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住基ネットを考える(2)

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(5)住基ネットに関連する電子政府基盤

住基ネットが保有する個人情報が、「4情報+住民票コード+これらの変更情報」のみであり、その利用方法も限定されていることから、

住基ネットは使い物にならないのでは?

という議論があります。これは、ある意味正しいと思います。住基ネット単独では、はっきり言ってコストに見合った効果は望めないでしょう。

●「監視社会」の神話
──プライバシーなき世界は恐怖か
http://www.hotwired.co.jp/bitliteracy/ikeda/020723/
HotWiredJapanより。住基ネットに関する池田氏のコメントは的を得ていると思います。

さて、住基ネット単独では厳しい状況ですが、住基ネットはインフラ(基盤)の一つに過ぎません。そこで、住基ネットと他のインフラと組み合わせて使うことで、その効果は随分と変わってきます。

そのインフラとは、総合行政ネットワーク(LGWAN)と地方公共団体による公的個人認証サービス制度です。

 

住基ネットに関連する電子政府基盤
  住基ネット 総合行政ネットワーク 公的個人認証サービス
名称 住民基本台帳ネットワークシステム 総合行政ネットワーク(LGWAN) 地方公共団体による公的個人認証サービス制度
特徴 役所間(市町村)を結ぶネットワーク基盤で、インターネットと繋がらない。本人確認手段として利用される。流通する情報は、「4情報+住民票コード+これらの変更情報」のみ。 役所間(都道府県、市町村)を結ぶネットワーク基盤で、各地方公共団体のLAN(庁内LAN)を相互に接続したもの。インターネットと間接的に繋がり、中央省庁のネットワーク基盤である霞ヶ関WANとも繋がる。流通する情報は、電子メールや電子公文書など役所の事務処理において必要なもの全般で個人情報も含まれる。ただし、住民票コードは流通しない。 住民(個人)の認証基盤。希望する住民に対して電子証明書を発行するサービスであり、電子政府・電子自治体における身分証明書+電子印鑑(電子署名)として機能する。住民基本台帳(住民票)の住民データを基に発行・管理されるため、住基ネットによる本人確認を行う。

 

電子政府ネットワーク基盤の比較
  住民基本台帳ネットワークシステム 総合行政ネットワーク(LGWAN)
目的 全国規模で本人確認を効率的に行う 地方公共団体相互のコミュニケーションの円滑化、情報の共有による情報の高度利用、国の各府省との間の情報交換(霞が関WANとの接続)
住民サービスの向上と行政事務の効率化
参加対象 市町村、都道府県、指定情報処理機関(地方自治情報センター 地方公共団体(市町村、都道府県)
通信 専用回線(認証・暗号技術を利用) 専用回線(認証・暗号技術を利用)
外部接続 既存住基システム(住民基本台帳電算処理システム)
インターネットと繋がらない。
地方公共団体(庁内LAN)、霞が関WAN(府省間ネットワーク)
インターネットと間接的に(庁内LANを経由)繋がる。
利用者 市町村の職員
(実際に誰が使えるのか?)
地方公務員
流通情報 4情報(氏名、性別、住所、生年月日)
住民票コード
これらの変更情報
電子メールや電子公文書など役所の事務処理において必要なもの全般(個人情報も含まれるが、住民票コードは流通しない)
サービス 住民票の写しの広域交付、転入転出の特例処理、住民基本台帳カードの交付、住基カードを利用した本人確認、国の行政機関等への本人確認情報の提供 電子メール、電子文書交換、情報掲示版、WBT(オンライン)教育
構成 全国サーバ、ネットワーク監視装置、業務端末、ICカードリーダ/ライタ、コールセンターサーバ、住民基本台帳カード委託発行装置、全国ネットワーク接続用ファイアウォールなど。 LGWANアクセス回線、LGWANサービス提供設備、IC カード及びIC カードリーダライタなど。
住基ネットにしても、LGWANにしても、セキュリティの強度は高い。住民の個人情報を狙うのであれば、恐らく、各自治体の庁内LANおよび各施設ではないかと思います。なぜなら、住民票、戸籍、納税等の豊富な個人情報が電子データで保存されており、自治体ごとにセキュリティレベルが異なるからです。取り扱う業務の性質上、個々の職員が個人情報に触れる機会も多いと思われます。

(6)電子申請における住基ネット

それでは、実際にインターネットで電子申請した場合、住基ネット等のインフラがどのように使われるか見てみましょう。あくまでも一例ですので、実際の電子申請では、もう少し複雑になったり、別の申請・通知手段を使ったりすると思います。

電子申請の流れ(例)
1 電子証明書の取得

インターネット電子申請を利用するためには、はじめに電子証明書を取得します。自分が住んでいる町の役場へ行って、公的個人認証サービスによる電子証明書を発行してもらうための手続をします。

2 インターネットで電子申請

今度は、インターネットを利用して電子申請をします。役所のホームページにアクセスして、電子申請のページに行きましょう。申請フォームに必要な事項(住所、氏名など)を入力して、電子証明書により電子署名を付して、送信ボタンをクリックします。記入事項に住民票コードは含まれません。申請データには申請者の個人情報が含まれていますので、送信時には暗号化されます。

3 申請データの受付

申請者が送信した申請データは、インターネットを通って、役所のコンピュータに届きます。つまり、申請を処理する役所のLAN(庁内LAN)の中に申請データが入ってくるということです。

4 申請の審査

必要事項の記入漏れなどが無ければ、申請内容を審査することになります。申請者が付した電子署名の有効性を確認したり、(申請者が他の市町村住民であれば)住基ネットを利用して申請者の氏名・住所などを確認します。住基ネットでの本人確認以外の処理は、全て庁内LANの中で行われます。

5 申請に対する処分

申請内容の審査が終わると、申請に対する処分を下します。申請内容が他の市町村や監督官庁にも関係する場合は、総合行政ネットワークを使って、関係市町村および官庁に対して処分結果を連絡します。

次に、申請者に対して処分結果を通知します。庁内LAN内で作成された処分結果通知(電子メール)が、インターネットを通って、申請者のパソコンに届きます。具体的な処分結果は、電子メールに書かれているURLにより、申請者本人しか見ることができないページへアクセスして確認します。

申請データの道筋(上り)

申請者パソコン > インターネット > 庁内LAN > (LGWAN)

申請データの道筋(下り)

(LGWAN) > 庁内LAN > インターネット > 申請者パソコン

ここで重要なのは、申請データに住民票コードが含まれていないため、住民票コードと申請データが直接リンクしていないということです。住民票コードから、その人の申請履歴等を調べたり、そうした目的のデータベースを作成することは困難だと思います。

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