証明書の発行についても同様の改正を行う という点です。何が注目するべきかと言いますと、電子政府の基盤となる住基カードや公的個人認証サービスに加えて、従来からある印鑑登録という方式についても見直しがされるところです。 現在の日本では、電子申請を利用する場合、電子証明書による電子署名等が必要とされるケースが多くなっています。 そんな面倒なことが必要なのかと問うと、電子の世界は紙と違うので、より厳格な本人の意思確認が必要なのだという、もっともらしい答えが返ってきます。 ところが、紙の世界では、かなりいい加減に本人確認が行われており、問題が起こるケースも少なくありません。 つまり、手続をそのまま電子化するのがいけないように、本人確認についても紙申請のケースをそのまま電子認証で実現するのではなく、合理化・簡素化・厳格化を行い、安全性と効率性を確立した上で、電子認証・署名などの利用を考えていく必要があるのです。 電子申請で、市民にとって馴染みのない電子証明書の利用を押し付けるのであれば、世界でトップレベルの安全性・信頼性を備えたサービスを目指すことが求められます。 作者から見る限り、現在の日本の電子政府・電子申請は、安全性・信頼性の意味を履き違えているように思います。 ものすごーく高いレベルにしている所(使い勝手や気軽さという大切な要素に、著しく制限を及ぼしている)がある反面、あららという低いレベルの所を放置している(気が付かない)でいるように思います。 そして、当然ながら、その低いレベルが、日本の電子政府の安全性・信頼性レベルとなっているのです。 2004/3/8 評価専門調査会(第3回)議事次第 評価専門調査会評価シートを見ると、電子政府関連の評価指標や現状分析に、実際のサービス利用数に関する情報が明示されていません。Webサイトのアクセス数だけ取り上げてるような評価であれば、何の進歩も期待できません。 個々の電子政府サービスの構築・運用について費用はいくらなのか(ある程度は資料からわかりますが)、実際の利用数はどれぐらいで紙サービスとの割合を比較するとどうなるのか。少なくとも、これぐらいは行うべきですね。 電子政府・電子申請に、形だけの評価は必要ありません。むしろ、そうした評価を行うという姿勢、それぐらいの評価で十分であると考える文化は、電子政府・電子申請の発展を妨げる大きな障害となります。 委員からの意見にあるように、個別施策の進捗管理と効果測定、成果評価目標の整理、PDCAサイクルを組み込んだ施策体系、利用者の視点に立った施策の拡大、利用者評価などが必要であり、早急な対応が求められます。 各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議(第6回)資料 省庁のシステム最適化計画は難航しているようですが、こうした地道な情報の整理と分析が全ての基礎となり、最終的な成果の差を生み出すことになりますね。 最適化されたシステムを基礎とする電子政府が、Webの進化スピードに負けないだけの学習と成長を続けることができれば、日本の国際的な評価は飛躍的に向上するでしょう。 |
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