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公的個人認証サービスは使えるか 2004年2月2日 更新:3月29日 Home >>> 論考・資料室 >>> 公的個人認証サービスは使えるか |
平成16年1月29日に開始した公的個人認証サービスについて、オモシロおかしく解説・提言するページです。関係者の方は、怒らないで読んで下さいね。
サービスは普及するか(1):公的個人認証サービスの強みと弱み |
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はじめに |目次へ | |
平成16年1月29日、いよいよ公的個人認証サービスがスタートしました。 専用のポータルサイトを立ち上げたりと、政府もなかなかがんばってますね。自分でポータルって言っちゃうのは、ご愛嬌。 公的個人認証サービスは、インターネット経由で役所の手続をする(オンライン電子申請)際に必要となる、本人確認の手段(電子証明書)を提供するサービスです。 公的個人認証サービスの電子証明書を利用することで、
といった問題を解決できるとされています。この他に、 「個人情報や手続の内容や漏れてしまうのでは・・・?」 といった心配もありますが、こちらはSSL通信など別の手段により守られることになります。 「さあー、これで面倒な役所の手続もインターネットでちょちょいのちょい!」 と思ったあなたは、ウーンなんて良い人。そう、公的個人認証サービスや電子申請を使いこなすのは、なかなか難しいことなのです。 |
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まずは基本から |目次へ | |
それでは、基本的な所から見ていきましょう。 どこでもらえるの? あなたが住んでる市区町村役場の窓口へ行きましょう。 「えーと、これどうやるんだっけ・・・。あ、間違えた。もー、こんな面倒なサービス始めやがって。。。」 なーんてことは、もちりんありませんわ。 そうそう、運転免許証とかパスポートとか、写真の付いた身分証明書も忘れずに。 えっ、住民基本台帳カードを持ってない? 窓口:お住まいの市区町村役場 あとは、窓口の説明や指示を受けながら、申請書への記入、本人確認、機械の操作(暗証番号の設定)などを行います。 いくらかかるの? 赤字覚悟で、ドーンと500円! えっ、どうやって使うのかって? えっ、結局、金取るのかって? えっ、そのリーダなんとかはいくらかって? 発行手数料:平成16年3月31日までは無料。それ以降は原則として500円。
電子証明書を使って電子申請するためには、インターネットに繋がったパソコンと、電子証明書を読み取る装置(ICカードリーダライタ)が、別途必要になります。 また、申請先の役所や手続によって、使えるパソコンの設定や環境が異なりますので、注意が必要です。 ICカードリーダライタも、パソコンの仕様や住基カード(ICカード)の種類によって、使えるものと使えないものがありますので、購入する時はお店の人に確認しましょう。 なにができるの? そりゃー、面倒な役所の手続がインターネットで簡単にできるわけですよ。 えっ、具体的に何ができるのかって? まずは、確定申告ができますよ。 じゃー、パスポートの申請はどうです? ま、まあ、どんどんサービスが追加されますから、楽しみに待っててくださいな。 予定されているサービスには次のようなものがあります。 平成16年2月2日から:国税電子申告(一部地域のみ:東海4県) 「うーん、なんだか面倒くさいかも。」 そう思ったあなたは、鋭い!(でもないか) |
サービスは普及するか(1) |目次へ | |||||||||||||||||||
公的個人認証サービスの具体的な利用方法等は、公式サイトでご覧頂く(うーん、難しい・・)として、当サイトでは、本サービスの可能性について触れておきましょう。 公的個人認証サービスの強みと弱み 作者は、電子申請を初めとした電子政府サービスの市民が利用するまでのプロセスを、「知る」「信頼する」「理解する」「準備する」「利用する」の5つに分けて考えています。 電子政府サービスは、ただ「提供する」だけでは、作ったらおしまいの「箱モノ」となってしまいます。実際に、サービスまで辿り着いて利用してもらうことこそが重要なのです。ですから、上手にサービス利用まで導くためにも、利用するまでのプロセスを考えることが大切なのですね。 では、公的個人認証サービスの持つ強みと弱みを、このプロセスに沿って見てみましょう。
国民にサービスの存在を知ってもらわないことには、何も始まりません。政府を挙げてのサービスであり予算もあるので、多様な告知手段を利用できることは強みと言えます。実際、テレビや新聞・雑誌等のメディアで取り上げられていますね。 しかし、サービス開始当初は話題性があるので、メディアへの露出機会も多いわけですが、政府の施策にありがちな、当初の勢いから失速していくというパターンを辿る可能性も大きいわけです。 国民に知ってもらうための、継続的な広報・告知が必要になります。 (2)信頼する 公的個人認証サービスは、責任の所在がはっきりしない点もありますが、基本的には役所(都道府県)が提供するサービスなので、やはり信頼性は高いです。 ところが、インターネット上のサービスとなれば、セキュリティやプライバシーといった心配が付き物であり、それは役所のサービスであっても同様です。住基ネットなどへの不安・誤解から、電子政府そのものに対する不安・不信があることも事実です。 公的個人認証サービスを信頼してもらうためには、単にICカードや電子証明書の安全性・信頼性を主張・説明するだけでなく、電子政府や役所全体の信頼性を高めることが必要となります。 間違っても「絶対安心」とか言わないで、市民に対して、利用リスクや自己責任などを含めた正確な情報をわかりやすく伝えることから始め、広く市民からの意見を取り入れる姿勢が大切です。 (3)理解する 公的個人認証サービスによる電子証明書や電子署名は、実体を伴わない電子データであり、あまり一般の人には馴染みがないものでしょう。しかし、住基カードという目に見える媒体に格納されることで、少しはイメージしやすくなります。 印鑑登録制度と比較されることもありますが、両者は用途や性質が異なるので、あまり混同しない方が良いでしょう。 むしろ、電子証明書があれば何ができるのか、電子署名にはどんな効果があるのか、どんな点に注意して利用・管理するべきなのかといった点を、わかりやすく示すことが有効です。 そもそも、PKIによる電子署名は、「明日には使いものにならなくなるかもしれない」という不安を抱えているものですし。 (4)準備する 公的個人認証サービスによる電子証明書は、「準備する」が非常に複雑で苦労します。多くの利用者が、「準備する」を乗り越えることができず挫折することでしょう。 電子証明書の発行は、役所へ行って申し込み端末を操作するだけなので、まだ良いのですが、いざ電子証明書を使おうと思うと、ちょっと考えられないくらいの労力が必要なのです。オンライン窓口利用者マニュアルでは、必要な事前準備として
が挙げられています。これを見ても、何を意味しているのかさえわからない人もいると思います。さらに、個々の電子申請サービスを利用するためには、別途作業や準備が必要になります。 公的個人認証サービスは、「準備する」につきインターネットユーザーの許容範囲を大きく逸脱しており、この点を改善しない限り、普及はしないと考えて良いでしょう。 電子政府の成功ポイントである、「利用者がアクセスしやすく使いやすいこと」という観点から、根本的に見直す必要があります。 (5)利用する 電子証明書の魅力は、なんと言っても「面倒な役所の手続を、自宅で簡単にできる」という点にあります。面白いゲームソフトがないと、ゲーム機本体が売れないように、魅力的な電子政府・電子申請サービスがなければ、公的個人認証サービスも普及しません。 だからと言って、「じゃあ、電子申請できる手続を増やせば良いの?」と誤解しないようにしましょう。あくまでも「魅力的な」電子政府・電子申請サービスが必要なのです。そして、「魅力的な」電子政府・電子申請サービスは、必ずしも電子証明書や高度な技術を必要としていないことも理解しておきましょう。 何が「魅力的な」のかという点については、またの機会に詳しく解説できればと思います。 公的個人認証サービスの可能性を高め、その普及を目指すためには、強みを活用し弱みを克服することが必要です。 作者自身、公的個人認証サービスの持つ潜在能力は高いと思いますが、普及するための適切な施策が行われないと、成功することは非常に難しいと考えています。 |
サービスは普及するか(2) |目次へ | |
公的個人認証サービスは、電子政府・電子自治体が提供するサービスの一つです。電子政府サービスとしての競争要因をチェックしておきましょう。 この競争要因のチェックは、電子政府・電子自治体サービスの価値を見極める際に作者が利用するものですが(事業を評価する場合は、もう少し複雑になります)、チェック内容を見ると、かなり厳しい状況となっています。 公的個人認証サービスのようなインフラの場合、その性質上、単独で価値を見極めることは難しいので、電子申請等の具体的なサービスとセットで考えることが必要になります。 |
利用場面を考える |目次へ | |
現実的に考えると、特に使い道のない公的個人認証サービスを(そもそも一般の人は、年に何度も役所の手続きするわけではない)、わざわざお金や時間をかけて市民が取得することはないでしょう。 それでは寂しいので、少し前向きに考えますと、次のような可能性があります。 それは、役所や出先機関の端末、郵便局や銀行、旅行会社や自動車販売店などの民間窓口、行政書士や税理士や司法書士などの事務所での利用するというものです。 つまり、役所(の手続き)へのアクセスポイントを増やすことで、サービス提供の機会も増やすということです。また、「たらい回し」や「縦割り」といった役所文化の弊害を少なくするという効果も期待できます。 こうした既に利用環境が整っている場所であれば、市民は「知る、信頼する、理解する、準備する」という面倒なプロセスを飛び越えて、一気に「利用する」ことができるのです。 ただし、上記のような場所で公的個人認証サービスが利用されるためには、仲介者となる企業や専門家に対して、明確で実のあるインセンティブを与えることが必要でしょう。 電子政府サービスを提供したい役所と、自身のサービス価値を高めたい民間企業等の利益がうまく合致すれば、公的個人認証サービスの普及にも光が見えてくると思います。 公的個人認証サービスをきっかけとして、「市民に使ってもらえる電子政府・電子自治体サービスって何だろう」ということを、真剣に考えるようになってもらえれば良いですね。 |
参考サイト |目次へ | |
公的個人認証サービスポータルサイト 公的個人認証サービスを利用できる行政手続き 公的個人認証サービスを利用できるパソコン環境 公的個人認証サービスオンライン窓口 各都道府県の公的個人認証サービスに関連するページ 公的個人認証サービスについて(ビックカメラ.com) 電子政府の総合窓口 電子政府構築計画 電子政府・電子自治体の推進(政府広報オンライン) 申請者の電子証明書を発行する認証局(政府認証基盤GPKI) 電子政府・電子自治体の推進のための行政手続オンライン化関係三法 住民基本台帳ネットワークシステム 自動車保有関係手続のワンストップサービス 印鑑登録と印鑑登録証明書の交付(東京都千代田区より) 行政機関等個人情報保護法 住民基本台帳カードの交付等の際の本人確認方法の厳格化(PDF) コラム:使える電子申請を目指して(日経BPガバメントテクノロジー) 電子申請システムの比較 |
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